盗賊団暴龍
セルグの町これまでの登場人物
ガノル(セルガノル):セルグの町の町長
バロ:宿屋の店主で料理担当
リリー:バロの妻で宿屋の受付
セギル:風の魔道書を使って宿屋を破壊したおじいさん
気を取り直して5人で話をすることになった。まず、ガノル、バロの謝罪から始まったその話し合いはお互いの自己紹介をしてからセギルの話をすることになった。
「セギルさんには娘さんがいたんだ。セシルという名前でとてもいい子でな、セギルさんの仕事の手伝いをしたりとても仲のいい親子だった。セシルちゃんが幼い頃に奥さんは病気で死んだからかな、とても愛情を注いでいたんだ。でもね半年ほど前、この村に盗賊が訪れたんだ。しかもただの盗賊じゃなくてね、暴龍って知ってるかい?」
「暴龍?」
「龍の国から逃げてきた犯罪者たちが集まった盗賊なんだ。そいつらがなかなか強くてね、人々を守れず、前町長、私の父は死んだ。そして、そのとき勇敢にも立ち向かったセシルちゃんは、、、」
何だろう、これほどまでに怒りを感じたことはあるだろうか。日本という平和な世界で、死ぬ前、確かに大きな怒りを覚えた。しかし平和な日本でこんなことはない、人が何もしていないのに人に殺され、すべてを奪われ、狂ってしまったセギルさん。こんなことはあっていはずがない。おそらく多くの人はこういうだろう。「偽善者だ」と。
「そいつらはそれからちょくちょく村に来てね、近くの街の兵に助けを要求しているんだがどこからも来ないんだ。だからセギルさんは新しく来た人を警戒するようになってね、それもだんだん悪化していって、まさか魔道書まで持ち出すとは。」
むしろ僕はこう言ってやりたい。力を持っていてここまで聞いているのに無視できるのか?と、それこそ偽善者以下だ。ユウにとっては第2の人生なのだ、もう後悔しない生き方をすると決めている。それならばやることはただひとつ。
「その暴龍、今どこにいるかわかりますか?」
「わからないがいつも町の門がある方角から来る。悔しいがやつらは魔法使いとしても強くてね、もし知っても何もできないんだよ。」
それだけ聞けたら十分だ。方向さえ絞れば索敵距離をかなり上げることができる。
「なるほど、少し圧がかかるかもしれませんが我慢してください、あと、フィアナを少しの間お願いします。」
「え?何をする気だい?」
「坊主、圧って威圧のことか?へっ!そんな簡単にできるもんじゃないぜ、俺だって3年ぐらいかかってだなぁ、」
長い話が始まりそうだったので無視して索敵を始める。
ユウは大気中の魔力と自分の魔力を繋げた。そして、
ぶわぁ!
この擬音が正しいのかわからないがユウを中心に魔力が広がり辺りを包んだ。
「暖かい。」
フィアナが呟いた。それはほかの人たちに圧を与えるのではなく、どこか暖かさを感じリラックスできるようなものだった。ユウは集中し門の方向へと意識を向ける。
「「「っ!」」」
「おいおい、バケモンだろ、なんだよこの魔力量は」
「すごいわ、いったいどれほどのことをしたらこの年で、」
「しかもなんて暖かい魔力なんだ、こんなの感じたことがない」
各々が賞賛の声を上げるが集中しているユウの耳にはひとつとして届くことはない。
今ユウは魔力をたどり、町の様子やその外の様子を手に取るように把握している。そして町から出て少しいったところの地下に複数の人の魔力を感じた。おそらくここだろう。そしてその数人が急に動き出した。ユウの索敵を感じとれた人たちだろう。
「よし、見つけた。ちょっと行ってくるのでフィアナをお願いしますね。」
「はぁ!?見つけただと?暴龍をか?冗談だろ、どんな距離索敵したんだよ、」
「ユウ君、まさか一人で行くつもりか、さすがに子供一人では危険すぎる。私も行こう。」
「いいえ、僕一人で行きます。あなたたちを守れる保証がない」
ガノルが町長の責任からか同行を申し出てきた。しかしそれをすぐに否定した。ユウ一人なら何とかなるかもしれないがガノルを守りながらというのはやったことがないし相手の実力も未知だ。
「ぐぬぅ、」
ガノルも自分より目の前の子供のほうが強いことを十分理解しているから何も言い返せなかった。
「すぐ戻ります。セギルさんのお話でも聞いていてください」
「わかったわ、だけど無茶したらだめよ。無理だと思ったらすぐに逃げてきなさい。命に変えてもあなたたちは守るわ。」
リリーさんの力強い目に説得され、緊張感が高まる。
「わかりました。行ってきます」
ユウは三人に門まで送るといわれ断ったのだがせめて家の外までは送ることになった。
「坊主、死ぬんじゃねぇぞ」
「ユウ君、無理はするな」
みんな心配してくれてる。こんな家族が俺にもほしかった。そう思いながら一つ頷いた。
そして、ユウは風魔法を行使した。ユウの周囲に風が集まり、その風が足に集中するそして空を飛んだ。
さっきの魔力の索敵を見て、これ以上驚かないと決めていた三人は目と口を大きく開き、先ほどよりも驚いた様子だった。
