初めての訓練
お久しぶりです
16話
時間になった。
家?を出てだいたい半径1〜2kmはあるんじゃないかという広場で皆んな集まった。
「よし、じゃあみんな揃ったな。これから訓練を始める。まずはこれを上げる」
俺はドリルを一人ずつ渡した。
「これは?」
と、クロード。
「まぁドリルなんて見たことないよな。そこの持ち手に何か押せるボタンがあるだろ?そこを押すと尖った部分が回転して攻撃できるって武器だ。それである魔物を倒してもらう」
「ある魔物って何ですか?」
「G.G、通称ゴールドGだ」
「ゴールドジー?」
あれ、この世界でGは、あれの意味は使えないのか。
「まぁまぁ、今にわかるよ」
さてと、あいつらがどんな表情するか楽しみだなー。
「皆んな後ろに下がっててくれ。...そんじゃ行くぞー。『サモン、G.G』!」
俺の前に巨大な魔法陣が現れ、そこからG.Gと呼ばれる魔物が出てきた。
「はっはっは!どうだ、凄いだろ!」
と、言いながら後ろを振り返ると
「うきゅー」
と、変な音を立てながら全員気絶した。
一番戦闘に向いていなさそうなキノに至っては失禁までしている。
まぁ、無理もない。だって、これの元は Gだもんな。
それに何て言ったってサイズがでか過ぎるのだ。地球で普通のGは1cm〜4cm、大きくても10cmほどだった。多分この世界にGがいたとしてもさほど変わらないだろう。
だがこのGは全然違う。ゲームの公式によると体長2.5〜3mと、とにかくデカイ。何故こいつを召喚したかというと、ハンパないほどの経験値効率がいいのだ。それに悲鳴もあげないし、あとクロードたちに好き嫌いをなくして欲しいという理由もある。
本当のサバイバルになったら虫も食わないといけない時がある。それで好き嫌いを言っていたら本当に死ぬ。
とまぁ、色々理由があったが体の色が金色なのは目が痛くなるからやめて欲しい。
「まぁそんな事はどうでもいいか。とにかくあいつらを起こさないとな」
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「ご主人様」
「どうした、カヤ?」
「流石にあれを倒せとか言いませんよね?」
「勿論そのつもりだけど?」
「...」
「あ、あのご主人様!私たちあれに勝てる気がしないんですけど...」
「ん、何を言ってるんだセリア?あいつは動かないぞ?」
「へ?」
「ああ、そう言えばまだきちんと説明してなかったな」
そして、俺は今日の訓練を説明した。今回はレベルアップならぬスペックアップである。要は身体能力をレベル的に高めるだけだ。
あと、SP溜めもある。そんなのはドリル片手にG.Gの腹に一日中刺しておくだけで十分なのだ。その頃にはLV100ぐらいにはなってるはずだから明日まで時間をかけてLV200まで持っていく。
因みに俺はこいつでレベルアップをしてきたのでどこにドリルをつき刺せばいいのか体が覚えているし、最早流れ作業レベルだ。
クロードたちよりもスムーズに倒せるはずなので俺の目標は明日までにLV300を行きたいものである。
「はぁ、良かったです。ご主人様が優しい人で」
「ははっそんなに怖かったかソフィ?」
「それは勿論です!私今日で死ぬんだと思いましたよ?まだご主人様の役にすら立ってもいないのに...」
それは困る。なにせこの世界の常識などに疎いのだ俺は。
「まぁ、訓練したら役に立てるさ」
「はい!」
「んじゃ、後9匹召喚するからもう少し下がってくれよ」
「「「「「「「「「ええええええ!?」」」」」」」」
多分今日一番の驚きなんだろうな。
俺は笑いをこらえながらも、中緒なくG.Gを9匹召喚した。
----------昼
訓練も2時間が過ぎた頃、大体は歴戦の猛者が出す雰囲気を出していた。要は、無表情のまま淡々とG.Gをやっていってるだけだが。その中でも一人だけまだG.Gを倒していない子がいた。
「え、えいっ。ふわぁぁぁああ!」
いちいち刺して、ドリルを回せばいいものを刺した後は泣きそうに...いや、もう泣いているのか...しながら抜いては刺し、抜いてはさしを行ってる奴がいる。
「キノか...」
昨日今日と、見てはいたが何とも気の弱そうなウサ耳の女の子である。
そう言えば、地球でのラノベとかでもウサギの獣人は温厚な性格だったけど、こっちでもその様な傾向があるのか?
