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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
28/40

vs不法侵入者

 サラとの模擬戦の後、ユウは土魔法でえぐれた地面を元の平らな状態に戻した。アフターケアまでしっかりとしている。サラ達からすれば魔力量がありすぎて異常に見えるだろうが例の秘密を話すわけにはいかない。


 そしてそれから6日間、3番隊の訓練を行っていたがこれまで通り、いや、これまで以上に熱心に訓練に励んでいたのは、先の模擬戦があったからだろう。魔法師団3番隊隊長よりも強い人に訓練をつけてもらうのだ、こんなにすごいことはない。


 魔法の発生速度の練習の後、威力を上げるトレーニングをするつもりだったのだが、案外発生速度の方が難しかったらしく、この1週間全てを費やしてしまった。しかしそのおかげで3番隊の団員達の魔法発生速度はかなりのものとなっていた。


 いずれこの3番隊が隊長の雷の魔法や団員の魔法発生速度から閃光の3番隊と呼ばれるのはまた別の話だ。



「「「「「ありがとうございました!!」」」」」


 団員達は口々にお礼を言っている。

「第5位も夢じゃなくなってきたかもな」「俺はとりあえず第4位だ」「俺が3番隊で最速だ」「いや俺だろ」

 元々自分に自信があった3番隊の人達だが、今回の訓練を経てさらに自信を付けているようだった。


「それじゃあ、1週間お世話になりました」


 ユウは結局白のローブをもらうことすらできずに1週間の訓練を終えた。ギルドカードの『3番隊』の文字はどうしようかなと考えているとちょうどサラが建物から出てきた。


「ユウ、1週間ご苦労だったな。おかげでうちの団員達もパワーアップを図れたようだ。あと…模擬戦またしにきてくれ」


 最後の模擬戦の部分はユウの耳元でコッソリと言った。あの模擬戦の騒ぎから住民が不安がっていたと副団長にお叱りを受けたらしいのだがこの人は全然懲りていないようだ。


 2人はガッチリと握手を交わすとユウは門から出て行った。

 訓練所の方からはサラが団員達を鼓舞し、訓練を再開させている様子が声で分かる。

 1週間という短い間だったのだが、3番隊での日々は楽しいものだった。団員達は出身こそ様々だったがいい人ばかりで無下に扱われることはなかった。


 魔法師等級第6位に昇格した後ギルドからは特に何も言われていない。しかしルーシアさんにはお世話になった。この1週間を過ごす中でまず宿屋を紹介してくれたのもルーシアさんだし、サラさんとの模擬戦でボロボロになった服を買い換えるためにいい店を紹介してくれたのもルーシアさんだったのだ。


「1回顔を見せておくか」


 ユウは独り言を呟くと1人宿に帰っていった。

 道中何か街が騒がしいなと思っていたが人が多い街だしそういう日もあるのだろうと考えそのまま宿にたどり着いた。するとお母さんが凄い勢いで近寄ってきた。


「よかった!どこも怪我はありませんか?」


「え?はい。怪我はしてませんけど何かあったんですか?」


 宿屋のお母さんによると先ほど、セントラルの門番計3人が何者かによって殺害されているのが発見されたらしい。

 それにより3番隊と傭兵が雇われ、セントラル内の警備を行なっているらしい。帰り道が騒がしかったのはそのせいだろう。

 そしてお母さんから1つの封筒を渡された。見覚えのある封筒、ギルドからだった。





 ユウ様


 たった今門番がやられているのが確認されました。

 おそらくセントラル内に不法侵入した者がいます。


 3番隊と傭兵に依頼して街を警備していますがユウ様にも力を貸していただきたく、お手紙を差し上げました。


 この手紙を読まれたら速やかにギルドまでお越しいただきますようお願いします。


 ルーシア






 短くまとめられた手紙を読んだユウはお母さんにギルドに行く旨を伝えるとすぐに宿を飛び出した。

 不法侵入した者がどこにいるかわからないのでとりあえず身体強化を施し、あたりを警戒しながら速度を上げ、ギルドに向かっていた。もうすぐでギルドに着こうと言うところでユウは違和感に気づいた。

 街中には何人もの人が警備のために駆け回っていたが2人、いや、3人がさっきから明らかにユウについてきている。しかもユウの速度についてきているのだ。

 ユウがピタリと止まるとその3人も動きをやめた。


「おい!出てこい。そこの建物の上とその下の影、あとそこの後ろにいるやつだ!」


 全ての居場所を当てられて観念したのか3人は姿を現した。3人とも黒いローブにフードを目深に被っていて顔はよく見えない。口元も布か何かで隠されている。

 その3人の魔力が急に変化しだした。これは魔法を使う前兆で、自身の魔力を属性魔力に変換している状態だ。

(2人は火、もう1人は風か)


 魔法が発動した。ユウの頭上に発生したのはフレイムスピア2つ。その2つがユウに向かって同時に発射された。ユウはその2つの魔力に干渉し、取り込みそして後ろに向かって打ち出した。

