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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
26/40

昇格

 

 ユウが魔法の訓練で4属性の舞を踊った次の日の朝。いつもの宿で目を覚ましたユウは朝食を食べようと1階にある食堂に向かっていた。


 昨日は訓練が終わってからサラさんに報告に行こうと思ったが忙しいため会えないと言われてしまったのでそのまま宿に帰ってきて寝てしまったのだ。


「おはようございます」

「あ、おはようございます」


 宿のお母さん(宿屋の店主の奥さん)にあったので挨拶を済ませる。そして朝食をとるためにそのまま行こうとしたが止められた。するとお母さんは受付の下から1つの封筒を取り出した。


「これ、ギルドの職員さんが今朝届けに来ましたよ」


 そう言って手渡された封筒だがギルドからの手紙か?もしかしてあのシギルが暇すぎて手紙でも送ってきたのかと思うとあまり開けたくは無かったが急な連絡とかなら開けないわけにはいかない。


「ありがとうございます。朝食を食べながら読んでみますね」


 お礼の言葉を述べてテーブルについた。パンとシチューの様なスープ、そしてサラダが出てくる。セントラルではかなり安い宿なのでそんなに豪勢ではないのだが味はそれなりに美味しい。パンをちぎって食べ、スープをスプーンですくって飲む。この暖かさが朝の寝起きの体にはしみるのだ。

 朝食を堪能しながら手紙を読んでみる。なになに




 ユウ様


 先日は魔法師等級の計測を受けていただきありがとうございました。ギルドカードがあればいつでも依頼を受けることができますので是非お受け頂きますようお願いいたします。

 何か困ったこと等ありましたらいつでもギルドを訪ねてください。出来るだけ力になりたいと思っております。


 ところでユウさんか4属性魔法の使い手だという噂を耳にしたので今回この手紙を書かせていただきました。

 その件について少しお話がありますので至急、ギルドまで足をお運びいただけると幸いです。

 どうかご検討よろしくお願いいたします。


  ルーシア



 シギルじゃなくてルーシアさんだった。

 しかし4属性魔法の使い手って昨日3番隊の訓練で披露したから知られるのは仕方ないとしても早すぎる。今朝この手紙をギルドの方が持ってきたって言ってたからおそらく朝書いてすぐに届けたんだろうな。

 ここセントラルには郵便の機能もある。手紙を出して一定のお金を払えば指定されたところまで届けてくれる。しかしそれをせずにここまでわざわざ届けに来たということは急なものだということなのだろう。


 ルーシアさんといいサラさんといい、頭を使ってこちらを動かそうとしてくるからこういうのはあまり気が向かないけどなぁ、ちょっとゆっくりしてから行こうかな


 ユウは手紙を置き、朝食という幸福な時間に戻ることにした。朝食を食べ終わるとユウは部屋に戻って自身の訓練を開始した。

 まずは身体強化を行い、あたりの状況を把握するそして4属性全ての魔法の玉を生み出した。これは魔法の教本にあったものの応用版だ。

 4属性全てが鈍らないように毎日1回はするようにしている。各属性3つの玉を綺麗に生み出し、部屋には12個の玉が浮かんでいる。

 それを30分ほど集中して維持すると静かに魔法を解いた。次にやるのは混成魔法の玉を作ること。まずは雷の玉、そして火と土の混成で溶岩の玉、火と水で蒸気の玉を作り出した。これは扱いも難しいのでそれぞれ1つずつしか作っていない。

 この3つを15分ほど維持したところでそろそろ3番隊の訓練に行かないといけなくなってきた。

 ユウは3つの玉を慎重に解除し、部屋を出た。3番隊の訓練内容は昨日と同じだが、何か工夫をしないとあの人達にはできないかもしれないな、何かないか…

 考えながら歩いているとすぐについてしまった。しかし何も思いついてはいないのだが


「「「「「おはようございます」」」」」

「おはようございます。今日も昨日と同じ発生速度の訓練を行います」


 団員達はすぐに2人組を作り、訓練を始めた。昨日のユウに影響されたのか弱音を吐く者は1人もいない。感心しているとそこにサラがやってきた。

 団員みんなが訓練を一時中断し、サラに挨拶をした。


「ああ、おはよう。ユウ、ここで何してるんだ?ギルドから招集がかかってただろう」


 サラはどうやら知っているようだった。このまま帰りにでも寄ろうかと思っていたのだがダメなのだろうか


「えっと今日の帰りにでも行こうかなと思ってまして、訓練の方もありますし…」


 訓練を盾に逃げるしかない。そう思ったのだが当然そんなことはサラに通用しない。

 訓練なら後でいいから先にギルドに行けと言われて追い出されてしまった。

 ため息混じりに歩き始めたユウは何があるのか全然検討が付かなかった。

 トボトボと歩きギルドまでついたので受付に行き、手紙の件について話を聞こうと思ったのだがこちらが話しかける前に「ユウさん」と名前を呼ばれ裏に通され、初めてルーシアさんと出会った部屋に連れていかれた。

 しばらく座って待っていると


 コンコンコン


 とノックされ入ってきたのはメガネをかけ、資料を左手に持った女性、ルーシアだった。


「お待たせして申し訳ありません。来ていただいてありがとうございます。今回お呼びしたのはユウさんが4属性魔法の使い手だと聞いたギルド長があなたを暫定で魔法師等級をつけていたが第6位にするとおっしゃられたためです」


「え?」


 魔法師等級の計測を受けた時には確かにとりあえずで第5位をつけられたが第6位というとあのサラと同じという事になる。つまり魔法師団の団長と並んだのだ。シギルにぼろ負けし、第5位、そして何もしないで第6位になってしまったユウは何やら納得できない顔をした。


