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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
31/40

襲撃の翌日

 

 次の日の朝、ユウはギルドに向かった。昨日の帰り際に明日ギルドに来るようにと言われていたからだ。理由としては不法侵入者スワロウが「4属性使いに用がある」と言っていたからで何か関係があるのか疑われたからだ。当然ユウに心当たりはないのだが本人としてもなぜ自分に用があったのか気になるところではあるのでギルドで情報交換をするつもりだ。かといってもユウが出せる情報は何もないので聞くだけになってしまうのだが。


 朝起きていつもの食事を済ませ、お母さんに挨拶をしてギルドに向かう。昨日の一件のせいか警備が厳しくなっている。その警備には基本的には3番隊が配属されているため、ユウは顔見知りが多く道中で何度挨拶を交わしたかわからない。


 ギルドにつくといつもの受付の女性に話をし、いつもの応接室に通された。この町に来てからというものギルドの応接室に来ることが多すぎてここがいつもの場所になりつつあるのが少し不安ではあるのだが、4属性魔法の使い手ということもあり、普通が何かわからなくなっているところだった。


「ユウさん、今日来ていただいたのは他でもありません。昨日襲ってきたスワロウという男についてです」


 淡々としゃべるルーシアさんは昨日の少し弱った姿を感じさせない、いつものルーシアさんに戻っていた。その横にはギルド長シギルも腰かけている。シギルはいつも通り何を考えているのかよくわからない薄い目のにやにやとした顔つきだ。二人とも昨日のことを感じさせない立ち振る舞いにユウは少し気を引き締めるのだった。


「はい、『4属性魔法の使い手に用がある』と言っていましたが僕には全く思い当る節がありませんし、スワロウという男にも会ったことはありません」


「やはりそうですか、闇魔法は文献にこそ乗っていますがかなり珍しい魔法です。現在使える者はいないとされていましたがこんなところでまみえるとは、スワロウ本人も相当の手練れのようでしたし片腕を失った今すぐにまた襲ってくるとは考えにくいですが警戒をしていてください」


 闇魔法、かなり珍しいものらしく、対策や詳しい理解がなされていないらしい。しかしあんな殺傷力の高い魔法がポンポン使われていたらたまったものではないので珍しくてよかったというものだ。


「ふーん、ユウ君は闇魔法について僕に聞きに来たんか、魔力を纏ってないのはわざとなんやな」


 そう、今のユウは無属性の魔力を纏っていない。それはシギルに対面するときは致命的なことのように思われるのだが、その反面シギルが勝手に思考を読んでくれるため話さなくても伝わる。それとギルドを信頼し、隠すことは何もないということを証明するために今日のユウは魔力を纏っていないのだ。


「ギルド長!勝手にお客の思考に干渉するのはやめてくださいとあれほど言っているでしょう!」


「わぁわぁ、そんな怒らんでいいやん。シワ増えるで」


 バシッ!


 応接室に気持ちのいい音が響き、シギルの頬にはモミジの跡がついている。最初ユウは驚いたのだがルーシアはシギルを叩くことに成功している。自動防衛が発動することなくルーシアの手がシギルの頬にあたったのだ。


「あぁ、ルーシアちゃんは反応しいひんねん。たぶん敵意じゃないんやろうな。昔酒場で意気投合した人に背中叩かれたときも発動しいひんかったしな」


 常にユウの思考を読んでいるシギルは自分の頬をさすりながら言ってきた。『敵意』それがなかったら発動しないのか、しかし実際の戦いにおいて敵意なしに相手を傷つけることなどできないだろうから実際、無属性の魔力を纏うしかないだろう。


「あと、闇魔法への対処やけどな、僕のこの干渉魔法みたいなことユウ君もできるらしいやんサラから聞いたで。それの熟練度さえあげたら対処はできると思う。あとは使えへんから意味ないけど光魔法やな。光と闇の魔法は打ち消しあうって言われてるからたぶん光で消せるわ。とれる対抗はこれぐらいやな」


 これはユウの求めている答えだった。魔力による力技での干渉。それが効果的だということだった。


(ん?待てよ?もしかして)


 ユウは魔力をコントロールし、シギルの干渉魔法に干渉しようとした。そして相殺した。


「無理やで、その力技の干渉、無属性やろ?それに触れたら僕の消えるから無理やで」


 そもそも思考を読まれているので無理だろうと思っていたが別の理由でも無理だった。


「お二人ともその辺で。ユウ様には王都より手紙を預かっています。ギルドの責務として4属性魔法の使い手は王都へ報告しないといけなかったため、報告したところユウ様宛に王都より届きました。早急にお読みいただきたいのですが」


