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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
29/40

呪いの干渉魔法

 

「まぁまぁ、おっちゃん落ち着きーや。そんな怒ってたら女の子に嫌われるで」


 シギルが前に出て一言目に発した言葉はあまりにも意味のない言葉だった。もっとこう、相手をビビらせる的な?「投降しろ!」とか言うのかと思っていた。シギルの背中が強い男に見えたから余計に拍子抜けだ。


「誰だお前、用があるのはそこの4属性使いだけだ。消えてろ」


 そう言うとシギルに向かって闇を飛ばしてきた。闇は空間ごと全てを飲み込む。例えそれが魔力でも人でも関係はない。そんな凶悪凶暴な闇がシギルの体に触れた瞬間、消え去ってしまった。

 ユウは目を閉じてしまっていた。たとえ目を閉じていても周囲の様子は手に取るように分かるのに本能的にシギルの身体の一部がえぐり取られてしまう姿を見たくなかったのだ。



 しかし消え去ったのはシギルではなく、闇の方だった。一体なにが起こったのかそこに居合わせた人の中で理解できているのはシギルとルーシアの2人だけだった。


「危ないなー、もうすぐで死ぬところやったで」


 シギルは軽口を叩き、ヘラヘラとしている。まるでさっきの闇は見間違いだったかのようだ。確かにシギルの立っている位置に闇の玉は飛んできた。そしてシギルは1歩も動いていないのにかすり傷の1つもついてはいない。

 横を見るとルーシアは暗い顔をしている。その目にはいつものシギルを無下に扱うような色はなく、ただひたすらにシギルを見つめて心配しているのだ。


「ギルド長、無理はしないでください!」


 その声に反応するようにシギルはこちらを振り返り、笑顔を見せてきた。「大丈夫」そう言わんばかりに親指を立てた手を見せてきた。


「シギル…」


 いつもギルド長と呼んでいるルーシアが今、シギルの名前を呼んだ。何か知っているのは明白でそれを知った上でシギルの心配をしているのだ。

 しかし今闇を消したのは間違いなくシギル本人だ。今はユウの4属性魔法も全て闇に飲み込まれてしまい役に立たないのでシギルを頼るしかない。何が心配かは知らないがやってもらわないとやられるのはこちらだ。


「おい!お前今何をした!俺の闇を消したように見えたがなにもんだ!?」


 スワロウは明らかに動揺している。全てを飲み込むはずの闇がたった今シギルによって消されたのだ。『全てを飲み込む』という大前提が覆されたことになるので警戒するのは当然だ。


「なんもしてへんで。勝手に消えた。が正しいかな?」


「舐めるなよぉ!」


 勝手に消えたなどとふざけた返事をするシギルに対して闇を複数生み出して一斉にシギルに放った。


 ユウは今回は目を閉じなかった。しっかりとシギルの動きと闇の動きを観察していた。するとシギルの体内からぬるりとでてきた魔力がシギルの前に壁を作った。そしてその壁に触れた瞬間、闇は光に当てられたかのように消えてしまった。

 間違いない、シギルは干渉魔法しか使えないからこれは干渉魔法による障壁。


「あれ?おっちゃんどこ行った?」


 先程放った複数の闇、それを目くらましにしスワロウは消えていた。


「こっちだよぉっ!!」


 するとスワロウはシギルの影から現れた。その腕には闇が纏われており、おそらくあれに触れると触れた部分が消え去ってしまうのだろう。

 しかもシギルは不意を突かれている。


「危ないっ!うしろだ!!」


 思わずユウはシギルに向かって叫んでいた。スワロウの闇に包まれた腕がシギルに迫り、今にも首から上を消し去られそうになっている。そしてスワロウの腕はシギルの顔があった場所を振り抜いた。


 ブシャ、ブシャ!


