プロロ-グ
江戸時代。
人々を恐怖に陥れた「鬼」がいた。
その名は「殺人鬼」。
最初、誰がそのように呼び出したのか定かではない。
殺人鬼は次々と人を殺していった。男、女、老人、子ども、身分関係なく。
見た目は人のため、誰が殺人鬼なのかそうでないのかわからず、人を遥かに越えた力を持つ殺人鬼に対抗する術は人にはなかった。
殺人鬼の出現から数ヶ月後、殺人鬼に共通した特徴が判明し、殺人鬼と同様の特徴を持つものは迫害された。
疑われたものは囚われ、一切の自由を奪われた。一つでも一致すればとらえられることはなくとも、村八分にあう。
それでも殺人鬼の被害は収まることを知らず、人々は希望を失った。
そんな日々の中に忽然と姿を現した救世主がいた。
その中には殺人鬼の特徴を持つものもいたという。
殺人鬼が現れてから、消滅までは8年のことであった。
時の将軍は自らの力でこれを修めることができなかったのを恥とし、箝口令が敷かれ、その歴史は闇へと葬られた。
しかし、殺人鬼は消滅したわけではなかった。
その日、僕たちは規則を破ってしまった。なんてことない規則を。
あとから、
「規則を破って遊ぼう」
と言った自分を何度責めたことだろう。
あの時規則を破らなくても、もしかしたらどこかで運命にはめぐりあっていたかもしれない。
それでも、もしかしたらこんな目に合うのは僕だけだったかもしれないと何度も後悔した。
「許してやるから死んでくれ」
と言われてもおかしくない。俺がみんなの代わりに死ねばよかったのだから。
俺が死んだくらいで仲間が帰ってくるなら、喜んで死ねる。
生き残った仲間たちは優しくて、僕がそうすることを望まなかった。
だから俺はみんなの優しさに甘えて今日ものうのうと生きている。
僕は、俺は考えることを放棄した。