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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
24/40

シギルの魔法

 

 精霊の国の魔法師団には1番隊から8番隊まである。1番隊、2番隊は主に王都に在籍している。そして3番隊はサラを団長に置き、ここセントラルを守っている。4番隊はあのシギルを団長にセントラルでのギルドの管理、5番隊から8番隊は精霊の国や龍の国のあちこちを仕事でうろうろしているらしい。その精霊の国において重要な戦力であり、エリートの集まりであるはずのさらにそのトップ、3番隊隊長のサラがこの安い宿の椅子に腰かけている。お茶やお菓子など何ももてなすものがなく、椅子も一つしかないのでユウは対面のベッドに腰掛けている。


「ユウ、ギルドでは色々あったようだが魔法師等級の計測を受けてくれて嬉しいよ。魔法師等級第5位だってな、その実力を買ってなのだが魔法師団に入らないか?私たち魔法師団の団長には団員を自分で推薦する権利が与えられていてな、よほどのことがない限りその推薦は通るようになっているんだ。で、どうだろうか」


 ユウは昨日魔法師等級を計測したばかりなのにもうその情報に第5位であることまで知れている。魔法師団の情報共有能力は高いものがあるのだろうか、それともギルドというものが...


 その前にまずは返事だ。魔法師団になるのは悪くないと思う。ユウはお金を稼ぐ手段を探していたし、魔法師団の3番隊となればこのセントラルに住んでいれる。重要な戦力というぐらいだからおそらく給料もそこそこにいいはずだ。森の中で暮らしていたユウは世間のことに詳しくないし、そんなユウが急に魔法師団なんて破格だろう。しかも試験などではなく、サラの推薦によって入れるときた。

 でも...


「僕はまだ魔法師団に入れるほど強くありません。それに年齢的にもふさわしくないと思います」


 ユウの年齢は9歳だ。前世の記憶があるからこの年齢に見合わない喋り方や態度をしている。そのせいで歳相応に見えないということはあるかもしれないがそれでも子供は子供だ。こんな子供が魔法師団に入ったとしても誰からも頼りにされないだろう。それに昨日シギルにボコボコニされたばかりで自分の強さにも自信はない。

 今のユウの目標はシギルに勝つことになってしまっていた。


「そんなことは気にしない。あのシギルが君は魔法師等級第5位の実力があると判断したんだ。その実力は魔法師団の副団長格に匹敵する。そんな人材を放っては置けない。それに年齢なんか関係ない。今までの魔法師団の最年少は6歳だからな」

「6歳!?」


 ユウは前世のことも考えると30歳になっている。だからこその今のユウがいるのだがその子は6歳で魔法師団に入団しているらしい。まさか自分以外にも転生している人がいるのか。もしそれならば1度会ってみたい。転生者同士の会話というものは色々と弾むものがあるだろう。

 サラの話はものすごい魅力的だ。ユウの人格と魔法師としても、実力をすべてを認めてくれている。それに魔法師団に入ることで自分の力を証明できるかもしれない。

 魔法師団に入ると拘束される時間が増えてしまうだろうからシギルに勝つのが遅くなってしまうかもしれない。


「僕は魔法師団には入れません。龍の国に行くという目標もありますし、それに...」


「シギルに勝つ、か?はは、それなら簡単だよ。シギルの能力は少し変わっている。特に魔力は特異系なんだが...」



 この世界には極稀に生まれてくる突然変異の魔法師がいる。その者は生まれながらに魔力が異常を示し、基本の4属性を全く扱うことができないが、その分特別な魔法を使えるようになる。それがシギルの魔法、『干渉魔法』だ。

 干渉魔法とはあらゆるものに干渉できる魔法。ユウはギルドの試験会場で干渉魔法による思考への干渉を受けた。そのため目の前の光景をを正しく認識できず視界が歪み、身体強化を勝手に解かれ、魔法の発動地点を変えられた。魔法師にとって思考とは重要なもので思考がまとまらないと魔法の発動すらできない。干渉魔法とは魔法師にとって天敵になる魔法だった。

 ユウが見た魔法の紐のようなものは干渉魔法によるものだろう。さらに特徴的なのは相手の体に魔力を入れ込むため、離れたとしても少しの間効果を持続させる事ができるのだ。


 しかしその最強に思える魔法も弱点がある。魔力を相手の体内に入れないと相手の思考に干渉できない。さらに魔法ヘは干渉できるが無属性のものには干渉できないのだという。

 ここから考えられる戦略は無属性の魔力により自身を包み、肉弾戦を行うこと。これこそがシギルを倒す方法なのだとサラは惜しげもなく教えてくれた。

 しかし普通の人では魔力で自身を包みながら肉弾戦を行う、などかなり高難易度になってくる。身体強化や魔力のコントロールと魔力量に自信のあるユウや魔法師団団長格だからこそできることなのだろう。


