今後の問題2
今日はお昼から資格の実技試験!
24話
「今後の問題について、ですか?」
セリアが不思議そうに首を傾けて言った。
「そう、今後の問題。具体的にはセリア達の訓練と、このサラジュの資金諸々の状況確認、そして未知の魔法の調査に人材収集、これはまだ先かもしれないけど訓練兵の情操教育に、俺たちの兵士の強さを外部に知ってもらう事の6つ程かな。まずは順番よくセリア達の訓練について話そうか」
「でも、私たちは訓練しましたよね?」
と、素朴な疑問が返ってくる。彼女達には確かに訓練はしたがそれはあくまで応急処置的な施しでしかないのだ。基本的な銃の使い方、体術、魔法、通信の流れや軍の用語1人でも操作できる小型ボートや戦闘機、バイクや車の操作方法だって教えていない。カズトは皆んなには将来軍を作る時に何かしらの将軍職について欲しいと思っているので彼女達にとってはこれからが本当の訓練だとも言えるだろう。
しかし、今その話をすると彼女達の頭を悩ますかもしれないので一度、戦闘機などを見学させ、やってみたいものをさせそれから話そうと思っていたカズトだった。なので。
「まぁ、訓練はまだ続くよ。まだ教えてない事もあるしね」
と、簡素に答えた。
そして、この問題の具体的な説明をすると簡単な話し教える事の出来る人物が足りないのだ。
そう、2人に説明すると意外にもその問題はアッサリと解決した。その答えはサイカが話してくれた。
「ならば、ホムンクルス達に専門知識の記憶を移せば良いと思います。幸い、私は人工知能なので一度取り入れた知識はカズト様が命令をする限りしか忘れませんので。もっと簡単にしますと彼女達に直接専門的記憶を移せば良いと愚考致します」
(そうか、確か知識をそのまま移行させる事の出来る魔法があった!確か...)
サイカの答えにハッとしたカズトは自分の使えるスキル欄からある魔法を探す。
しかし、約400程の魔法や剣術と言ったスキルがあったので探すのには少々時間を使った。
(あった!記憶魔法『ノーリッジ マイグレーション』か、ゲーム時代では一回でも使ったかも覚えてないな)
無理も無い。これはあるクエスト限定で使えた魔法で制限が厳しく、カズト自体は覚えていないが2回しか使っていないのだから。
「サイカのお陰で解決したよ!ありがとう!」
はい、と簡素な受け答えだったがその顔は喜色を露わにしていた。
それを見たセリアはサイカを羨ましそうな表情で見つめていた。
(わたしもまた褒められたいなぁ)
セリアがカズトに褒められたのは彼女が泣いていた時で「金髪で赤い瞳って可愛いじゃないか!」と言う一言ぐらいだ。
(メイド服貰ったけど時間的に着る時間がなかったからなぁ。私もサイカさんみたいに問題を解決したら褒めてもらえるかな?)
そう結論に至ったセリアはより一層真剣な表情で今の問題について考えた。
「知識の詰め込みは『ノーリッジ マイグレーション』で解決するとして体術や、魔法の習得はやっぱり人手が必要かな。そもそも、どうやって魔法を覚えたんだ?」
サイカは本体は人工知能であり、その姿は脳だ。だけどカズトの補佐もさせようと考えた時期があり、一体のホムンクルスとサイカの脳をリンクさせようとしたことがありその時にも『ノーリッジ マイグレーション』を使った。
その時のホムンクルスが今目の前にいるサイカだ。その体を手にして以来、補佐役として俺の隣にいた。その際どうせなら強い方が良いということで、Lv300まで上げ、彼女のジョブ 聖騎士に合った守護系のスキルを取得させた。
取得させたと言っても、それは自分のNPCだったから可能だった訳で、プレイヤー同士でというのは無理だった。
1人で試行錯誤していたカズトの視界にセリアが映った。
(そういえば、サイカは俺がスキルを付けたから取得の仕方はわかっているが最初からこの世界にいる人達はどうやってスキルを取得しているんだ?)
もし、カズト達と同じようにスキルをSPを消費してスキルを獲得しているのならば、それはショップも使えるという事と同義だ。
しかし、そういう風にスキルを獲得しているようには見えない。だからこそカズトはセリアにたずねてみた。
「セリア、質問なんだが魔法は使えるか?」
「はい、使えますよ?」
「じゃあどうやって覚えたのか教えてくれるか?」
「えっと、魔道書を読んで覚えました。中には勘で、魔法を覚えた人もいるらしいですが...それがどうかしたんですか?」
「ああ、いや皆んなは魔法をどうやって覚えたか気になってな」
口調こそ普通通りだが内心カズトは混乱していた。
(魔道書だと?そんなものゲーム時代になかった。それに勘でって...どこの天才だよ)
ゲーム時代にはなかったもの、或いは未実装だったものがこの世界には広まっているものの多さに動揺を隠しきれなかった。
(これは、迅速に調査していきたい。いや、これは自分で調べたいな。これほど楽しませるものがあるなんてな)
そして、僅かばかりこの世界についての探究心をカズトの心を疼かせた。
(まぁこの問題は後回しだ。次の問題に取り組まなければ)
「じゃあ次の問題なんだが、次はサラジュの資金面についてだな。サイカ俺がいない間に何か問題はあったか?」
「問題というか、現在倉庫エリアは資材でいっぱいになり、入りきらないというのが問題でしょうか?」
は、とカズトは思った。資金についてはギルドホームに全財産の5分の1ほどしか置いていない為底をついても可笑しくないと思っていたが逆に増えすぎて困っている状態だとは思わなかった。
「どういう事だ、ごめんサイカ、詳しく話してくれないか?」
「はい、事の発端は飼育エリアで栽培、育成させていた野菜や家畜などの食用動植物が増殖した事です。まず、カズト様がこのサラジュを出てから500年の月が経っています」
「はあっ!?」
カズトはその驚きを思わず声に出してしまった。無理もない1週間前まで500年前の世界でした。なんて言われたようなものだ。
そんなの信じる事が出来るはずない。だがサイカが嘘をつくとも思えなかったカズトは色々と質問をしたいがそれを頭の隅に置いた。
「つ、 続けてくれ」
「はい、食用として育てたので肉や魚は部位ごとに切り、野菜、果物などは水を切り新鮮な状態を保つように魔法をかけ、全て倉庫エリアの冷凍区域に保存していました。ですが200年ほど前から倉庫はいっぱいになり、私に任命されているサラジュの発展の支援に則って入りきらない物はショップで売り、そのまま硫黄、硫酸などの化学製品から木材や鉱物などの資材、軍事用品、弾薬製造工場から高級皿まで特に軍事用品を主に買いましたがそういった物も最近は入りきらなくなり、今はそのままお金に換金しています」
「お、おう。んで今の資金はどれくらいなんだ?」
「確認を取ってみます。...現在資金は約1 穣セロンです。」
「...」
そう聞くや否やカズトは白目を剥き気絶し、それを見たサイカは倒れそうになったカズトを抱き締め心配そうにカズトを見つめる。
「えっ、え、ご主人様!?」
場の状況がよく分かっていないセリアがあたふたしている姿がカズトの執務室で見えたそうな。
感想・評価待っています
今週は、もう出せないと思います(´-`).。oO(この前もそんな事言っていたきが...)
次の投稿は7月1日の金曜日、午前0時となっています。




