表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
王都編
32/40

王都へ

 

 馬車で2,3週間といわれたがユウの力を使えば1週間とかからずにたどり着くことができるだろう。

 セントラルと王都をつなぐ道は確かに整備されているがすべてがきれい整備されているわけではない。しかしこの道を進めば王都にたどり着けるのがわかるぐらいにはなっている。たとえ歩いて行ったとしても迷うことはないのだがそれだと時間がかかりすぎてしまう。

 ユウは早くも飛び上がり王都へ向かおうとした。何か見送られている時に飛ぶのは違う気がしたのでみんなが見えなくなるまでは歩いていたがもういいだろう。

 風を身に纏い、地との接点がなくなった。体が浮き、そこらの木々の背丈よりも上に位置する場所にユウは飛んでいる。上方向への飛翔に横方向の力を加え、ユウは高速で空を飛びはじめた。そのスピードは時速80km以上になっている。

 馬車で行くとこの3分の1程度の速さになってしまうのでユウはかなり急いでるといえる。それは一般的な人でいうかなりのスピードであってがユウが思うかなりのスピードではない。ユウが本気を出せばこのこの数倍の速さを出すことができる。しかしそんなスピード出したらこの道中を楽しめない。ユウはこの世界をちゃんと見ることを決めているのだからこのスピードがちょうどいい。


「何の変哲もない森ばかりだなぁ」


 ユウは下を見ながら変わらぬ退屈な木々を眺めながらそう言った。するとその木々の影を何かが動くのが見えた。ユウは目を凝らしてみていると木々の影を動いているのではなく影のような塊が動いていた。影はユウのスピードのピタリとついてきており、ユウがスピードを落とすと影もまたスピードを落とす。あげても同じだった。近づかず、遠ざからず。一定の距離をあけてついてくるその影に警戒している。もしもこの影があのスワロウだった場合、おそらく勝てないからだ。幸いなことに影は空を飛べないのかずっと地上にいる。


(なんだ気持ち悪いな)


 ずっとそこにいられて隙を窺われていてはせっかくのこの旅を楽しむことなどできない。ユウはここで決着をつけることにした。


 身体強化を施し、風の魔法で空中に足場を作った。そしてユウは体に雷をまとった。セントラルで取得したエレクトリックだ。このスピードであの陰に近づき、やばそうならすぐに空中へ逃げる。


(よし、行くぞ)


 深呼吸し、心の中で気を引き締めるよう言葉を発する。そして空中にできた足場をけった。

 空中のはあまりの速さに電気がまだ残っている。一瞬にして影に近づいた。だが影は存在そのものが希薄に感じられる。そしてユウが近づいたことにびくりと反応し、猛スピードで逃げようとした。あれは明らかにスワロウではなかった。


「おい!待て!!」


 するとユウの声に反応し、その影はびくりと止まった。まるで恐ろしいものに支配されているかのようだ。

 経験があるだろうか。小学生の時、何か悪さをすると強面のでかい先生に「おい!」と声をかけられて体の動きが鈍くなる。そんな風に見えた。


「お前誰だ。姿を現せ!」


 そういうとまたもやその影はユウの言うことを素直に聞き入れその姿を現した。黒に限りなく近い紫のような肌をした平均的な人間の脚ぐらいの大きさの生物。背中には暗い色ながらきれいな羽が生えており、目は赤い。赤ちゃんのようにおなかが出ているため少しかわいらしく感じる奇妙な生き物だった。そんな生き物が影から出てきたのだ、しかもふわふわと浮いている。

 そいつは後ろを向いていたがゆっくりとこっちを向きこう答えた。


「ワガオウヨ、ナンデゴザイマショウカ」


 その声は人間の発音とは少し違う。まず口は動いていないだがしっかりと聞こえたのだがこれが「脳に直接話しかけている」というものなのだろうか。

 それに今こいつはユウのことを王といったのか。全く心当たりがない。


「お前は何者だ。それにさっきの王とはどういうことだ」


「ハイ、ワタシハ ヤミノセイレイ、ナヲ『ケノン』トモウシマス。ワガオウヨ、ジカクガ ナイノカモシレマセンガ、アナタハ ワタシタチノ オウデ マチガイアリマセン」


『闇の精霊、ケノン』確かにそういった。闇の精霊、まず精霊自体初めて目にしたのだが、闇の精霊ということは闇魔法を人間に与える力を持つ。精霊というのは人間に魔法という奇跡を与えてくれるといわれている。しかし精霊には各属性があり、闇の精霊ならば闇の魔法を人間に与える。

 つまりスワロウに闇魔法を与えたのはこの闇の精霊に可能性がある。

 闇の精霊と言われた時は驚いたが今となっては冷静に精霊を見れている。今にも逃げ出そうとしている闇の精霊だがなぜか動けずにいる。

 一般的には精霊は人間の目には見えないと言われている。もちろん大昔に書かれたものなのでそれが本当か嘘かわかる者はいない。ユウを除いて。


「お前がスワロウに闇魔法を与えたのか」


「ハイ」


「なんでそんなことをした」


 やはりこのケノンがスワロウに闇魔法を与えていた。スワロウはユウのことを狙っていたようだがユウはそんな心当たりはない。ならばこいつなら知っている可能性がある。


「ワレラハ アナタニ コウゲキスルコトハ デキマセン。アノニンゲンヲ ツカエバ コウゲキデキマス」


 つまりこういうことだろう。この闇の精霊ケノンはユウに対して何らかの感情を抱いていて、ユウを攻撃したかった。しかしケノン自身ではユウに攻撃することはできないので、代わりにスワロウに闇魔法を与えて攻撃させた。

 理解はできたが理解ができていない箇所が多すぎる。

 まずなぜユウは狙われたのか、それにケノンはなぜこんなにも正直に話す?

