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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
セントラル編
22/40

魔法師等級計測

 ギルド内にいる人たちの動きはピタリ止まっている。まるで時間が止まっているようだ。


「すまないね。ユウ君、フィアナ君。このネシア君も悪気があってしているわけではないんだ、許してやってくれ」


 1人だけ時が進んでいるアルバランはユウのそばに来てコソっと謝ってきた。


「この2人は先ほど、教会の真実の間にて善を証明した。よってこの2人へ危害を加えることを禁止する。」

「なるほど、真実の間に行ったのであれば何もいうことはできません。ですが龍の加護持ちをセントラルに置いておくわけにはいきません。危害は加えないと誓いますのでこの後のことは私達に任せてもらえませんか」


 アルバランの言葉を聞いたネシアはナイフをしまいユウから離れた。

 セントラルに住んでいる人達の真実の間に対する信頼は絶大なものだ。さっきまでユウを殺すために行動していたネシアがあっさりとナイフをしまっているところからもその信頼の絶大さがわかる。

 もはや今となっては警戒すら解いてしまっているようでユウはあまりの変化にポカンとしてしまい、さっきまで隣にいた『死』が勘違いであったかのようだ。


「それに関してはギルドの仕事ですのでお任せいたします。お願いしますね。ネシア君」

「はい。お任せください。司祭様」


 真実の間に対する信頼もあったが教会、そして司祭への信頼も厚いものがあるのだろう。あのフレンドリーでさらには鋭い目をして殺しに来ていたネシアが頭を下げ、失礼のないように振舞っている。

 あたりの人達もザワザワと話し始めた。フィアナはというとまだ1人だけ時間が止まっているようだ。


「フィアナとユウ、さっきは悪かったな。善を証明していたとは知らなかった。一応聞いておくが、フィアナの方は龍の国出身だな?ユウはどうなんだ?」

「僕は精霊の国です。旅の途中でフィアナと出会ってここまできました。こちらこそ少し頭に血が上ってしまいました。すいません」

「は、はいっ!」


 ようやくフィアナも動き出した。手続き時の和やかな雰囲気とまではいかないが、ピリついた雰囲気はどこにもない。


「そうか、では申し訳ないがフィアナ君には龍の国に帰ってもらう。今は龍の国とトラブルが発生しているので一般の馬車はないが送還用の馬車が出ているからそれに乗ってくれ」

「え?それに僕は乗れないのですか」


 突然のお別れ宣告だった。ユウもフィアナもとりあえずの目的地が龍の国だったことから強制送還用の馬車に立候補しようとするユウだが、ネシアはそれを冷静に断った。言い分としてはこうだ。


 現在は精霊の国と龍の国の間のトラブルのせいでお互いの国民を強制送還により帰国させ、これ以上のトラブルを防ごうとしているところらしい。そのため、ユウは龍の国に行くことはできず、フィアナはセントラル(精霊の国)にとどまる事が出来ない。


 ということらしい。


「そうですか、フィアナここでお別れだな。短い間だけど結構楽しかったぞ。また龍の国に行ったら会おう。あと金返せよ」

「お、お金はちゃんと返すよっ。…まだ無いけど…これは仕方のないことだし私はとりあえず龍の国に帰るからユウは旅、頑張ってね」


 急な別れとなってしまったが旅とはそういうものだ。出会いがあり、別れがあり、その1つ1つを大事にはすれ依存はしない。そもそもフィアナとは出会ってまだ数日というところだ。ユウの初めての旅仲間ということもあったが、2人とも短い言葉と約束を交わし、フィアナはネシアに呼ばれた魔法師団の1人に連れていかれた。


「さて、ユウはこっちにきてくれるか。大丈夫、危害はもう加えないよ」


 ネシアの明るい笑顔を見るがその中に殺気を全開にして襲いかかってきた者がいると思うと少し尊敬してしまう。恐怖ではなく尊敬だ。ユウはこの短期間でネシアの柔らかな面と鋭い面の両方を見てしまったからだ。動揺してしまうのも仕方ない。


 ネシアについていくと個室1〜3ではなく、ギルドの裏に連れていかれた。ギルドの奥も相当広くなっており、廊下を進み1つの部屋に通された。


「すまないな、さっきはユウの身体強化が想像以上にやばそうだったから少し力が入ってフィアナに傷をつけてしまった。ユウはフィアナを守ろうとしたのだろう?もしかして惚れているのか?」


 部屋に入ると早々ネシアはニヤニヤといやーな顔をして聞いてきた。それに話からネシアは魔力を感じら事はできるが細かい方までわからないのだろう「やばそう」などと言っている。


「惚れているわけじゃありません。仲間が傷ついたら放っておくわけないでしょう。それにネシアさんの『フラッシュ』ですか?あれの方が()()()ですよ」


 ネシアの言い方を真似し、少し嫌みたらしく言ってみたがこれはネシアが引き出した言葉遊びの1つだろう。さっきの雰囲気を和ませ、こちらをリラックスさせるために行ったのだ。見た目の割に気配りが出来ている。