ユウは町を一瞬で抜けるとさっきの索敵にかかった地点に降りた。
「この辺だけど、どこから地下に入るんだろ」
あたりの木や地面に何か痕跡がないかと探り始めた。特に作戦はないので地下に行って直接つぶすつもりだ。
「おやおや、何か強い魔力を感じたと思ったら次は子供が砂遊びしてるぞ」
「「「ぎゃははは!」」」
急に男たちが歩いてきた。どこから出てきたのかわからなかったが地下以外に人はいなかったのでおそらく地下から来たのだろう。
「お兄さんたちさ、暴龍って知らない?たぶんこの辺に基地があると思うんだけど、知ってたら教えてよ」
「はぁ?なんだてめぇ、誰からそのことを聞いた」
明らかに機嫌が悪くなってきているのがわかる。ビンゴのようだ。
「何言ってるの?お兄さんさっき言ってたでしょ。強い圧がきたって、さっ!!」
ユウは身体強化とともにリーダー格の男以外を威圧した。
その辺の人が耐えられることもなく、すぐさま意識を手放す。
「てめぇ!何しやがった!!」
男がユウに威圧してくるがフェルトには遠く及ばないどころか、ほぼ何も感じない。これぐらいか、たいした事ないな
「あれ?威圧してるつもり?弱すぎるよ」
自分よりも年下のしかも子供に威圧をあっさり防がれ、さらには煽られたのだ。その男は顔を真っ赤にして戦闘体勢に入った。
「ガキがいきがりやがって、後悔するなよ!!我は火龍の加護を受けしもの、その力を顕現せよ!我に纏え!炎の鎧!!」
聞いたこともない詠唱をし始めた男は熱くないのかと思う炎を身に纏った。
「どうだ、これが精霊の国にはない魔法、龍魔法だぜ。いまさら謝っても遅いぜガキが!炎迅!」
龍魔法、これまた聞いたことがない、帰ったらフィアナに聞いてみるか。そんなことさえ考える余裕があった。
だがそこから男はさっきまでとは比べ物にならない速度で移動し始めた。
「ぎゃははは!俺を目で追えるかな!炎弾!炎弾!」
高速でユウの周りを移動する男が飛ばしてきた炎の玉を水魔法で丁寧に相殺するユウ。しばらくそれを繰り返しているうちにユウが地面に手をついた。
「どうした!防御で手一杯か?いつまでその防御が持つグブヘェ!!」
土でできた大きなこぶしが高速移動する男の顔面に直撃した。高速移動していたせいか目の前から来るゴーレムフィストの威力が心なしか上がっていた気がする。男は気絶してその場に倒れた。
ユウは疲れて地面に手を突いたのではなくこれのために手をついたのだ。
「ふぅ、ワンパターンだったね。とりあえず拘束してっと」
土魔法で拘束した後、水を男の顔にぶちまけた。
「ブハッ!なに!動けねえ、ガキが何しやがった!!」
「ねぇ、どうやって中に入るか教えてくれない?」
男の話は、無視して要件を無理やり聞こうとするユウ
「へっ!そんなこと言うわけねえだろ」
「そっか、じゃあ言いたくなったら教えてね」
笑顔でそういうと水球をつくり男の顔を包んだ。
ブクブクと泡が出てきて男は顔を横に振る。水を散らせる。
「どう?言いたくなった?」
「ぜぇ、この程度、はぁ、はぁ、うぶっ」
再び水の中へ、さっきより長く維持してまた散らす。
「どう?このまま死ぬの?」
「わ、わかった言う。だがお前には開けられないと思うぞ。」
まだもったいぶろうとするので水球を作る。
「わかった!言うから。そこの木の裏に大きな岩があるだろう。そこに気を当てると岩が動いて地下に行ける」
「気?なにそれ?」
気、なんだそれは聞いたことがない。魔力とは違うのか?それにさっきの魔法。龍魔法とか言っていたな、それに関係するものか?ユウは全く聞いたことがなかった。
「しらねぇのか、お前ら精霊魔術で言うところの魔力ってやつだろ、ただ本質が違うからな、龍の加護を受けたら気を、精霊の加護を受けたら魔力を使える。常識だろ。」
「なるほど、通りでさっきのお兄さんの魔法には違和感があったんだ。ふむふむ」
「へっ、どうせ開けられねぇよ、ちなみに、自分の意思でやらねぇとあかねぇようになってる。たとえお前が俺に命じたところで開かねぇんだ」
解決策は1つ浮かんでいる。
フィアナを連れてきて開けてもらう事。しかし、これの問題はユウが目を離したすきに逃げられないかという事。
じゃあやってみるか。
「おい!教えただろ!もう何もしねぇからこの拘束を解きやがれ!」
男の拘束は解かない。それどころか聞いてない。そしてユウは途端に詠唱し始めた。
「我は火龍の加護を受けしもの」
「はっ!無理に決まってんだろ!さっき精霊魔法を使ってたじゃねぇか」
「その力を顕現せよ!我に纏え!炎の鎧!」
詠唱を終えた途端にフィアナと握手を交わした時のような感覚に陥った。心臓の鼓動が強くなり、体に響く、体全体の血の流れを感じる。そしてっ!
「な、なんでてめぇがその魔法を、龍魔法を使えんだ!」
ユウは体に血が流れるように気の流れを感じとり始めた。そしてユウは不思議と熱くない赤い炎に体を包まれた。




