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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
25/40

魔法師団3番隊

 

 魔法師団セントラル支部はギルドのさらに奥に立っている建物だった。四方を壁に囲まれている小さいセントラルのようだ。しかし建物自体は小さく、殆どがグラウンドになっている。主に魔法師団員の訓練を行う場となっているのだ。魔法師団はここで常日頃から訓練を行い、いつでもセントラルを守れるように万全の体制を取っているのだ。

 ユウはサラに引っ張られその入り口まで連れてこられた。入り口は2枚の観音開きの扉になっており高さは人2人分、約3メートル、横は2メートルほどとそれなりに大きなものになっている。


「ここが魔法師団セントラル支部だ。さぁ中に入ってくれ。」


 ドアは常に開いている。いつでもすぐに出動できるようになっているらしい。

 その中に入ると左右では団員たちが魔法を放ったり肉弾戦を行なったりしている。


「「「おはようございます!!団長!!」」」

「ああ、おはよう。みんなに紹介する、今日から1週間体験入団することになったユウだ。魔法師等級は第5位、おそらくここの誰よりも強い。私を除いてな」


 そんなことを言うと大抵の場合はトラブルになるだろう、なんてことを言ってくれたんだ。だいたいいきなり来た9歳の子供が自分たちよりも強いから、なんて言われて怒る人もいるはずだ。

 予想通り騎士団員達はザワザワし始めた。これは1週間虐められるのかな。そう思ったがユウの予想に反して団員達は


「第5位か、強いな」

「すごい奴だな。」

「俺魔法教えてもらおう」


 と言う具合にユウを認める声がほとんどだった。

 やはりこのセントラルという街に住む人たちは人柄がかなりいいらしい。それも教会のおかげだろう。


「ユウ、お前にはここで団員達に魔法の訓練をつけて欲しい」


 ユウの3番隊としての初仕事はこの人たちに魔法を教えることだった。ユウ自身もレイラ達に教えてもらっていたので多少は人に教えることは出来るだろうが良いのだろうか。ユウの魔法の使い方は特殊なので参考になるかわからないどころかユウも体内の魔力で魔法を使う使い方を知らないのだ。


「えっと、僕はちょっと変わった魔法を使うので人に教えるのにはあまり向いていないと思うのですが」


 レイラにもこの魔力の使い方を他人に話すことは禁止されているし教えることはできない。だから3番隊に入っているとはいえ、流石に断るつもりだった。


「そんなに心配なら実践してみようか。誰か2人、ユウと手合わせしろ!」


(ええぇぇぇ!!)


 そんな急に実践なんて、しかもなんで2人なんだ、1人でいいだろ。

 これは新人いじめという奴なのだろうか、まずはこうして新人に力の差を見せつけることによって従わせるという例のアレだろうか。


「じゃあ俺がやります!」

「私もやらせてもらおう」


 そう言って立候補して来た1人は姿勢が悪く、目つきが鋭いので常に睨まれている気がする黒髪の男。この男の体つきは貧相なものでローブをまとっていてもそれが伝わってくる。

 そしてもう1人は髪を7:3に分けた茶髪の男。ピシッと姿勢を正し、その間には正義という文字が浮かんでいる。まさに真面目系の委員長系だろう。日本にいたら生徒会長や政治家になるタイプだ。

 この2人が名乗りを上げ自己紹介を始めた。

 前者の名前は「マンシャ」、後者は「ケイン」というらしい。


「よし、お前達2人は本気でユウにかかっていいぞ。ユウ、相手してやってくれ」

「本当に2人同時にやるんですか?」


 当然だと言われてしまった。しかしマンシャとケインはやる気満々という様子でユウから15mほど離れたところに立って何やら話している。他の団員達は「行け!」だの「負けるな!」だの遠くから応援している。完全にアウェイの状況になっているのだからユウからすると環境的にはよくない。知らない土地で知らない人と戦うわけだからだ。


「ユウ、いつでも始めていいぞ」


 サラが審判の様な役割を担い2対1の魔法の模擬戦が始まった。

 はじめに動き出したのはマンシャだ。

 地面に両手をつき、魔法名を叫ぶ。


「ドーム!!」


 するとあたりの地面が音を上げ始め、ユウの周囲の土が盛り上がりドーム状にユウを囲んだ。正面にだけ人1人が通れるほどの穴が開いており、その穴からは向こう側にケインが見える。そしてケインも魔法を発動させた。


「フレイム!!」


 ゴウゴウと音を立ててケインの上に真っ赤な火が生み出された。土でできたドームに唯一空いている穴を狙い、その大きな火球が勢いよく飛んでくる。

 マンシャの土魔法で相手を足止めし、逃げ場をなくしたところでケインの火魔法で相手を焼き尽くす。これが2人が先ほど話していた作戦なのだろう。しかし


(へ?弱すぎないか?)


