始発
小鳥の声で目が覚めた。
いつもとは違う朝。
「僕、夜、何した?」
自分の体に飛び散った血。
鬼が襲ってきたときに感じた剣を伝う振動。
すべて鮮明に覚えていた。
「一体何が起きたっていうんだ…」
何の形跡も残らない体を見つめ頭を傾げる。
しかし、今日は学校。
ぼんやりしている暇はない。
そして黒は学校へと急いだ。
朝休み。
いつもより早めに学校に着いたみんなは校庭の隅に集まっていた。
「昨日の夜何があったか…覚えてる?」
黒はおずおずとみんなに尋ねた。
「覚えてる。」
みんなが躊躇って返事を返さないなか、美雪がはっきりと返事を返した。
「ずいぶん容赦ないね。」
菜次が苦笑する。
「躊躇ってても仕方ないでしょ?」
美雪は菜次を睨む。
菜次は首を竦めた。
「なあ菜次、美雪のどこが好きになったんだよ。あんなおっかないのに。」
菜次の横にいた青がこそこそと菜次に聞く。
「ばっ…馬鹿!そんなんじゃないし!」
菜次は思わず大きな声を出す。
いつの間にか雰囲気が和やかになっていた。
黒は心のなかで二人に感謝を述べた。
そろそろ朝休みが終わろうとしていた。
「よし、そろそろ朝休みが終わりそうだし、お開きにしようか。特に何か対策が立てれそうなことでもないし。大人に相談しても信じてもらえそうにないしね。」
黒は立ち上がり笑いながらそう言った。
「了解。」
みんなは口々にその意を伝えると校舎へと向かった。
その日一日みんなが授業に集中できた時間はなかった。