 すると後ろから迫ってきていた風の刃に炎があたり、魔法を相殺した。


 初めの火の魔法は陽動で後ろの風が本命、ユウならば容易く分かってしまう。


「なんで俺を攻撃するんだ!目的を言え!言わないと怪我するぞ」


 3人は全く無言でユウから距離を取ろうとした。風の魔法を使い、強い追い風を作ることでスピードを上げている3人。

 身体強化をしているユウならばすぐに追いつけはするがこの際だ、この1週間で編み出した魔法を試してみよう。


「エレクトリック」


 ユウは身体強化に加えて電気を纏った。そして、次にユウの体がブレた。


 人間の動作というのは体内を流れる電気信号で筋肉を動かし、全体の動作となっている。それを雷魔法で無理やり操作し、身体を人知を超えた速度で動かすのだ。それがこの魔法『エレクトリック』だ。

 普通の人ならばあまりの速度に筋肉や身体中の組織、細胞がダメになってしまうのだが、ユウの特殊な身体強化があるからこそ身体が正常を保っている。


 ユウが通った後には少し電気が残ってしまうのだが、そのスピードはまさに電光石火。一瞬で1人に追いついたユウはその1人を蹴り飛ばした。エレクトリックの乗った蹴りは相当効くだろう、瞬く間に1人、2人がノックアウトされた。

 そして3人目


「あとはお前だけだ、ぞっ!」


 その言葉が相手に聞こえたかどうかわからないほど一瞬で意識を奪い取った。





「すいませーん!街中で攻撃してきたので捕縛して連れてきました」


 ユウは当初の目的通り、ギルドに来たのだがその手には大きな手土産がぶら下がっていた。

 3人の人、それぞれしっかりと気絶している。


「ユウさん!?えっとこの人達は」


 受付の女性がすぐに駆け寄ってきたので詳しく説明した。ここに来るまでにつけられていたこと。そして急に魔法を使われて攻撃されたこと。最後に3人を気絶させ、ここまで運んできたこと。

 説明をしているうちに騒がしくなってきたギルド内にルーシアさんが到着した。


「ユウさん、ご無事でなによりです。この3人の身柄についてはギルドで預かります。一応、情報ではセントラルに忍び込んでいるのは5人と聞いています。気をつけてください」


 ルーシアはユウに近づきコソッと告げると男性のギルド職員を呼んで裏に3人を連れて行ってしまった。

 ユウはコクリと頷くとそのままギルドを出た。


 時刻は夕方から夜にさしかかろうとするところ。ユウは魔力馴染ませて索敵を始めた。方向を絞ることでギリギリセントラルの壁まで索敵することができる。そしてグルっと1周セントラルを索敵したのだが、元々セントラルを警備している人が多いのでおかしな魔力などを発見できることはなく、索敵魔法では発見できない。


「クソ、どうしたら見つけられるんだ!」


 人が多すぎる。どうする、あんな魔法を街中で使われたら防げない人がほとんどだ。それなのに犯人を発見することができない。


(何か方法はないか)


 魔法が万能ではないことを改めて実感しているとすぐ後ろから低い男の声が聞こえた。


「探してるのは俺か」


 寒気がユウを襲う。全く気づかなかった。ユウの身体強化の副産物、索敵魔法を常時発動しているにもかかわらず、急に後ろに現れたのだ。

 咄嗟に振り返りざまに男を右手をぶつけにいく。右手が男に近づき、、、このままいけば確実に当たる。


(よし)


 男の顔にユウの手がめり込んだ。


「なに!?」


 めり込んだ手には人の感触は無く、そのまますり抜けた。男の身体はユラユラと影のようにまた、煙のように散った。



「4属性の使い手はこんなもんか?よえぇな!!」


 ユウの前、建物にできた影からその男は現れた。


「エアカッター!」


 男に向かい、次に放ったのは風の魔法。さっき男に触れることが出来なかったのが魔法だとしたら近づくのは危ないかもしれない。遠距離から仕留める。

 しかしエアカッターが当たった男の腹の部分が真っ黒になり、まるでそこに風が飲み込まれたかのように吸い込まれていった。


「お前じゃ俺を片付けることはできねぇよ!」


 男はさっきの真っ黒を右手に溜め、それをユウに向かって放った。見たこともない魔法だった。これは力技で抑えるのは危険かもしれないという判断で横に飛んで避ける。すると真っ黒の玉は当たった箇所から半径30センチほどの範囲を消し去ったのだ。

 ユウが当たっていたら消し去られていたのだろうか。額を汗がつたう。


 騒ぎを聞きつけたギルド内の人たちが出てきた。その中にはシギルもいた。そのシギルから聞いたこともない言葉が出てきたのだった。


「あの魔力、めちゃくちゃ久しぶりにみたけど闇魔法やで。まだ存在してたんかいな」


「ほう、この魔法を知ってる奴がいるとはなぁ!そうさ、俺はこの世界で唯一闇魔法を使える男!スワロウ様だ!!」


 そういうと男は闇の玉を次々と打ち出した。その魔法に触れた他の傭兵たちは手足を消し去られている。いや、闇に飲み込まれてしまっているのだ。

 ユウも見たことがない魔法に対処するべく魔法を放ってはいるが全てスワロウの纏う闇に飲み込まれてしまっている。

 近づけば身体が闇に飲み込まれてしまい、遠くから魔法を打っても魔法ごと飲み込まれる。この闇魔法は超万能型だ。一体どうすれば勝てるというのだ。



「あかんあかん。ユウ君、そんなんじゃ勝てへんで。まぁ、ちょっと見とき。闇魔法の攻略方法見せたるわ」



 そういうとシギルはみんなより1本前に立った。

 その姿はいつものだらしない男では無く。セントラルのギルドを背負う男そのものだった。




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