「干渉魔法、そんなカラクリがあったんですね。それなら僕も勝てそうです。」


 シギルの謎が解けた瞬間何かが軽くなった。自分が弱かったわけではない。そもそもシギルの能力を知らないと勝てない相手ではないか。だからルーシアさんは「初戦でシギルには勝てない」と言っていたのか。知ってしまった今だと簡単に勝てそうだ。昨日の自信を喪失していた自分を思い出し少し恥ずかしくすらなってしまった。


「あとシギルは干渉魔法の力を使って相手の魔力や考え事と言った普通はわからないことも大体見破るから気持ち悪いんだ。あいつと会うなら常に魔力を纏っておくことをおすすめする」


 確かに気持ち悪い。常に何か見通されているような感じがするしいつ思考に干渉されるかわからない。


(あの人絶対友達少ないな)


 しかしなんだろう、セントラルにとどまると決めた翌日にセントラルにとどまる必要が無くなった。

 じゃあもう龍の国目指しちゃいますか?だって元から龍の国に行って力の正体を調べたかったんだし。


「あ、あと龍の国にはセントラル以外からも行けなくなったそうだ。残念だけどしばらくは龍の国は諦めてくれ。どうだ?魔法師団に入らない理由は無くなったんじゃないか?」


 サラがニヤニヤしている。きっとそのことも知っていてユウが龍の国とシギルを理由に断ると予測した上でスカウトに来たのだろう。この女、策士である。


「確かに、先程言ったことは断る理由なならなくなりました。でももう一度シギルさんと戦ってみたいですね。あの人は底が知れないような気がして必ず勝てるとは思えないので」


 シギルの魔法を知ったユウは確かに簡単に倒せそうだと思ったが、本当にそれだけなのだろうか。あの色々見通し、色々隠しているような顔がそれだけで対処出来るとは思えない。だからこそもう一度戦ってみて完全に自分の自信を取り戻したい。そう思ってしまったのだ。


「でも一魔法師団の団長という者はすぐに会える人ではないぞ?」


 確かにそうだ、昨日ユウがあったのは計測員としての仕事のために過ぎない。今ユウがやろうとしていることは自分のためにシギルの時間を割いて欲しいということだ。会えないのは当然だろう。


「そこで提案なのだが、シギルに会えるように便宜を図ってやる!だから1週間でいいから3番隊に体験入団してみてくれ、それで気に入らなかったらもうスカウトしない」


(ぐぬぬ...)


 またしてもサラに上手いことやられている気がする。それだけが気に入らないが本当にシギルに会えるのなら1週間で魔法師団をやめればいい話だ。始めから最後までサラの思う壺というところには納得いかないがユウとしてはそうするしかない。


「わかりました。1週間だけ体験させて貰います。」

「やった!」


 すごい喜んでくれた。こんな美人が自分なんかが魔法師団に入団するだけで喜んでくれるなら悪くないな。そう思いかけたギリギリのところで踏みとどまった。危うくサラの持つ魅力に引き込まれるところだった。


「じゃあ早速行こうか!宿の前で待っているから準備してくれ」

「え?すぐ行くんですか?」


 さっき団長にはそんな会えないって言われたばかりなのにこんなすぐに行って会えるのか?それともやはり団長の力は物凄くていつでもすぐ会えるとかか?

 サラはユウの返事を聞かずに部屋を出て行ってしまったので急いで支度をした。とは言っても顔を洗い、少し寝癖を直し、着替えただけだ。今思うとこんな格好であのサラにあっていたのか、


(恥ずかしい…)


 鍵を閉めて宿の前で待つサラと合流したユウはすぐにギルドへと向かった。

 その道中でギルドに入る前に魔力を纏うように散々注意された。ユウも今回は勝つしかないので気合い十分に話を聞いていた。


 魔力を纏い、いざギルド内に入るとまだ朝早いせいか昨日ほどの人はいなかったがサラの人気だろうか、あたりの人達がざわざわと何やら喋り始めた。サラはそんなことは御構い無しとカウンターに向かった。


「おはようございます。サラ様、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「シギルに合わせてもらえるか」