うーん、このままだとまずいな。俺を含めて10人の中で、1人だけ戦闘行為が出来ないというのはいざ、戦闘という時に守られる立場になる。
それは、守った側としては何も感じないし寧ろ守れた事に精神的安定感を感じるかもしれない。だが、守られた側としてはそれは意外と辛いのだ。
もしかして、自分は邪魔な存在では無いのかと自分で自分を追い詰め、精神的自虐行為に走り、遂には自傷行為にまで至る。
それを仲間は心配するかもしれないがその心配ですら精神的ダメージを負う場合だってある。そんな負のエンドレスを、俺はしたくない。
ここは身体を張るか。
「上手くいってない様だなキノ?」
「ふぇ?ご主人様?ごめんなさい、私戦う事は苦手で...」
「でも、これはキノだけで倒してもらわないと困るぞ?」
「は、はぃ...」
元気の無い声だなぁ。ふむ、ここらでやってもらうか。
俺はキノと戦っているG.Gに俺を攻撃する様に指示する。
「あ!ご主人様、危ない!」
そうキノが言うが俺は敢えて避けない。
ドゴォォオ!バキィ!と、俺の体から嫌な音が聞こえる。
やばい、これは想定外だ。
今の俺のレベルは42、加えてその間も異常な程に強くした装備を装着可能レベルになる事に来ていったのだが相手は100〜110LVの魔物だ。
骨が折れても可笑しく無い。幸いと言うべきか、あばらの数本が折れてる程度に感じる。それでも吐血は防げなかったが。
「ガハッ!」
「あ..ああ」
「ご、ご主人様!?」
俺が吹っ飛ばさせたのに気付いたセリアに続き、キノ以外の他の皆んなも我先にと俺の元へ駆けつけた。
「ご主人様!ご主人様!」
「俺は大丈夫だ!」
「待ってて下さい、今私があのクソ虫をヤッてきます」
「待て、セリア」
「で、でも..」
「いいからキノを見ていろ」
「は、はい...」
キノをよく見ると何か呟いている。だが、その声は運良く聞き取れた。未だ呆然と立ち尽くしている。
「私のせいでご主人様が?...あんな私を助けてくれたのに?私は役に立ちたいと思ったのにそれが出来なかった?」
「それは違うキノ!まだ貴女は出来る!そこにご主人様を飛ばしたクソ虫がいる!そいつをやればいい!」
まぁ内容は危ないけど俺がキノに思って欲しかった言葉をリーシャが言ってくれた。
「こいつ?...この虫はご主人様を殴ったのに何で生きてるの?何で私はこいつをヤッてないの?...ヤッたら私は役に立てる?」
そう結論付けたキノはドリルを使ってG.Gの頭から胴体、羽まで全てを傷つけそして倒した。途中から「あはははっ」という笑い声には不気味さを覚えたが。
「はぁはぁはぁ、やっと倒せた」
「キノ、大丈夫か?」
俺はキノの元へ歩み寄った。因みに怪我は『エクストラヒール』で回復してある。
「あ..ご、ご主人様...」
よく見ると体が震えているように見える。よっぽど怖かったのだろうか?
「怖かったか?」
「いえ、怖くはありませんでした。ですけど...」
「どうかしたか?」
「あ、あのっ私は捨てられるのですか?」
その言葉と同時にキノの瞳が涙でいっぱいになる。
どうやら倒した事に対する震えではなく、捨てられるかどうかに対する震えだったようだ。
「大丈夫だよ。捨てたりなんかしない。それにキノはやったじゃないか!よく頑張ってるよ」
そう言いながら、頭を撫でる。ウサ耳を触ってみたかったが、今は我慢だ。正直今触ると一生触っていそうな気がする。
「えへへ」
涙を流しながらもはにかんでくれたキノに少し安心感を覚え、少し戦闘に対する意識を早く変え過ぎたかと思った。
この調子だと、明日までにLV200までいけるかな?
今回はけっこう早く書けました!




