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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
序章
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龍化の要因

「おい!爺さんなにやってくれてんだあ!!俺の店をこんなめちゃくちゃにしやがって!」


 おそらく宿のキッチンにいたであろう店主が出てきた。かなりお怒りのようでその太い腕で今にも男を殴り殺しそうだった。それをギリギリのところで止めているのは周りに集まった人々の視線だったのだろう。


「どうした、なにがあった!」

「ガノル!こいつ俺の店をめちゃくちゃにしやがったんだ!!」


 そこにきたのはこれまたいい体格をした、店主と同じぐらいの年齢の男だった。周りにあつまった人が「町長」といっていたのでおそらくセルグの町長なのだろう。


「はぁ、またセギルさんが問題を起こしたのか。ん!?おい!そこの少年!その魔道書どこで手に入れた!それは私の家に、この町に昔からある風の魔道書だろ!つい先日盗まれたんだが、まさか」

「ち、違います。俺はこの宿に止まってたんですが、急に風の魔法が飛んできてなんとか防ぎ、さっきこの男から魔道書を取り上げたんです。」


 余裕で防げたので「なんとか」以外は全て本当の事だ。


「本当か?見ない顔だが今日来たのか?」

「その人が言ってるのは本当の事よ」


 宿の受付にいた女性が話し始めた。


「一階からセギルさんが魔法を打つのを見たからね。それにその子がセギルさんを取り押さえるのも見たわ」

「むぅ、リリーが言うなら本当の事だろう。疑って悪かったすまん。その魔道書返してくれるか?」


 疑いが晴れてよかった。こう言うことがあるとまずは新顔を疑うのが基本だからな。

 ありがとう、リリーさん。

 心の中で感謝しながら躊躇いもなく魔道書を町長さんに手渡した。


「いえいえ、疑いが晴れてよかったです。」

「あ、ありがとう、もしかして君は魔道書を見たことがないのかい?」


 教本なら見たことはあるがこの世界に写真などはなく、魔道書を見たのはこれが初めてだった。


「ええ、初めて見て触りました。」

「そんな事はどうでもいいだろ!ガノル!この爺さんをどうするかだ!」


 店主の怒りは収まらず、しかし人々の目のあるところでは軽々しくどうするか決める事はできないと判断した町長ガノル。


「よし、セギルさんを一旦私の家に連れて行く。あとで、えっと、、」


 ユウの方を見て何を言おうか言葉が詰まっているようだった。


「ユウです」

「ユウ君!君とリリー、バロも来てくれ。」


 自己紹介をしていなかったから名前がわからなかったようだ、そして名前を教えた事でもうこの面倒ごとからは逃げられない。


「リリー、店の戸締りを頼んだ!俺はこの爺さんをガノルの家まで連れて行く!荷物預かっておいてやるから坊主もすぐに行くぞ」

「ええ、わかったわ。気をつけて、あとで私も行くわ」

「あ、はい。」


 ガノル、セギルそして店主のバロがガノルの家にすぐに行くらしい。それに巻き込まれたが荷物もそんなに多くないので預けてガノルの家に行くことにした。

 土魔法の拘束を解くと、バロが待ってきた縄でセギルを拘束した。そのまま引っ張って行くようだ。

 ユウはその後ろをなんとも言えない雰囲気でついて行った。

 もともとそんな大きな町ではないのでガノルの家まではそれほどかからなかった。


「ここが私の家だ。」


 バロは慣れた感じでセギルを引っ張って家に上がる。

 さっきの宿の2倍ほどの大きさもあろうその家は、他の家とは違い、大きさもさる事ながら外観も意識して作られているようだった。


「お邪魔します。」

「バロ、セギルさんを応接室に連れてってくれ」

「地下じゃなくて応接室かよ」