「ぐぅおおぉぉおおお!!!!!」


 人の腕が千切れるとこんなにも血が出てくることを知らなかった。スワロウの腕は肩から先が無くなっていた。あたりにはおそらくスワロウの左腕だったであろう肉片が散っており、血だまりができようとしている。

 腕から飛んだ鮮血がシギルの顔にかかり、いつもニヤニヤと笑っている顔から笑顔が消えてしまっている。

 血に染まったその顔は恐ろしく、恐怖を撒き散らし、シギルを知っているユウですら身震いしてしまうほどだった。


「ごめんなおっちゃん。大人しくしてくれたらこれ以上なんもせーへんから」





 さっき何が起こったのかユウは細かく観察していた。

 スワロウが後ろから左腕に闇を纏い、シギルに降りかかろうとした瞬間、シギルの首あたりから魔力が溢れ出てきた。そしてその魔力はスワロウの闇を消し去り、そのまま左腕に巻きついたかと思うと左腕の中に入って行った。そして次の瞬間にスワロウの左腕は崩壊した。本来、切れたりしない限り離れないような皮膚や肉が、ホロホロと腐った木のように崩れたのだ。そしてスワロウの肩から先は全て崩壊し、血が噴き出した。


 恐ろしい魔法だと思った。これはユウの予想なのだが、干渉魔法によりスワロウの左腕に干渉し、細胞レベルで結合しているのを壊したのだろう。こんなもの並みの人間が防げるようなものではない。ユウが初めてシギルに会った時にこれをやられていたら即死していたに違いない。


「ルーシアさんは今のが何か知ってるんですか?」


 ルーシアは悔しそうに拳を握りしめ今にも泣きそうな目をしてシギルを見つめている。


「あれはシギルの、ギルド長についた呪いです。ギルド長に危害を加えようとしたものに自動で反撃するようになっているのです。無属性魔力で簡単に防ぐ事は出来ますがそれが出来ない人はあのように…。この呪いのせいで今まで何人殺してしまったか」


 ルーシアの目には水が溜まっている。『今まで何人も殺してしまった」そしてこの呪いはシギルにはコントロールできないと考えると小さい頃から身近な人を傷つけてしまっているのかもしれない。おそらくルーシアはシギルの過去を知っていた。それでも闇魔法にはシギルしか勝てないと思い、傷つける辛さをわかった上で戦闘させたのだろう。


「ルーシア、泣かんでええよ。僕が決めた事やから」


「でも、また、、あの時みたいに」


 シギルの手がルーシア肩に触れられた途端、ルーシアの頬に涙の道ができた。シギルにはこれ以上呪いで人を殺して欲しくない。でも自分の力ではどうすることもできない。自分が無力なせいで守りたいものを守れない。そんな複雑な心境なのだ。


 左腕を崩壊させられたスワロウは少し空気が緩んだ隙に影の中に逃げた。スワロウは影を移動できるらしく気配も無くなってしまい、これ以上追うことは出来なくなってしまった。

あたりにいた傭兵たちは負傷者を運ぶもの、周辺を警戒する者に分かれた。


「もしかしてアレが殺戮機シギルか」

「近寄らない方がいい」

「無意識に人を殺すらしいぞ」

「しかも無差別らしい」


 あたりの空気はスワロウを敵とみなしていたはずなのだが、闇魔法の使いてと言う脅威が去った今、シギルに対する怖れに変わってしまっている。『殺戮機シギル』。とんだ2つ名を付けられたものだ。


 とりあえずこの場を収めたシギルはルーシアを連れてギルド内に入っていった。道中にいた傭兵たちはビクリと体を震わせ、道を譲っていた。明らかに怯えてしまっている。



 そのあとすぐにもう1人の不法侵入者がサラの手によって捕縛された。しかしスワロウの姿はどこにも見当たらず、すでにセントラルにはいないだろうということになったので3番隊はこのまま警戒を続けるが、ユウを含めて傭兵たちは一時解散となった。

 報酬については後日支払われるという。


(シギルさんのあの力呪いとか言っていたが自動反撃か)


 あの闇、あの光景、あの魔法をしっかりと目に焼き付けてしまったユウはそれを消し去ろうとシギルの呪いについて考えるのをやめた。

 宿に帰るとお母さんに迎えてもらい、遅い時間だというのに店主は晩御飯を振舞ってくれた。


 その晩、ユウは闇魔法を使うスワロウに全く歯が立たなかった事を考えていた。ユウの得意分野は魔法。しかも4属性による多彩な魔法、そして身体強化による肉弾戦だ。闇魔法はその2つを完全に攻略している。魔法は全て闇に飲み込まれる。近づこうものなら身体が闇に飲まれる。


(何かあれに対抗できる魔法はないのか…シギルさんの干渉魔法について書きに言ってみるか)


ユウは再び自分の可能性を探り、闇魔法に対抗出来る新しい魔法を使えるようにならないといけないと思うのだった。



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