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【シリーズ】 13代目の破壊神

エルレウス

作者: 千路文也



 私はまだ知らない。孤独というものを。



 これまで、私は主人のために忠誠を尽くしてきた。生まれた時から主人以外の全員が敵で来る日も来る日も忠誠の戦いをこなしてきた。そう、私は孤児として引き取られたのだ。


 だから、親という存在を知らない。もしくは親に限りなく近い存在が主人なのかもしれないが。


 ここまで私を動かしてきた源は全て私ではない。あくまで主人のために、彼の喜ぶ姿が見たくて戦いを繰り広げてきた。だが、それもここまでのようだ。


 私の眼前には二人の敵がいる。一人は重傷をおって瀕死の状態で、私と似たような境遇だ。もう一人はスタミナ体力共に有り余っている。若いからという理由だけではなく、彼を瀕死の重傷を負わせた私への怒りも相まってか。とてつもない魔力の圧を感じる。



 それはまさしく、次世代の王が誕生したかの如く光輝いている。私はここまでの魔力を感じた事は一度たりともない。少なくとも敵と対峙した時は全て、数段格下の魔力を持つ者ばかりだった。だが、今回は違う。


 私は深手を負って魔法収容力セルペンスも尽きかけているが並の人間ならば一発で倒せる余裕はある。ところが事態はそうも簡単に終わりそうもない。


 今、奴の膨大な魔力が私の眼前に迫っている。魔力をオーラとして具現化させて私にぶつけているようだが、私はそれを防ぐだけで精一杯だ。完全体ならばどうとでも出来たかと自問しても、もう一人の自分からは曖昧な答えが返ってくる。


 そしてこれは、魔力のオーラというよりも衝撃波に近い。こんな芸当を出来るのは相当腕の立つ魔法使いぐらいだ。私が認めている魔法使いは主人しかいないが、この攻撃は主人とも互角に戦えそうな威力を持っていた。


 無論、主人よりも遥かに格下の私が、彼から放たれる衝撃波をいつまでも押し止める事は不可能だ。やがて私は彼の放つ白い衝撃波に完膚無きまでに叩き潰され、なすすべもなく地面に転がった。



 瀕死。



 という二文字が今の私には一番お似合いだ。こうして無残にも敗れ去ったのだが、今の私は何故だが晴れやかな気持ちになっている。初めて負けたというのに屈辱も悔しい思いも何もない。


 そして、あの男が此方を見下ろしている。止めを刺そうとしているのか、腰に携えた剣を放ち、私の喉先に突き付けている。だが、そこから彼は微動だに動かない。今更殺すのをためらったらしい。どこまでも甘い奴だ。もしも私に余力が残っていたなら背後から火球の一つでも放っているところだというのに。


 彼はもう一人の男を抱えて、去って行った。この激戦の跡地に残された私は胸が締め付けられる思いをふとした瞬間に味わった。これまで人々を散々殺害したから、間違いなく私の魂は召されて天国セプテンティウムにも地獄アガルドラードにも行けないだろう。



 これから待っているのは無。



 そう思っただけで、私は寂寞とした気持ちに駆り立てられた。それと同時に、母親に授乳されたかのような不思議な感覚に陥ったのも忘れらない出来事だった。




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