 初めに動いたのはマンシャだったが、ユウはそれより前に身体強化を自身の身体に施していた。あたりの状況を把握できるユウはマンシャがドームを作るのをわかっていた。しかし深読みしたのだ。


(このドームぐらいなら砕ける。おそらくこれは陽動で避けたところを狙われるに違いない)


 そう思ったからこそあえてドームの中に囚われた。するとどうしたことかそれ以上魔法の発動はない。それどころか火魔法の中級魔法フレイムをただ正面から撃ってくるのみ。これも陽動ではなく、本命だった様だ。明らかにユウの相手になる様なものではない。


(ふーん、なるほどね)


 急に自信が湧いて来た。これぐらいなら簡単に勝ててしまうぞ。そう考えたユウはここで手を抜くのではなく、圧倒的に勝つことにした。確かにここで負けていれば魔法を教えるという仕事にはつかなくていいかもしれない。しかしおそらくだからサラはこれぐらいはユウなら余裕で勝ってしまうと思って2対1にしたのだろう。下手にわざと負けて騙す様な行為をするのは気がひけるし今後の関係的にもよくないだろう。

 つまりユウのやることは1つ。


「フリーズ!」


 ユウの一言でピキピキと魔法が凍った。その氷はドームだけでなく、フレイムまでも巻き込んだ。本来、火魔法は水魔法に負けるが水冷魔法には負けない。しかしそれは力の差がなかったらの話だ。今回圧倒的にユウの魔法の威力が高かったため負けるはずのない、凍るはずのない火までも凍らさてしまったのだ。

 凍ったフレイムは氷の中で鎮火しただの氷の塊となり、地面に落ちた。すると地面に接した瞬間周囲数十センチの地面も凍ってしまった。それほどの冷気だったのだ。


「なんだと!!」


 当然ケインは驚いた。彼にとってフレイムが凍らされるなんてことはあり得ないことなのだろう。それほど自信があったのだがユウには関係ない。マンシャも驚いていた。ドームが凍らされていることではなくケインの火魔法が凍らされたことに。


「僕の勝ちですね」


 2人は驚いている暇などなかった。身体強化をしたユウの動きは2人の魔法や思考よりも速く、一瞬のうちに2人の背後に回っていた。本当の戦いならもう死んでいるのだがこれは模擬戦だと逃げようとした2人。しかしそれはできない。ユウの土魔法で足を絡め取られている。

 この模擬戦はユウの完勝だった。


「「「「うおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」


 あたりが歓声に包まれた。他の団員達が興奮して声を上げているのだ。


「2人とも自分の魔法を過信しすぎだ。上には上がいる。これからも精進しろ!」


「「はいっ」」


 2人へ厳しい言葉をかけたサラは次にユウの方を向いてウインクして来た。

 やはりこの人はユウが余裕で勝つと分かっていてこの模擬戦を組んだのだ。これでおそらくユウを下に見る様な団員はいなくなるだろう。

 そしてユウは団員達に魔法を教える仕事から逃げられなくなった。


「それでは今日からユウがお前達に魔法を教える。異論のあるものはいないな」


 もちろん誰も手も声も上げない。先ほどの模擬戦を見てむしろ魔法を教えてもらいたいと思うものばかりだ。

 それどころかキラキラと目を輝かせてユウを見るものまでいる。全く困ったものだ。


「それじゃあユウ、後は任せたぞ」


 そういうとサラは建物の中に消えて行った。団長だからおそらく仕事があるのだろう。ここは分かりましたと返事をして素直に見送っておいた。

 さて、問題はここからだ。何をどうやってこの多数の人たちに魔法を教えるのか、それが問題だった。それぞれ使える魔法の種類も違うだろう。

 まずは何ができるか聞くところからだろう。

 何の魔法が使えるのか、何属性の人がいるのか、魔法師団等級はいくつなのか、身体強化はできるのかなど、詳しく聞いて行った。するとこの3番隊は4属性全てほぼ同じ人数になっているらしい。魔法師等級は3と4がほとんどで1人だけ副団長が5だがここにはいない、そして身体強化は誰もできないそうだ。

