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コメディ自衛隊 当たりは三人、採用は四人

作者: リフェリア
掲載日:2026/03/13

本作はフィクションです。

作中に登場する「自衛隊」は「自立衛星観測隊」の略称であり、現実のいかなる組織・制度・人物とも一切関係ありません。

なお、万一よく似た部分があったとしても、それは偶然です。たぶん。

隊長:隊員の採用面接、ご苦労さん。有望な子はおった?


科長:いやぁ、面接官は疲れるっすね。十人見て、当たりは三人ってとこです。


隊長:そんなに厳しいん!?

……あれ、今回の採用予定、何人やったっけ?


科長:四人っす。


隊長:ハズレの中から一人選ばなあかんのか……。


科長:まぁ、そうなりますね。当たりから聞きます? ハズレから聞きます?


隊長:……当たりからにしとこか。


科長:まず自分のイチオシは三番っすね。


隊長:三番……。

(申込用紙を見ながら)

どこが良かったん?


科長:志望動機っす。


隊長:『遊ぶ金欲しさ』……って、これは志望動機ちゃうやろ。どっちか言うたら犯行動機や。

どう見ても二番の方がええやろ。


科長:『災害派遣で働いている姿に感動しました。人の役に立ちたいです』っすか。

隊長、見る目ないですねぇ。


隊長:なんでやねん。使命感に燃える、ええ隊員になりそうやないか。


科長:普段、私ら何してます?


隊長:は?


科長:体力錬成、野外訓練、掃除、整備、そしてまた訓練。たまに点検。

つまり地味です。


隊長:その地味な積み重ねが大事なんやろ。有事のときに動けるように、日頃から鍛えとるんや。


科長:それはそうっす。

でも、おめめキラキラで入ってくる子らが求めてるのって、そういう泥臭い地味な積み重ねやないんすよ。

人を助けて感謝される自分なんす。


隊長:いまさらっと危ないこと言わんかった?


科長:だから理想が強すぎる子ほど、『こんなつもりじゃなかった』で辞めやすいんです。

その点、三番は最初から金目当てです。ブレない。


隊長:その評価軸、嫌すぎるやろ。


科長:でも現実的ですよ。

自衛隊って、金だけ見ればかなり強いんす。営内なら家賃無料、食費無料、水道光熱費もほぼ無料。保険も団体で強い。

ぶっちゃけ、自由に使える金は幹部の私より新隊員の方が多いです。


隊長:まぁ……生活コストが低いのはたしかやな。


科長:でしょ?

だから『遊ぶ金欲しさ』って、実はかなり素直な志望動機なんすよ。前に一回辞めて民間行って、翌年また受けに来た子もおりましたし。


隊長:実例あると急に説得力出るな……。


科長:結局、理想より損得で来る人間の方が長続きするんす。


隊長:採用面接で聞きたくない結論やなぁ……。

で、他の当たりは?


科長:五番っすね。


隊長:ええと……十九歳、三歳の子あり、シングルマザー。子どもは実家で親と同居。

高校中退からの高認取得……。

だいぶ人生の密度が高いな。


科長:強いっすよ、この子は。


隊長:なんでや?


科長:高校中退ってことは、たぶん人生が予定通りにいかんかったんです。

でも、そこで終わらんかった。高認まで取ってる。子育てしながら。

根性が違います。


隊長:そこは、たしかに大したもんやな。


科長:しかも実家の支援がある。ここがでかい。

入隊後って教育やら入校やらで、身軽でもしんどいじゃないですか。そこを支えられる環境がある。

つまり、続けられる見込みが高いんす。


隊長:なるほどな。能力というより、生活基盤も見とるわけか。


科長:採用って、そういうもんでしょう。

優秀でもすぐ辞める人材より、ちゃんと続く人材の方が現場は助かるんすよ。


隊長:それはそうやけど……。

お前、言い方さえもうちょい丸ければ、めっちゃええ面接官なんやけどな。


科長:褒め言葉として受け取っときます。


隊長:受け取るな。

で、三人目の当たりは?


科長:八番の高卒っすね。


隊長:八番……。

成績も普通、資格も特筆なし、志望動機も無難。

そんな引っかかるか?


科長:家族欄見てください。


隊長:……自衛官まみれやな。父、母、叔父、兄二人に姉もか。

あ、お父さん俺の先輩や。


科長:そこっす。

自衛隊がどういうとこか、身内見て育ってきてる。つまり、変な理想を抱きにくい。リアリティギャップで辞める可能性が低いんすよ。


隊長:夢見すぎず、幻滅もしにくい、と。


科長:はい。

結局、辞めずに続けてくれるのが一番ありがたいんです。


隊長:それはほんまにそうやな……。

頑張って育てたのに辞められるのが、一番しんどいからな。


科長:でしょう?

採用は能力を見る場でもありますけど、同じくらい“辞めなさそうか”を見る場でもあるんす。


隊長:せやな。

……ほんなら逆に、ハズレの中で一番あかんかったのは誰や?


科長:一番っすね。絶対採らんです。


隊長:えっ、一番?

三十歳で年齢は高めやけど、資格いっぱい持っとるやん。使えるんちゃうん?


科長:職歴見てくださいよ。


隊長:……あ。

八年で七回転職。


科長:そうっす。

会社が潰れたわけでもない。キャリアアップで一貫してるわけでもない。全部ちゃんと残ってる会社を、ころころころころ辞めてる。

もうここまで来ると、経歴やなくて習性です。


隊長:言い方。


科長:しかも持ってる資格と職歴が噛み合ってない。

取るだけ取って、活かしてない。

極端な話、全種の車両免許持ってるのに三十年運転してない操縦手の助手席、座りたいです?


隊長:嫌やなぁ……。

それは嫌や。


科長:でしょう。

資格って、持ってるだけじゃ意味薄いんすよ。使って経験を積んでるかどうかが大事なんです。


隊長:なるほど……。

これは不採用やな。


科長:即決ありがとうございます。


隊長:ところで、さっきからお前の基準、ずっと一貫しとるな。

理想より現実、能力より継続、経歴より生活基盤。


科長:現場が欲しいのは、結局そこですからね。

夢を語る逸材より、多少クセあっても辞めん人の方がありがたいんす。


隊長:採用担当としては正しい気もするし、聞いててちょっと世知辛い気もするな……。


科長:世の中そんなもんです。


隊長:面接会場でそのまま言うたらあかんぞ。


科長:そこはちゃんと猫かぶってます。


隊長:一番怖いやつや、それ。

おかしいな

このフィクション、びっくりするくらい筆が進む……

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