 コンコンコン。

「失礼します」


 ふざけた話をしていると部屋がノックされ1人の女性が入ってきた。ネシアとは正反対と言うべきか、メガネをかけクールな雰囲気。筋肉がついているわけでもなく、女性らしい体つきをしている。


「ユウ様、今回はネシアが大変失礼したようで申し訳ございません。このような馬鹿ではありますが仕事熱心なのです。どうぞご理解いただければと存じます。」


 深々と頭を下げ、いきなりの謝罪から入ってきた。フレンドリーなネシアとは違い、事務的な言葉遣いや所作から「秘書」と言う言葉がぴったり似合う女性だった。


「おい、馬鹿は余計だろルーシア」

「余計ではありません。あなたは龍の国とのトラブルが発生した今の状況で龍の国の人を殺しかけたのです。さらにギルドの個室1を破壊していますしその修繕分も給料から引いておきます。黙って反省していなさい」


 この秘書っぽい女性はルーシアと言うらしいがかなりキツそうな性格をしている。ミスを細かくついているのだろうネシアの顔はどんどんと落ち込んでいく。フレンドリー、殺気、落ちこみといい表情がとてもよくわかる人だ。


「個室については僕の魔法で壊してしまったので修繕費は僕にも負担させてください。」


 そう、個室を破壊したのはユウの魔法だ。あの時にフィアナを守ろうと発動したハリケーンの風に外側に向けて指向性を持たせたものだ。ネシアのせいで始まった戦闘とはいえあそこまでする必要もなかったのかもしれない。


「そうですか!では修繕費はギルドで待ちますので代わりに魔法師等級を測らせてもらえないでしょうか」


 待ってましたと言わんばかりのルーシアの反応にネシアはため息をついている。おそらく何か考えがあることにネシアは気づいていたのだろう。

 ユウが修繕費を持つ発言を引き出しその代わりに魔法師団等級を測る。なにが目的なのかはわからないがそれぐらいで修繕費を払わなくて済むなら安いものだ。


「わかりました。魔法師等級を測らせてください」

「本当ですか!?ありがとうございます。では早速こちらの書類にサインをお願いします」


 準備が良すぎるだろ。魔法師等級を測るなんて話ここに来るまで一切していないのにも関わらずすでに魔法師等級を測る上での同意書まで持ってきていた。ルーシアは初めからユウにやらせるつもりだったのだろう。ネシアはまたため息をはき、両手のひらを上に向けて肩をすくめている。


 魔法師等級計測における同意書


 ・魔法師等級はギルドカードに刻まれるものとする

 ・魔法師等級により受けることができる依頼が決まっている。

 ・高等級の魔法師は国からの直接的な依頼をされることもある。

 ・国からの依頼には強制力はないが無理のない範囲で受けることを原則とする。

 ・計測員はギルドの魔法師が担当する。

 ・等級はある程度の決まりはあるが基本的には計測員の個人的な視点に基づき決定する。

 ・決定した等級に対し、取り消すことはできるが下げたり、上げたりすることはできない。

 ・署名者は上記の全てに同意したものとする。


 このよう内容になっている。特に強制力があるものはなかったのでユウはサインした。


「はい。ありがとうございます。それでは試験場にご案内しますのでついてきてください。ネシアは仕事に戻っていいですよ」

「はいはい、じゃあなユウ、しっかりやれよ」

「色々とご迷惑をおかけしました。ありがとうございます」


 3人で廊下に出たところでネシアは仕事に戻るため、離れていった。一応お礼を言い、見送ったが「行きましょう」というルーシアの言葉で再び歩き始めた。

 廊下の突き当たりのドアを開けるとその奥は中学や高校の体育館と同じぐらいの広さの部屋になっていた。


「ここが今回の試験場になります。計測員ですが今回は私、ルーシアが務めさせていただきます」

「はい。それで僕はなにをすればいいんですかね。」


 ルーシアが計測員をしてくれるらしい。できる女感のあるこの人が計測員ならなにも問題はないだろう。

 とは言ってもユウは何も知らなかった。どのぐらいの等級が普通なのか、等級がどこまであるのか、自分が周りと比べてどのレベルに位置するのか知るにはとてもいい機会だった。


「それでは等級の説明からさせてもらいますね。ユウさんは等級についてどれぐらいご存知ですか?」

「えっと、、全く。」

「わかりました。それでは最初から説明させてもらいます。等級というのは」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「という風になっているのです。それでは計測を始めましょうか」


 いや、なっっっがい。めちゃめちゃ丁寧に教えてくれたのだがルーシアさんの話が長すぎる。

(わかりやすくまとめておこう)


