こうして晴れて俺は冒険者になった
5話
朝方、外からガヤガヤと活気付いている証拠の音が聞こえ起きた。どうやら随分と長く眠っていたらしい。
「この世界の時間が24時間だったらショップで時計でも買うか」
と、時計の無さに不便を覚えつつもゆっくりと起きてギルドに向かう支度を整えた。
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「あれ、ここは3階建てなのか」
ドローンでは見えなかったがどうやら見落としていたらしいと思いつつ入っていった。
ギルドに入ると意外に広く、右側に酒場、左側には掲示板に何やら人の集まりがあった。
よく見ると掲示板に貼られてるものは依頼書らしい。そして奥は受付だった。
まぁ今掲示板を見ても仕方がないので受付に行く。
「あのー、冒険者になりたいんですけど」
「え、君が?」
ん、何で驚かれてるんだ俺?
「はい」
「確かに冒険者には何時からでもなれるけど、君には危険だと思うよ?」
心配してくれてるのか?
「大丈夫です腕には自信があります!」
一応ガッツポーズしてみる。あれ、何か俺の腕小さくなった?まさかな。
「そんなに言うなら俺が相手してやるよ」
と、後ろから声が聞こえた。
さっきまで掲示板の前にいたおっさんだった。よく見ると冒険者らしき人は全員こっちを向いている。
顔を見れば笑っている奴、無表情で見る奴、あちゃーといった顔で見てる奴などがいた。
それを見た俺の感想は、
「冒険者って女もいるんだな」の一言だった。
「で、おっさんが何の相手をするの?」
「ああ、見たら分かるだろうかよ!俺がお前の相手をしてやるんだよ!」
「え、何で?」
「お前見たいのが冒険者面しているのがムカつくからだよ!おいサラこいつが俺に勝ったら冒険者にしてやれ」
と、おっさんは受付の女性に言う。どうやらサラって名前らしい。
「は?おい、おっさん誰の権限で俺の冒険者人生をぶっ壊そうとしてんだよ」
まぁ冒険者になれなかったら他で金を稼ぐしかないんだが。
「別に誰の権限でもねぇよ。だけど腕には自信があるんだろ?だったら闘っても良いじゃねぇか」
ちっ、言質を取られた。仕方ないか。一応、サラさんにも確認とるか。
俺は再度サラさんの方に振り向く。
「えーっと、じゃあ俺があの人に勝ったら冒険者になるって事で良いですか?」
「え、本気でやるんですか?あの人Cランクですよ!」
「うん、あんなの秒殺だよあ、秒殺で思い出したんだけど殺しは有り?無し?」
「無しでお願いします」
と、俺にではなくおっさんにいった。
「俺が質問したのに、ふーんいいよ。すぐに勝ってあんたにも謝って貰えばいいし」
「はっ!舐めるなよガキが!奥の訓練場を使うぞ!さっさとついて来い!」
「分かってるって、そんなに死に急ぐなよおっさん」
そして俺たちは訓練場にいった。
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どうやら野次馬連中も来たらしい。
今回は俺の得意なナイフ戦でいこうと思う。
「はっ!ここでお前の無様なところを見せてやる」
と、おっさんが言う。
さっきは俺も騒いでいたが戦闘前になると話は別だ。
ブラックさん曰く、
「冷静さを失った奴から負ける」
との事。因みにブラックさんとは前世でお世話になった人である。
これは紛争地域で俺も経験があるので戦闘前とわかっているなら、落ち着くようにしている。
そんな事を知ってか知らずか、野次馬連中の中に急に俺を鋭く見る奴が数人いる事がわかる。
「さぁ、始めようか」
俺は、左手にナイフ付きのベレッタのセーフティを付けたまま構える。
「何だぁその武器は?」
「知らなくてもいい、別にこいつの本領を発揮しなくてもお前に勝てる」
実際ナイフの部分しか使わないしな。
「はっ!図に乗ってろガキが!行くぜ、『スラッシュ!』」
『スラッシュ』は剣を横薙ぎにする技だ。要は横に振る動作だ。
よく考えたら接近戦のスキル持ってないな。早くLV上げしないと。
そんな事をかんがえながらも俺は避ける。
大振りに『スラッシュ』を放ったせいか、物凄い隙が生まれていた。
まず足さばきですぐにおっさんに急接近し、右太もも部分にナイフを刺し、抉るようにナイフを捻りながら抜き、隙だらけの胴部分に正拳突きを繰り出した。
正拳突きによって1メートル弱程、離れたがすぐに追い打ちをかける。
「ぐおっ⁉︎」
もう一回『スラッシュ』を左から右に放とうとした所で、腕にナイフを指す。
「くそがっ!」
『スラッシュ』に込める力が逃げたところで剣をナイフで迎え撃ち、迎え撃った剣を押しもどす。
要はパリィに成功した時のようなもんだ。左手がナイフで刺さったため使えなくなり、右手はナイフで上に方に力を込めたので、おっさんは片手バンザイの状態だ。
こうなればこっちのもんだ。
まず脇腹にナイフ攻撃を一回。
右手で顔面ストレートを一回。
腹部に胃を傷つけないように浅い傷を一回。
最後に顔面アッパーを一回。
そしておっさんはぶっ倒れた。
もう暫くは起き上がれないだろう。
「あ、やべ!脳揺らしすぎた!」
一応殺しちゃダメなので生死確認を行う。
「おっさんタフだなぁ。普通の人だったら死んでるのに、生きてるぜ」
よっしゃこれで認めてくれるはずだ。
と、思い野次馬方面を見る。
「何か皆んな『あり得ねえ』って顔してるのは気のせいか?と言うか受付さん?これでいい?」
と、案の定見に来ていたサラさんに声をかける。
「えっと、殺してないんですよね?」
「まぁあのままにしておくと危ないと思うけどね」
「えっと、はい、では冒険者カードを作りますので受付にお越しください」
こうして、晴れて俺は冒険者になった。