 少しの不満を漏らしながらも応接室に連れて行った。縄を椅子にくくりつけ、セギルを動けなくしてから3人は近くのテーブルを囲んだ。


「さて、まずはセギルさん。なぜこんなことをしたのか、話してもらえますね?」


 その言葉には優しさと厳しさが込められているようで、事情を聞くには最も適しているように感じた。


「俺は!娘を、守る、、ために、、」


 セギルさんの声は先ほどとは違い、どんどん小さくなっていく。それはまるで今発している言葉が本心ではないように、自分の中で何かと戦っているようにも感じた。


「爺さんの娘はもうとっくに」

「バロッ!!」


 店主バロの言葉を町長ガノルが無理やりさえぎった。


「少しお互いに頭を冷やそうか。人間には休憩が必要だからね。」


 そういうとガノルはユウとバロを連れ出して別の部屋に通した。


「ふぅ、すまなかったねユウ君。」

「いえ、僕は大丈夫です」


 本当は大丈夫ではないがガノルさんは気を使ってくれているのだ。こっちが無遠慮に本音を言うわけにはいかない。元日本人ならではの思考からの返事だった。


「そういえば自己紹介がまだだったね。私はセルガノル、みんなにはガノルと呼ばれている。一応この町の町長をしているんだ。よろしく」

「俺はバロだ。せっかく泊まってくれようとしたのに悪かったな。あの様子じゃあすぐに営業再開はできないだろうからな。」


 町長の名前ははセルガノルだった。そして、言葉遣いは少し荒っぽいがバロも悪い人ではなさそうだ。


「ユウです。つい最近旅を始めたばかりで、一番近いこの町に来ました。一緒に来たのはフィアナで、あっ!フィアナを置いてきた!」


 今気づいた。何か忘れているような気がしていたが、フィアナだった。完全に忘れていた。


 すまん。


「この子なら連れてきたわよ、龍人族のフィアナちゃんをね」


 リリーさんがフィアナのことを連れてきて、さらには龍人族と説明したのだ。バレた。フィアナが龍人族であることは誰にも言っていないはず。大丈夫なのか。


「龍人族だと?珍しいな」

「そうだな、最後に会ったのは何年前だろうな。」


 あれ?あんまり驚かない。意外と普通なのか?たいした問題もなく、ばれてもよかったのか。

 ユウは少しホッとしたがフィアナは少しまずそうな顔をしている。


「それで?その龍人族がこの村に何か用でも?」


 ガノルさんのまとっている空気が少しの圧を持ちそれをフィアナにぶつけた。ただの村長というわけではなさそうだがユウからしたらたいしたことはない。

 だがその時、ガノルの圧に反応したのか少しのうめき声と共にフィアナの右手が龍化したのだ。


「うっ!」

「「っ!!」」


 圧に反応したフィアナの龍の手を見てガノル、バロは警戒を高めた。

 だがそれに一人だけ反応しなかったのはリリーだった。


「待って、ガノル!バロ!早く圧を消して!」

「リリー、その龍人族から離れろ。なにをされるかわからな」


 リリーはフィアナの前に立ち声を張った。

 だが警戒を解こうとするどころかリリーに離れるよう言い出した。

 このままではやばいと身体強化をしようかとしているとバロの言葉をさえぎり、リリーはまたも声を張った。


「早く消しなさい!!!」


 その言葉にはさっきのガノルよりも少し強い圧が乗っており、ガノルとバロはリリーに気圧され、圧を解いた。


「大丈夫だからね」


 リリーはそういうとフィアナを抱き寄せた。するとフィアナの龍化が収まっていく。


「あなたたちが宿を離れた後、二階に行くとこの子が右手を龍化させていたの。どうやらコントロールできないみたいでさ、強い緊張で龍化しちゃうみたいなの。さっきの風魔法の時に龍化しちゃったのね」


 そうだったのか、そんなこと聞いていなかったがフィアナも言い辛かったのだろう。


「ごめんなさい。抑えられなくて、、」


 フィアナはリリーに抱かれたまま、目には澄んだ水がたまっていた。


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