 等級はまず、魔法等級と騎士等級がある。それぞれの等級は1〜8まであり、1が低く、8が高い。しかし8はほとんどいないという。

 そして先ほどギルド内にいた人達のほとんどは2、3だそうだ。

 計測にも決まりがあり魔法師等級の場合、

 第1位・・・初級魔法が使える

 第2位・・・初級魔法が連続して使える

 第3位・・・中級魔法が使える

 第4位・・・中級魔法が連続して使える。上級魔法も発動できる

 第5位・・・上級魔法を連続して使える

 第6位・・・超級魔法を1人で発動可能。混成魔法も使える

 第7位・・・超越魔法を使用可能。混成魔法を1人で連続して使える。

 第8位・・・第7位までの枠に収まらない者に与えられる。特定の規定はない。

 となっている。

 これを基準に計測員は受験者の力量を判断し、等級を決めるということだ。騎士等級については今回は割愛しておこう。なにせ長すぎるからな。ちなみに魔法師団団長格の人たちは第6位以上らしい。それでも化け物と呼ばれるレベルだそうだ。


 ユウは自分で使える魔法の中でも上級魔法を習得している。そして例の特性のおかげで魔力が底をつくことはないので連発可能だ。とりあえずやってみよう。


「では、行きます!」


 ユウは目を閉じて集中し始めた。


(まずは..)


「ハリケーン!」


 風の上級魔法、ハリケーンは風をコントロールし高速で回転させることで竜巻を起こす。そしてその風の中に無数の風の刃を仕込むことで破壊力が段違いになった魔法だ。さらにユウのものは3つの竜巻を生み出している。

 ルーシアは3つの竜巻を冷静に見つめている。


(まだあんまりだな、ならこれで)


「バーニング!!」


 ユウの声に反応して3つの内1つの台風が風だけでなく炎を含んだ台風に変わる。

 ヒョウヒョウとなる2つの台風に加え、ゴウゴウと激しく燃え上がる1つの熱を帯びた紅蓮の台風というのはかなりの迫力だ。

 しかしルーシアはこの台風を見てもピクッと目を開き「ちょっと驚いたけど普通だ」と言わんばかりの表情をしている。ユウはムキになっていた。

(この冷静な女性を脅かしてやる必要があるな)


 ユウは即座に思いついた魔法を発動させる。


「フリーズ!それと、ライトニング!!」


 すると残る2つの台風も変化を始めた。

 1つは冷気を帯びた青色の台風に、もう1つはバチバチバリバリと雷をまとっている。炎と冷気、そして雷をまとった台風の3つを完全にコントロールしてみせるユウ。これは風、火、水の3属性を操っていることを示しているのだ。こんなことがあっては驚くのを我慢するのは不可能だ。ルーシアは手に持っていた資料を落としてしまった。顔は驚愕に染まり、目と口を大きく開いてしまっている。メガネは少しズレてしまい、せっかくの美形が台無しの状態だ。ルーシアが落とした資料がユウの起こした台風により舞い上がり、燃える。そして凍る。凍ったものが溶け、また燃える。巻き込まれているのが人ならここは地獄絵図になっていただろう。

 ルーシアがビックリしたことに満足したユウは台風の勢いを殺し、魔法を停止させた。


「こんなところですかね。どうでしたか?僕は等級第何位になりますか?」


 ドヤ顔である。ルーシアの手元にはもはや紙の一枚すらありはしない。全て燃やし、凍らせてやったからだ。我ながらすごい魔法を思いついてしまったな。うんうん。腕を組み満足しているユウはルーシアを見るが彼女はすでに放心状態である。

 瞬き1つしていない。このままでは彼女がドライアイになってしまう。ユウは仕方なく、彼女の方を揺さぶった。


「あのールーシアさん?」


 ユサユサと数回揺さぶるとようやく精神がルーシアの身体に帰ってきたようだ。


「はっ!な、なんですかこれは…今の…オリジナル魔法ですか!?ちょっ、ちょっとこれは私では判断できません。代わりの計測員を呼んできます」


 ピューン

 そんな擬音が正しいのかわからないがルーシアはものすごい勢いで試験会場を出て行った。そしてすぐに戻ってきたのだが1人の男を連れてきた。


「痛い痛い、ちょっとルーシアちゃん。そんな強引に引っ張らんでもちゃんとついていくで〜。まさかこんな大胆な行動とるなんてもしかしてルーシアちゃん僕のこと…」

「さっき私が言った通りこのユウさんはすごい方でした。私では魔法等級を測ることができないのでお願いします。」



 すこし変わった喋り方をするひょろっとした男がルーシアに引っ張られて試験会場に入ってきた。いかにも弱そう。と言ったところでメガネをかけており、髪の毛もボサボサだ。


「あのー、この人は?」


 ルーシアの方がよっぽど強そうなので少し呆れ気味でルーシアさんに尋ねたのだがひょろ男がこっちに向き直りメガネを外した。


「へぇ〜君変わった魔力してるやん。初めまして、僕は魔法師団4番隊隊長のシギルや。このギルドで一応ギルド長って立場なんやけど知らんのかな?」


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