「えっと、4属性使えるだけで第6位になるんですか?」


 等級の計測には基準があったはずで使える属性が増えたところでいきなり上がるようなものではない。


「『使えるだけ』とはなんですか!!4属性魔法の使い手というのはですね、現在世界に3人しか存在しないとされる伝説的な存在なんですよ!それにユウさんが加わる事で4人になりましたがそれでもたった4人です!ユウさんにはそれに応じた責任を背負う事になりますし、ギルドとしても無下に扱う事は出来ません。それに………」



 要するに珍しいしそんな人ほぼいないから無駄に生きては行けない。ギルドとしてもそんな人を下手に扱えない。しかし年齢的なこともあり、第6位に収めたが、まだ低いくらいだ。ということらしい。

 それにしてもこんなにすごいものなのか4属性使えるだけで。


「えっと、わかりました。とりあえず第6位というのはありがたく受け取っておきます」

「はい。今日の話はそれだけです。ではギルドカードをお預かりします。すぐに第6位に変えますので受付でお待ちください」


 そう言ってユウからギルドカードを取り上げ、そそくさとドアの向こうに消えて行ってしまった。ユウも部屋から出てギルドの受付まだ行って待っていたのだが、周りの声が痛い。


「あいつが4属性の」

「あんなちっこいのがか」

「弱そうだな」

「さぞ強いんだろうな」

「何かせこいことしたんだろう」


 などと魔法師団の時とは全く逆の反応をされた。


 このギルドで依頼を受けて生活する者をこの世界では『傭兵』と呼ぶ。傭兵達はさまざまな場所で依頼を受ける者が多く、大精霊教の信者ではないのだろう。考え方が曲がっている。


「ユウさん、お待たせしました。こちらをお受け取り下さい」


 ユウはギルドカードを受け取った。ギルドカードには『魔法師団3番隊』という文字と『魔法師第6位』という文字が追加されていた。


「あのー、これは」


 魔法師団には正式に入団したわけではないのでこれからずっと使っていく身分証の代わりになるものに書かれては困る。そう思って受付の女性に聞いた。


「3番隊のサラ様からそれをつけるようにと言われています。魔法師団に入るとセントラルや王都ではさまざまなサービスを受けられるので是非ご利用してみてくださいね」

「はぁ」


 3番隊から白のローブをもらったわけではないのにサラさんはなんてことを言ってくれたんだ。

 しかしサービスを受けられるのか、悪くない。訓練が終わった後も名前だけ借りるか?サラさんがやったことだもんな、俺は悪くない。

 ユウはギルドを出て3番隊の元へと向かった。


 団員達はユウが言った訓練を続けている。昨日に比べてかなり上達しているようで中にはまだ無傷の者もいた。

 ウンウンと彼らの成長を実感していると建物の中からサラが出てきた。


「ユウ戻ったのか。それでギルドからはなんだったんだ?」

「戻りました。それが…」


 自分が第6位になった事を正直にサラに話し、困っていると話していたのだがサラの目の色が変わって行くのが分かった。これはまた何やらめんどくさい事を考えているな。


「て感じなので僕は訓練に戻りますね。それでは」

「待て!」


 はい捕まったー


 やばいと感じたのですぐに話を終わらせ訓練に戻ろうかと思ったが時すでに遅し。サラに捕まってしまった。


「第6位になったんなら私と手合わせしてもらいたい。最近訓練の相手がいなくてな、これでは身体が鈍って仕方がない。やるぞ」


『やるぞ』じゃない。もうやることが決まってしまっている。周りの団員達も団長と4属性魔法の使い手の戦いが観れると訓練をやめて集まってきてしまった。

 確かに同じ第6位ではあるが第6位歴が違うだろう。サラはいつからその等級になったのか知らないがユウはさっきなし崩し的になっただけなのだ。実力が伴っているかもわからない。

 しかしサラはやる気であるし、ユウとしても殺し合いではなく模擬戦なので自分の実力を図るいい機会だとは思ってしまっていた。


「わかりました。お手柔らかにお願いしますね」


 少し硬い笑顔をサラに向けていったのだがどうやらサラは違うようで本気の目をしている。


「何をいっているんだ、同じ等級同士こんな機会は滅多にないんだ。お互い本気でやるぞ。お前たちもっと離れていろ!死にたくなければな」


 ニヤリと笑ったサラの横顔は奇しくも美しく、しかし何処と無く目の前の楽しみに目を輝かせる子供のようでもあった。人を惹きつける魅力というのは大人すぎず子供すぎず、そして固すぎず砕けすぎず。誰が見てもいい印象を受けるものなのだろう。


 これは本気でやらないとまずいな。


 サラとユウは25メートルほどの距離を開け向かい合った。ユウは身体強化をフルで使い警戒を緩めない。


「いくぞユウ!サンダー!!」


 サラの右手から打ち出された電撃は雷魔法にしては比較的難易度の低いものだった。これくらいなら無属性も魔力を壁にして受け止められる。そう判断したユウは正面に無属性の魔力を展開した。だがその時サラはまたもニヤリと笑った。

 ユウの魔力に触れそうになった電撃はまるでユウをかわすように急に方向転換し、ユウの真上にを通り後ろに回った。


「なんっ!」


 後ろからサンダーの直撃を受けたユウは前方に倒れてしまった。

 しかしそれだけではなかった。サラは直後、ユウの目の前まで一気に距離を詰めてきた。

 明らかに身体強化を自身に施している動き、間違いない。この人は別格に強い。


 サラの強く握られた拳がユウの顔に迫っていた。








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