カクスオモイ(道化編)
心は擦り切れていた僕だが、道化を演じ続けることに決めた。
いつか、僕の方を見てくれると信じて。
その後も一年くらいこのニセモノの関係は続いた。
その間にも、色々なことがあった。
例えば、彼女の誕生日。
僕は彼女の誕生日を正確に把握していた。そのためにバイトしてプレゼントも買った。彼女に似合うかなと店員さんと相談して、シルバーアクセサリーにした。
土曜日。彼女の誕生日祝いにデートの計画を立てた。お昼ご飯を食べて、遊園地か水族館に行こうと考えていた。
前日、彼女からメールが届いた。
夕方に遊園地で待ち合わせ、と。
僕は、なるほど。ナイトパレードが見たいんだな。と思った。
彼女とお昼を食べれないのは残念だけど、お祝いの言葉とプレゼントを渡せればそれでいい、と思い始めていた。
当日、夕方。
僕は信じれないものを見た。
いつもの三人に、知らない男が一人いたのだ。
僕は混乱した。パニックに陥った。見なかったフリをして立ち去ろうと思った。
でも、プレゼントを渡したかった。彼女に僕の想いに気づいてほしかったのだ。
知らない男は、幼なじみの男のクラスメイトで最近はよくつるんでいるらしい。今日は彼女の誕生日を祝って遊園地に四人で来たと言っていた。
なるほど、最近僕がこの三人と一緒に帰らなくなった理由がわかった。
そして、僕は彼女の誕生日も覚えていない奴にされていた。彼女によって。
僕は苦笑いを浮かべ謝った。幼なじみの男が僕を罵る。これも最近気付いたが、こいつ僕のこと嫌いだな。
しかし、何故僕は呼ばれたんだろ?
ただ罵りたかっただけなのだろうか?
彼女は、僕を悪者にしたかったのだ。
言い寄ってくる男には彼氏がいるアピールをし、幼なじみの男には僕のことを共通の悪者として話題にしたかっただけなのだ。
まぁ、これは帰り道に気付いたことなのだけれど。
彼女が露骨に幼なじみの男にアピールするようになっていた。
最近僕が構ってくれないとか、誕生日覚えてくれていないとか。
そして彼女は言う。
幼なじみの男なら、こんなことはないよねーと。
最近構っていないというかあまり連絡を取らなかったのはバイトをしていたからで、彼女から連絡を寄越すことはないくせに。
それでも僕は我慢した。
いつか訪れる、至高の時を夢見て。