 受け付けの女性は昨日の人と同じ人だ。サラに挨拶した後ユウにも一礼してきたことから昨日のことを覚えているのだろう。

 ユウが破壊したギルド内の個室1は昨日の今日でもう修繕が始まっていた。


「わかりました。ご案内いたします」


 そう言って受付の女性はすぐにシギルの元へ案内してくれた。やはり団長の力というのは物凄いな。こんな大きな施設のトップにアポも無しにすぐ面会できるのだから。

 受付の女性についてギルドの裏に入った2人は階段を登り、2階の1番奥の部屋に案内された。


 コンコンコン


「失礼します。ギルド長、サラさんとユウさんがお見えです。」


 そこにいたのはソファに寝転がってダランとしているあのひょろ男、しかり4番隊隊長のシギルだった。


「お、サラ遊びに来たん?君僕のこと嫌ってなかったっけ?それにユウ君もおるやんどうしたんどうしたん」


 ユウは身体に無属性の魔力を纏いながら身体強化であたりを警戒していた。

 極薄い魔力の紐がユウに近寄ってきていた。抜け目のない男だ。しかしその魔力は無属性の魔力に阻まれてで止まった。

 その時シギルの目が少し細くなった。


「ちょっと〜、サラ僕の魔力のことユウ君に話したん?せっかく楽しみにしてたのに」

「お前のその誰でもとりあえず干渉する癖を早く治せと散々言っているはずだが?まぁいい、今日お前に用があるのはこのユウだ」


 サラはシギルを軽蔑するような目で警戒し、あたりの空気が少しピリついた。雰囲気の話ではなく、電気が少し走ったような感じだ。おそらくサラの魔力だろう。


「今日は僕ともう一回戦って欲しくて来ました!」


 ようやく昨日無くした自信を取り戻すことができる。ユウの気持ちは先走っていた。しかしシギルはメガネを外し、ユウを凝視したあと予想外の反応をした。


「んー、降参っ!僕の負けや、昨日の身体強化見たからあんなんで殴られたら死ぬで。サラに種明かしされたみたいやし勝ち目ないわ」


「へ?」


 あっさりと降参された。シギルの雰囲気を見るにもっといろいろな引き出しを持っていてそれで対応されてしまうのかと思って気を張っていたのだが何もせずに勝ってしまった。なんというか消化不良な終わり方だ。


「ん?なんかおかしい?サラから聞いてると思うけど僕この魔法しか使えへんからパターンなんか限られてるで。対応できる人には絶対勝てへん、不便な魔法やでほんまに」


 そうだった。シギルは干渉魔法という特別な魔法が使えるからこそ普通の魔法が使えない。基本の4属性全てを使えるユウからすれば魔法なんていくらでも増えていくがシギルは他に使える魔法が無い為、パターンは限られてしまうのだ。


「だから言っただろ、勝つのは簡単だって。さて、次は3番隊に挨拶しに行こうかユウ!」


「ん?どういう話になってんの?ユウ君3番隊には入ったん?」


 サラの切り替えの早さについていけていないユウは取り敢えずシギルに勝つことはできた。こういう魔法もあるのだといういい勉強になった。なんでも力で勝てばいいというものではなく小手先のテクニックも付けていかないといけない。

 ユウはシギルに今朝サラが宿に訪ねて来たこと、3番隊にスカウトされたこと、その代わりにシギルに合わせてもらったことを話した。


「僕いつも暇やからいつでも会えるで。ルーシアちゃんが基本的に全部やってくれてるしな。『ギルド長には任せておけません』って言われてるし。ははは」


「え?どうゆうことですか?サラさん」


 サラは扉の方を向いていてこちらを絶対に見ないようにしている。これは完全にアレだ。サラさんにしてやられただけだ。団長には簡単に会えないということから嘘だったのだがギルドに連れてきてくれた以外にもシギルの魔法について色々と教えてくれた恩はある。

 昔レイラが言っていた。


『恩を忘れちゃいけない。どんな形でもいい。必ず返すんだよ』と

 騙されていたこと自体は少しイラッときたが恩はある。今回はそれを3番隊に1週間体験入団するということで返すとしよう。


「はぁ、わかりました。とりあえず1週間は体験しますよ」

「本当か!?」


 そういうとサラはシギルなどどうでもよくなったかのようにユウを引っ張りだした。


 そしてユウはサラに強引に引っ張られ、魔法師団セントラル支部に急ぎ向かうのだった。




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