森での出会い
空を飛んで町に向かっていたユウ、すると道中少女の悲鳴のようなものが聞こえたのだ。少し様子を見てみようと近づいてみるとそこには5匹の狼に囲まれた一人の少女がいたのだ。まるでユウが拾われたときのようだがその少女は明らかに襲われている。
「これは助けないと、だよなぁ?」
「誰かー!!!」
うむ。これは行かないとダメなやつだな。そう決まると早速声のする方へ降りていった。
風の魔法で音もせずに少女の後ろに着地した。
すると狼たちが動き出した。少女に方に向かって突進してくる5匹の狼。
「あー、死んだわー。これ終わったー」
少女はもう諦めて死ぬ覚悟をしているようだ。地面に寝転び、目を閉じて手を胸の前で組んでいる。完全に死ぬ体勢だ。だがユウはそんなことに気にしてはいない。なぜなら
「おっと、あはは!くすぐったいよ」
「あれ?生きてる。え、どうして?」
ユウの周りには少女を無視して突っ込んできた5匹の狼が尻尾を振りながら群がっている。その様子を見て戸惑っている少女。
覚えているだろうか、レイラに拾われるときも動物たちはユウのことを守っていた、あれからいろいろ試してみてわかったのだがどうやらユウは大体の野生動物には好かれてしまう体質らしい。そのせいで狩りができず少しレイラを困らせたのもいい思い出だ。
「待って待って、よしよし、君たちはおうちに帰るんだ。もう人間を襲うんじゃないよ」
ワオンッ!
犬によく似た返事を一つ残して狼たちは去ったいった。一件落着ということで早速町に向かおうとするユウ、だがそれは小さな少女に止められた。
「ちょ、ちょっとまってよ!今のはなに?あの狼たちに何をしたの?」
「ん?別に何もしてないけど?」
そう、ユウは本当に何もしていない。ただ狼に好かれただけだ。だがユウが今まであった人の中にはそんな人はいなかった。まるで魅惑の魔法だ。アリアかよ。
「なにもしていない!?そんなわけないでしょ!狼に好かれる人間なんて聞いたことないわ!いったい何者なの?急に後ろにいるし」
どうやら少女の理解が追いつかないらしくブツブツと独り言を言いいながらこちらを警戒している。
その警戒している態度にはどこか動揺のようなものを感じられる。
「人間では・きだし・・きか・・はっ!」
一人でブツブツと話した後、何かに気づいたように少し大きな声を放ったその少女は再びユウに向かって話し始めた。
「わ、私の名前はフィアナ!自分から名乗るのが常識よね!知ってたわ!さ、あなたも名乗りなさい!」
「はぁ、」
なぜか強気の口調の少女フィアナに言われ怪しみつつも端的に自分の名前だけを名乗ったユウ。
「そう、ユウね、よ、よろしく」
ぎこちなくはなった言葉とともにそれにも増してぎこちない動きで手を差し出してきた。
おそらくこの少女は人との関わりに慣れていないのだろう。そう勝手に思い込んだユウも手を差し出した。
お互いの手が近づき、握手をしたその瞬間!
「「っ!!」」
ユウは心臓の音が体全体に響くような強い緊張感と体中の血が沸き立つような感覚に陥り瞬時に後ろに飛びのいた。
風魔法を使って飛びのいたのでフィアナが吹き飛ぶのは当然のことである。が、倒れるぎりぎりのところで地面に手を着き倒れないように体を支えたフィアナ。その手は明らかに人間のそれではなかった。
先ほどの柔らかい手ではなく、つめは伸び、何か爬虫類を思い浮かばせる見た目でさらに大きくなっている。
ユウは突然の変化に驚き、警戒し、身体強化を強めた。そのユウの意識は殺気となってフィアナに襲いかかっている。
「ま、まってまって!!急にどうしたの!?君も龍人族なんでしょ!?」
「龍人族?なんだそれは」
大昔に龍がいたという話は聞いたことはあるが龍人族?まったく聞き覚えのない言葉だった。
「え、だって今感じたでしょ!私も龍人族だからじゃん!」
フィアナは必死で訴えかけてきている。どうやら嘘ではないのであろうことはわかる。
だが今の発言には気になることがあった。ユウが龍人族であるという発言をしたのだ。確かに俺は親が誰かわからないしレイラには拾われただけだ。だがこれまで体が爬虫類になったことは一度もない。
「詳しく聞かせてもらおうか?ただし、これは解かない」
「わ、わかったよ」
今の反応を見る限りだとこの女の子はユウの身体強化に気づいている。どうやらこのフィアナという少女には魔力を感じる力はあるようだ。探りを入れながらとりあえず話を聞くことになった。
「(かくかくしかじか)・・だからさっき感じたんだよ」
「ふん、なるほど」
どうやらフィアナの話どおりだと龍人族は数は少ないが確実に生存している、龍と人間のハーフらしい。普段は人間と区別がつかない見た目だが龍人同士の魔力や体が接触することでお互いが龍人族だと確認することができる。そしてユウとフィアナが握手した時にもそれを感じたから間違いなくユウは龍人族だという話。
それと、フィアナは他の龍人族に比べて龍化、つまり体を龍に変えることが上手くないため、修行の旅に出されているという話。こんなところでたまたま同じ龍人族と会えて嬉しいという話。
ここまでわかった。さらにフィアナは体の一部を龍化して見せてくれた。どうやらフィアナはどこか一部分しか龍化できないらしい。本来ならば制限付きで完全な龍にもなれると言うのだ。
ここまで話をしていてどうやらフィアナに敵意はないようだったのでユウも話すことにした。
「なるほど、大体の話はわかった。お前に敵意がないのもわかった。さっきは急に吹き飛ばして悪かったな」
「・・はあああああ!!!よかったあああ!すごい殺気だったから殺されるかと思ったよおお」
よほど緊張していたのかフィアナはその場に座り込んで泣き出してしまった。
原因が完全に自分であることから泣き止むまではここにいることにした。そしてユウ自身のことも少し話した。魔法を教わっていたこと、旅に出たこと。
そうこうして数分後、落ち着いたフィアナから質問が飛んできた。
「ユウはこれからどうするの?」
「んー、とりあえず一番近い町に行こうかなと思ってるよ」
他愛もないただの会話だと思っていたがここからユウの道を大きく変えることになる。
「じゃあさ、一緒に行っていい?私一人じゃすぐ死んじゃいそうだし・・」
ユウは特に急ぎの用はない、しいて言うなら食料や寝床の確保ぐらいだった。特に断る理由もなく、さらには龍人族の謎の力が自分にもあるかもしれないということ、近くに龍人族のことをよく知る人を置いておくのも悪くないと考えた。
「わかった、龍人族のことももっと知りたいしいいよ」
「やった!これからよろしくね」
「ああ、龍人族のこといろいろ教えてくれ」
こうして龍人族の少女フィアナと四属性魔法の使い手ユウは一緒に旅をすることになった。
まず目指すは一番近い町、「セルグ」に向かう。




