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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
序章
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セントラルへ

 次の日の朝、ユウは昨日と同じ部屋で目が覚めた。

 昨日のような町人の怒号は消え去り、しかし今日は家の中が騒がしい。


 ガチャ


 部屋を出てみると、ガノル邸の人たちが忙しそうに動いているのだ。



「あのー、何かあったんですか?」


 昨日引き止められたメイドさんがたまたまいたから聞いてみる。


「はっ!ユウ様。おはようございます。急いでユウ様たちが出立なさるということで私たちはその準備をしておくようにセルガノル様からおおせつかっております。」


 まさかこんなに大事になっているとは、それにこんなに屋敷内が騒がしくなるほどの準備って何?

 ユウは魔法を使えるため、そんなに多くのものを必要としない。移動もそんなにかからないだろうから野営をするつもりもないし、、、


「ガノルさんはどちらにいらっしゃいますか」


「セルガノル様でしたら執務室で書類の整理をされているはずです。ユウ様でしたら行っても大丈夫だと思いますよ」


「そうですか、ありがとうございます。」


「はい。」


 短く返事をしたメイドさんは優しい笑顔を浮かべてすぐ仕事へと戻っていった。

 さて、執務室に行くか、行って何をこんなに準備しているのか聞かないとな、それに特に何もいらないと伝えないと、、


「あ、執務室ってどこだ」


 肝心なこと聞き忘れていたことに気付いたが朝も早いので屋敷をぶらぶら探すことにした。

 それにしても立派な屋敷だな。華美なものが多いわけでもないのだが使われている木の質感が住んでいる人に落ち着きを与えてくれる。そんな空間が作られているこの屋敷は広く、ここに来たばかりのユウは歩いていて飽きない。

 だが学校の教室のように[執務室]と書いてあるわけでも屋敷内の見取り図があるわけでもないのでわかるわけがない。

 仕方ない、フラフラ歩いて次あった人に聞こう。

 そう考えて歩いていると声が聞こえてきた。


「なんでユウ君を追い出したりしてるの!!!少し土地を傷つけたけどあの子がいたから暴龍を殲滅できたのよ!?それをこんな形で追い払って恥ずかしくないの!!」


「だから!ユウ君は自分から出ていくといたんだ!彼が決めたことは私たちが意見することじゃないだろう」


「それはそうだけど、、昨日もあんなに言われ続けていたし、あんまりだわ。」


 おそらくだがリリーさんとガノルさんが言い争っているようだ。それにここが執務室なのだろうが、、、

 入りにくい。


「それは私も思っている。だがこれが」

「ッ!誰!」


 どうやらリリーさんは俺に気付いたらしく、勢いよく執務室の扉が開かれてリリーさんと目があった。


「あ、、お、おはようございます。」


「ゆ、ユウ君、、、ごめんねこんな形になってしまって。」


 突然リリーさんは俺に謝ってきた。おそらく町の人たちがやったことに対して謝っているのだろう。


「全然大丈夫ですよ、気にしてないです。それよりも、これは自分で行くと決めたことなのでお二人とも気にしないでください。」


 気にしてなくはない。だがここでそんなことを言っても何も変わらないし、それにこの二人は何も悪くないのだ。

 二人は真剣にユウの目を見ていた。その顔には申し訳なさがにじみ出ていたが逆にそんな顔をされるとこっちが申し訳なくなってしまう。


「わかった、だができる限りの支援はさせてもらうよ。」


「そうよ、私たちにできることなら何でも言っていいのよ」


「そのことなんですが、何をあんなに準備しているのですか?」


 ようやく本題に入ることができ、内心ホッとした。


「ああ、あれは1週間分の食料、水、それから衣服にこの土地で作られた果物、あとは野営用に寝具とテントの用意、安物だが火を起こせる魔法のスクロール、あとは魔物除けに夜道を進むためのランプに草が邪魔な時用の鎌だろ、あとは」


「ちょ!す、ストップ!ストップ!なんでそんなに準備してるんですか!そんなにいらないですよ」


「セントラルまでは3日あれば普通にたどり着けるがユウ君はまだ旅を始めたばかりだと聞くからね、付いていきたいのだがそれができないので代わりに色々なものをあげようと思ってね。」


「大丈夫ですよ!そんなにしなくても3日以内にどうせたどり着けますし、食べ物も狩りができますし、魔法で水は出せますから。それに、、そんなに荷物が増えても困ります。」



