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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
序章
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詩のような置き手紙

今日も朝が始まる。最悪の夜が明けてこれまた最悪の朝が始まった。昨日はぐっすり寝たのかもしれないし一睡もしていないのかもしれない。そんな状態が今なのだ。

 もともとうちはかなり貧乏だった。借金も正確な額を息子の俺には教えられないぐらいあったのも知っている。だからこそ大学に行き、自分は親のようになってたまるかと思い、必死で勉強して大学の学費もアルバイトをして稼いでいた。物心ついた頃から親に迷惑をかけられたことはあっても迷惑をかけたことはないと思う。


「それなのにっ!!!」


 声を荒げてしまうほどの怒りが体の底から込み上げてきてどうしようもなかった。それはなぜか

親が借金の連帯保証人を俺にして逃げたのだ。なぜ気づけなかった。最近何か様子がおかしかったんだ。やけに優しく接してくる。何時に家に帰るか聞いてくる。そんなことこれまでなかったのに、過ぎた俺の誕生日を遅れて祝ってくれるのかとか思っていた俺が馬鹿らしい。馬鹿すぎて自分にも腹が立つ。




 昨日の夜2時ごろにアルバイトから帰ると置手紙があった。


「もう無理だ。後は任せた。元気でな。 4500万」


 何だよこれは。俳句なのか??川柳か???ハンドルネーム4500万さんってか・・・


 俺がアルバイトに行く時間を見計らって両親は逃げたらしい。ご丁寧にケータイは繋がらない。すべてを理解した俺はすべてのやる気をなくしてしまった。頼るあて、親戚はいない。

まずは大学をあきらめる。将来のことも諦める。働くしかないし今までの頑張りはこの瞬間ですべて無駄になってしまった。今日が終わったとしても明日が来るのである。生きていく上での逃げ場は彼には存在しない。


「終わりだ、もう終わり。」


それから記憶が曖昧だ。気がつくと外が明るくなっていて、部屋が荒れていたくらいだ。

何も落ち着かないが、何もしなくていいわけがない。


 「今日は大学に手続きに行こう。」


 フラフラな体に力を入れてなんとか立ちか上がった。服装など気にしない。いつもの道はいつもより暗く感じる。体が覚えてるから足が学校に連れて行ってくれるだけで何か考えながら歩いているわけではない。そのせいもあり、前から迫るトラックにもギリギリまで気づかなかった。太陽の光を反射させたフロントガラスからナンバープレートの少し上までで彼の視界は全て埋まってしまった。何をどうしても衝突は避けられない状態なのだ。


「ああ、ほんとに終わった。クソみたいな人生だっt」 ドゴンッ!彼の視界は一瞬で暗くなり心も深い闇に沈んでいった。彼の、織田ハルトの人生はそれで終わったのだった。





 最初に思ったことは「転生って本当にあるんだな」だった。暗くなった視界がだんだん見えるようになってきて、心なしか心も少し明るくなったような気がする。人や名前もわからないような生き物や半透明な生き物が続々と、一つの方向に進んでいるのが見えた。とりあえず後ろをついて進んでいるがこれが自分の意思なのかどうかわからないのだ。(生き物じゃなくて死に者かな?なんて冗談を考えるくらいに長いような短いようなよくわからない時間はあった)その先には一点の白い光があったが目を凝らしても何か奥に見えるわけでもなく不思議と何もわからない。とにかく何もわからないのだ。歩いているのか浮いているのかよく分からない状態でゆっくり進んでいたのだが突然彼が立っていた位置の床のような見えない何かが消えてその世界の下の方へ落とされてしまった。

それは本能的に感じただけだがイレギュラーであり、これまで誰もそんなことにはなっていなかった。

やはり、自分は不運でありみんなができる普通の事をさせてもらえないのか。


「何で俺だけこうなるんだ」


叫びもむなしくハルトはその世界の下に落ちていった。



 目が覚めるとそこは背の高い木がたくさん生えた森のようだった。木漏れ日が心地いいしうとうとしてきた。だが上を見上げる彼を覗き込む者を見た瞬間に目が覚めた。熊だ!それに周りには狼に野犬までいる!


「あうぇあいお!」(逃げないと!)       

何かがおかしかったが今は気にしてる暇はない。そう、俺は逃げないといけないのだから。

 しかしおかしいのは声だけではなかった。なんということか体が全く動かないのだ。


「あお~ううぇわおい」(くそ!こんなときに!)    


ん?んん!?!?

唯一動かせる首で左右を見渡すとむちむちをした腕にきめ細かく綺麗な肌、とても小さな腕に手だった。

そしてこの位置、向き、感触、どうやら間違いない。


「おうぇわああううぃあうぇい!」(俺赤ちゃんになってるじゃん!!)


そこでようやく気づいた。そう、俺は赤ちゃんになっている。そしてどう猛なこいつらに囲まれているという絶体絶命の危機に陥っているのだ。

このまま食われて俺の第二の人生終了!?それはないだろ!いや、俺の人生だ。あり得てしまう。あり得てしまう!!

このまま死んでたまるか、今度こそ生き延びてやるという気持ちはある。かと言って何かできるわけではない俺に1匹の狼が顔を近づけてきた。食べる気だ。俺を食べる気だ、間違いない!


「あうええ~あうぇあ!」(助けてだれかー!!)


目の前に迫った狼にもうだめだと目をつぶると、ペロッ。「うぇ?」(へ?)頬をなめられて近くに座った狼。

 さらにそこに集まった動物たちは次々と近づいて座っていった。そうして俺は様々な動物たちに囲まれた。犬、猫、狼に熊、猪もいる。その全てがこんな無抵抗な俺を襲うことなく近くに座っているだけ。明らかにおかしい。

 程なくして杖を片手に魔女のコスプレをした痛いおばさんがやってきた。すると周りの動物たちは痛いおばさんを警戒して威嚇を始めた。だが不思議と悪い人のような気はしなかったので警戒を始めた動物たちを止めようとしゃべった。が、どうやらしゃべっているつもりだったのに自分は思いっきり泣いていただけらしい。動物には人の感情を読み取る力があるというがどうやら気持ちが通じたようで、動物たちは警戒を緩め痛いおばさんに道をあけた。すると痛いおばさんはゆっくりと俺に近づき俺を拾い上げた。

そして森の中に消えていく動物たちを見てこう言った。


「ふん、余計なもんを拾っちまったかねえ」


「あうあうあ~!」(誰が余計や!)


こうして俺は痛いおばさん、名前はレイラというらしい、に拾われた。

 一時はどうなることかと思ったが何とかなりそうだ。

 せっかくの第二の人生なんだ。生きるぞー!

意気込んでいるそのとき、杖に足をかけたレイラばあちゃんは急にあれだけ背の高かった木よりも高く飛び上がった。俺もはじめは死ぬほどびっくりしたが何事もないかのようにただの杖に乗り、当たり前のように飛んでいる。こうしてようやく理解した。そして楽しみにもなった。


「あいおああううぇあ!」(ここって、魔法が使える世界なんだ!)


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