 それでは魔法師としてやることは何なのか、ユウは身体強化を行い、肉弾戦も可能な魔法師だが、ここの人たちは違う、肉弾戦をせずに遠距離の魔法で標的を制圧するというものになっている。


「わかりました。つまり、魔法の威力と発生速度を上げるのが1番大事ですね。それではアレをしましょう」


 そういう時ユウは2人1組を作らせ、合計で12組が完成した。

 ユウがレイラ達とやっていた訓練の1つ。これは魔法の発生速度を上げるものでまず、2人1組で5メートルほどあけて対面に立つ。片方が初球魔法を放ち、もう片方が同じ初球魔法で相殺するという訓練だ。

 これの効果としては相手が魔法を発動した瞬間にこちらも発動させないと間に合わない距離にいることでは発動速度を上げる。そして相殺するために魔力量を細かくコントロールする。どちらにも魔法が当たらない様にするのだ。

 団員達はユウに従い、魔法を打ち始めた。まだ初日ということもあり、魔法は全く相殺できていない。どちらかの魔法があたり痛がっている。


(これは時間がかかりそうだ)


 そうこうしているうちにこの日の訓練は終わった。1日やって完璧に相殺できるペアはできなかった。たまに相殺することが出来ることもあった様だが実力かたまたまかもわからない。


「ユウさん、本当にこれ出来るんですか。ユウさんもできなかったらするんじゃないですか」


(できないわけないだろう!)


 これはユウがレイラ達とやった訓練なのだ初めはユウも全く相殺できなかったがこの訓練のおかげで魔力のコントロールと速さにはかなりの自信が持てたし、今では100%相殺することが出来るのだ。苦労しないでできたら訓練にならない。


「ならやってみましょうか。4人同時でいいですよ」


 そう言い、ユウは4人を選んだ。その4人はそれぞれ火、水、風、土魔法を使えるものにした。これはこの訓練の最終段階で、ユウも苦労した。なにせそれぞれの魔法のエキスパート達が魔法の威力を細かく変えて撃ってくるのだから相殺するのは大変だし当たればそれなりに痛いのだ。

 ユウに選ばれた4人の魔法師達は顔に不安な様子が映っていたがユウを4方囲んで手を前に出した。


「それでは遠慮しなくていいので初級魔法を連続で撃ってください。こちらからは撃ちませんので」


 そういうと更に4人の顔が不安そうになったが言うことを聞いてくれた。


「ファイア」

「アクア」

「エアロ」

「ロック」


 それぞれの魔法が異なる方向からユウに飛んでくる。ユウはそれを正面からは水、後ろからは火、右から風に左から土だ。ユウはすでに身体強化をして周りの様子を目を閉じてでも感じることが出来る。そこから魔法の魔力量を正確に読み取り、それぞれの方向にそれぞれの魔法を放った。


「「「「なっ!!」」」」


 すると団員達は驚いてしまった。この4つ全てを相殺する技術もさることながらユウは4属性を全て同時に使用したのだ。4属性魔法の使い手は伝説級の珍しさでこの人達はまだユウが4属性使えると知らなかったのだ。

 選ばれた4人も魔法を止め、固まってしまっている。


「どうしたんですか?連続でお願いします」


 そういうと4人は動き出しそれぞれ初級魔法を連続で放ち始めた。ユウは楽々とその全てを全て同じ魔法で相殺し傷の1つも負わなかった。

水が散り、火の粉が舞い、風が起こり、土が地面に落ちていく。ユウは立ち位置を変えずにクルクルと回りながら全ての魔法を相殺していくので踊っている様だった。その異様な光景に周囲の団員の視線は釘付けになってしまったのだ。

 魔法がやむとあたり団員に加え、門の方から見ていた人達からも大きな拍手が送られた。

 ユウは照れながらも門の方に一礼し、団員達の方を向いた。


「こんな感じです。明日もこの訓練を続けてください。必ず力になりますから」


「「「「「はいっ!!」」」」」


 もう団員にユウを疑う者はいない。みんながこの4属性魔法の使い手ユウに従うことを決めたのだった。



 この一件からユウが4属性魔法の使い手であることは瞬く間に広がってしまった。


 しかしユウは4属性魔法の使い手の希少性を甘く見ていたのだった。


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