 そういってルーシアは白の封筒に赤のシーリングスタンプで王家の紋章で封がされている手紙を手渡してきた。ユウはルーシアの言葉通りその場で封を切り、手紙を取り出した。





 ユウ様


 いきなりのご連絡になることをお許しください。

 ギルドセントラル支部からの報告によりユウ様が4属性魔法の使い手であるということを知り、今回この手紙をお送りさせていただきました。

 4属性魔法の使い手というのは珍しく、我々精霊の国としても至宝として扱わせていただいております。我が王としましても一度ユウ様に御前に来てほしいと申しております。

 つきましては王都にて歓迎の準備をしておりますのでお越しいただければと思います。


 王都魔法師団2番隊隊長 イリス





 王都の魔法師団からだった。その内容を知らないのだろうルーシアはこちらを心配そうに見つめている。自分の報告によるものなので少し心配してくれているのだろう。

 しかし4属性魔法の使い手というのはやはりすごいらしく、王都に情報が渡った瞬間、招待を寄越してきた。しかも差出人は『王都魔法師団2番隊隊長イリス』となっているが王の代理ということだろう。つまりこれは精霊の国の王からの直々の招待ということになるのだ。そうなってしまうと一国民であるユウは応じざるを得ない。


「これは行くしかなさそうですね。王都はどこですか。どのぐらいかかりますかね」


 ユウが王都に行くことを承諾した瞬間、ルーシアの顔はパッと明るくなった。


「はい、王都はここセントラルからさらに北、馬車で2.3週間といったところです」


 ルーシアは地図を取出し、ユウに詳しく説明した。思っていたよりも遠い位置に王都があるのは、王都とセントラルがこの精霊の国においてかなりの戦力となっているので、大きな戦力を分散するために離れているのだという。


(2、3週間か、結構かかるけど大丈夫だろうか。)


 王からの招待とあっては失礼があってはならない。まして王都は歓迎の準備をしているという。王を含めてその人たちを待たせるのは失礼に値するはずだ。少なくとも人を待たせるのはどの世界でも失礼にあたる。


「んー、そうですね。魔法で急ぐことにするので馬車は必要ありません。さっそく今日から行こうと思うのですが何か必要なものとかありますか」


 ユウの場合、馬車に乗っていくよりも自分を強化したり、風の魔法で飛んでいくほう速い。そして王都で歓迎の準備というのはパーティーの可能性がある。ユウが心配しているのは正装が必要なのかどうかということだ。内容を把握してもらうために王都からの手紙をルーシアに渡した。


「なるほど、ユウさんが心配しているのは正装が必要かということですね。4属性使いはこの国において基本的な礼儀は必要ないとされています。むしろ他の者が無礼を働けば罰せられるほどです。なのでユウさんには必要ないですが個人的に正装していきたいというならセントラルで良いお店を紹介いたします」


 さすがはルーシアさんだ。人の考えを読むことや対人のコミュニケーションに関しては目を見張るものがある。こういう能力がないとギルド長の秘書など勤まらないのだろう。

 ユウは正装をしないでもいいということを言われて迷ったのだが結局正装していくことにした。


 ルーシアに案内された店は見るからに高級というべき店だった。しかし王都からの招待に対応するためにこの場に来たので、費用についてはセントラルが持ってくれるという。ユウはその店の店員にコーディネートを任せ、失礼のないものを選んでもらった。選ばれたのは黒を基調としたスーツだった。白のシャツに黒のジャケット。シンプルなものだと思ったらそんなことはなかった。金色の糸でジャケットの胸元に刺繍が施されている。全身にも金の刺繍が施されているのだが、ただ派手なだけではなく、どこか奥ゆかしさや落ち着きを感じさせる高貴な者の衣装という感じだ。このスーツはこの店が唯一用意した4属性魔法使い用のスーツだという。普通の、とはいってもかなり位の高い者が着るスーツも胸には紋章が刻まれている。それは精霊の国の紋章で精霊の羽の前に4属性の象徴といえるものが刻まれているのだがこのスーツは違う。4属性はあらわしているものの精霊の羽はない。このことから精霊の国に従うものではないという意味が込められている。つまりこれは4属性魔法の使い手のみが着用を許されているのだ。


「本当にこれでいいんですか?その、もっと地味なものでもいいのですが」


 別にユウは王に対して従わないという意思を示したいわけではないので、このスーツはふさわしくない。


「何を言っているのですか!?そんな下手なものを選んでは私たちが王に罰せられてしまいます!ユウ様はこれを着るしかないのです」


 断言されてしまった。もうこれしか着れないらしい。まぁ、確かに王への謁見を控えているものに下手なものを着せるわけにはいかない。仕方ないか、このスーツを受け入れるしかない。

 幸い、サイズをユウに合わせることができるという。そのために一日費やしてしまうので出発は明日ということになったのだが構わない。その日はユウの採寸をし、調整をお願いし、ルーシアに礼を言って帰った。

 店員はこれ以上ない名誉だと張り切ってくれた。



「さて、明日に出発は決まったわけだが1日で挨拶してまわるか」


 ユウはセントラルに来てお世話になった人たちに挨拶に回った。

 サラや3番隊の団員達、協会の人たち、宿のお母さんやギルドの職員たち。すべてに挨拶をし、明日ここを断つことと感謝を伝えた。



 そして翌日、ユウは完成したスーツを受け取り、幾人かに見送られセントラルを出発した。


 目指すは北、精霊の国の王都だ。



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