 するとあたりの空気が変わりだした。気温が高くなり、だんだんと強い魔力を感じ始めた。

 闇の精霊は闇の魔法を使う。火の魔法は使えない。警戒しているユウの前に人の身長ほどの火柱が上がった。そしてそこからオレンジ色の肌をした小さな老人が出てきた。しかし体は浮いており、背中には炎々と火を放つ羽が生えている。ケノンと同じ精霊だ。ユウはとっさに飛びのき、距離を取った。

 火には水を当てるのが鉄則。ユウは水魔法を発動しようとした。


「我が王よ、お止め下さい。敵意はありません。我が名はロクス。火の精霊でございます。」


 現れたのは闇の精霊ケノンに続いて火の精霊ロクスだった。炎でできた羽を持ち、オレンジ色の肌。体のところどころから火が出ている。長くそして編まれた髭をこしらえて眉毛も太く生えている。

 体から発する熱気はすでにおさまっているが見るからに熱そうな体をしている。


「次は火の精霊か、何の用だ!」


 闇の精霊が敵意を持っていると分かった以上、精霊たちを信頼することはできない。火の精霊も今後的になるかもしれないのだ。

 ロクスは深々と下げていた頭を上げると、ユウの目をまっすぐに見た。そして視線をケノンに移したのだがその眼はユウに見せたものとは違い、ものすごい強さのものだった。今にも睨まれた者が燃え上がりそうな目線だった。


「はい、我が王がケノンと接触しているのを感じたのでケノンを捕えるためにここに参りました。」


 そういうとロクスはケノンに手を向けると急にケノンが発火した。


 グギャアアアアアア!!


 耳が痛くなるほどの悲鳴を発したケノンはそのまま火と共に消え去った。

 ユウはきょろきょろとあたりを見渡したが影のようなものはどこにもない。完全に消え去ったようだ。


「ご安心ください。ケノンは精界に捕えました。」


 状況がつかめないユウを前に、ロクスは説明を始めた。ユウは落ち着いて時々質問を交え得ながら聞いていた。


 まず、ユウが精霊の王であるということ。これは選ばれるようなものではなく。生まれながらにして決まっているらしい。しかしその基準は誰も知らない。そして精霊たちは精霊の王に危害を加えることはできず、命令にはたとえ命を落とすようなものであっても従うという。しかし精霊は命を失うとすぐにどこかで転生する。

 精霊は普通の人には見えない。ユウはこれまで見えなかったが魔法をどんどん行使することで精霊の力が勝手につき、見えるようになった。精界はこことは違う世界だが精霊ならすぐに行くことができる。ユウはまだ行くことができない。

 ケノンは王が力を持つのを許せないらしく以前から王の命を狙っていたそうだ。そのせいで精界を追放されてしまっていたが人間に影響を与えすぎるので捕えることに決まった。


「なんとなくだが理解した。」


 本当になんとなくだがこれはユウの両親に関係することかもしれない。それにユウとしても精霊との関係は魅力的だ。この世界で魔法という奇跡を人間に与えた存在との関係なんてこの世界の人なら誰でも欲しがるだろう。


「理解が早くて助かります。ほかに何かありますか」


 ユウは尋ねることにした。魔法のことだ。


「闇魔法や干渉魔法を使うことはできるのか?」


 これは闇魔法に対抗するうえで重要なことだ。精霊の王というだけあるのだからいろんな魔法を使えるかもしれない。


「はい、闇魔法は使うことができると思います。ですが干渉魔法は使いことはできません。干渉魔法は人間だけの魔法ですので」


 闇魔法に対抗するうえで最高の手段、干渉魔法は使うことができないが、闇魔法は使うことができる。これは朗報だった。つまり、闇魔法に闇魔法で対抗できるのだ。もう負けることはないだろう。


「では最後に、闇の精霊はケノンだけではありません。それに火や水、風、土の精霊の中にも王を殺そうとする者はいます。我が王が負けることはないとは思いますがお気を付け下さい。では」


 そういうとロクスは消えていった。きっと精界に帰ったのだろう。


 ユウは一人になった。精霊が現れて、自分が精霊の王だと知り、そしていろいろなことを知った。それはすべてが衝撃の事実だった。受け入れることができたのは前世の知識があったからだろう。それにしても精霊の王ともあろう者が森に捨てられて、こんな自由に旅してていいのだろうか。誰か人間の中に精霊に詳しい人はいないのだろうか。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。ユウは王都へ向かっていたのだ。再び、ユウは空を飛び、王都へ飛び始めた。自分にできることを考えながら。そして闇魔法のイメージをしながら。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