 正直に思っていることを伝えた。ガノルさんが誠意でやってくれていることは理解しているしありがたいのだが申し訳ないがそんなにいらないのだ。

 そう伝えるとガノルさんは眉をハの字にして悲しそうな顔になってしまったが渋々納得してくれた。








「ホントに大丈夫?二人ともあと2.3日ぐらい泊って行ってもいいのよ」


 町の入口まで見送りに来てくれたのはリリーさんだけだった。ガノルさんは町のことで忙しく、バロさんは店の修繕をしているらしい。


「ありがとうございます。でも僕も急ぎたいのでもう行くことにします。」

「リリーさんありがとねー」


 短くお礼の言葉を述べて一礼し町を出た。


 町の入口は2か所あり、南側がユウがこの町に来た時に通ったところでクレーターがある方、今いるのは北側の門だ。こっちには道とまでは行かないが人が多く出入りしているのだろう多少通りやすくなっている。


「さて、フィアナ、いろいろと聞きたいこともあるしゆっくり歩きながらセントラルを目指そうと思うんだけど、どうする?」


 どうすると聞くのは出会ったばかりで別にこいつには俺についてくる必要はないからだ。


「んー、セントラルには行ってみたいし、道中獣に襲われるのも嫌だからついて行こうかな。ってか龍の国までついていくことにするよ。ユウのことを族長たちに聞いてみたいし」


 こういう会話をしながらもうすでに歩き始めているのだがフィアナはついてくるらしい、一人で旅をするのも暇だしいいだろう。


「わかった、じゃあこれからよろしくな!」


「うん、こちらこそよろしく!」


 こうして再び2人での旅が始まった。フィアナがいるので空を飛ぶのは無しになり。3日ほどで到着する予定となった。

道中色々な話をした。自分たちの故郷の話から美味しかったもの、ユウの得意な魔法やレイラの笑える話など自然と会話は途切れずに動物も襲ってきたらはしなかった。

 夜はユウが土魔法で小さなドームを作り、魔法で火を起こして寝たし、ご飯は昔レイラと良くやっていたようにユウが魔法で狩りをしていた。予想外の事態なのだが、フィアナは料理がとても上手だった。なぜか戦うことはできないからと武器や防具ではなく、調理道具だけガノルさんからもらっていたようで、初めから俺についてくるつもりだったのが丸わかりだ。しかしそのおかげもあってかセルグの町からセントラルまでは意外と快適な3日間だった。美味しいご飯。安全な寝床。楽しい話。これだけでも不自由はないのだ。


「あれがセントラルかな?」

「そうだろうね」


 目の前には石でできた高い壁が左右に広がってここからでは中の様子を見ることすらできない街があった。まるで進〇の巨人に出てきそうな壁だなぁ。

 そんな壁の下の方には門があり、そこから街に入れるようだ。だがそこには長い列ができていた。2人は最後尾に並ぶのだがもう今は夕暮れ時であり、早くしないと街に入る前に暗くなってしまうだろう。


「おいおい!!何やってんだよ!早く進めよ!」

「このままだと夜になっちまうだろうが!!」


 並んでいる商人らしき人や、剣や弓を持ったまさに冒険者風の人たちが口々に文句を言い始めた。


「はやくしねぇと食われちまうだろうが!とっとと進めよ!!」


 ユウの前の人が叫んだのだが

 、、、食われちまう、、、、


 このまま進むのが遅く、街中に入るのが遅れるとどうやら食われちまうらしい。


「あのーすいません。食われるとは何にでしょうか」


 当然の疑問である。そんな物騒なことがあるのか?多分動物だろうしユウは大丈夫だろうけど…


「ああ?しらねぇのかよ坊主、最近このあたりに大熊が出るって話だがお前らみたいなのは一瞬で食われちまうだろうな!がはは!」


「ひぃっ!」


 まじかぁ、食われるのかぁ嫌だなぁ。

 ユウはそのぐらいの印象だったのだがフィアナ変な声を出して怖がり、あたりをキョロキョロと見渡して警戒し始めた。

 本当にゆっくり進んでいく列を時間は待ってくれない。ユウたちより後ろに並んでいる人はいない。正真正銘の最後尾でゆっくり進んでいるとあと3組でユウの番というところまできた。門が近づくにつれてこんなに時間がかかっている理由がわかった。それは一人一人の身分証と荷物の中身を隅々までチェックしているのだ。それはもうあきれるぐらいに隅々まで。そんなチェックをゆっくりと待っていると。


 メキ!メキメキキキ!!


 ユウ達の左後ろの方向から大きな木がなんらかのの力で無理やり折られるような音がしたのだ。




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