第87話 使われた誤り
中央管理局は、判断を使った。
外縁で集められた記録の一部。
整理された線。
それを根拠に、調整順が変更される。
「これなら、安全だ」
担当者は言った。
理屈は通っている。
判断も、理由も、揃っている。
だが――
地図が、読まれていなかった。
線は、避けるためのものだ。
通るための道ではない。
順番を変えたことで、
想定されていなかった負荷が生じる。
小さな魔力逆流。
街区の一角が、一時閉鎖。
被害は限定的。
だが、明確な失敗だった。
「……なぜだ?」
中央の会議室に、沈黙が落ちる。
「判断は、正しかったはずだ」
若い魔導師は、静かに言う。
「判断は、避けるためのものです」
「進める理由にした瞬間、意味が変わる」
担当者は、言葉を失う。
主人公は、地図を広げた。
「ここです」
指が示すのは、使われなかった線。
「これは、残していたけど、
判断として扱わなかった記録」
それを含めて見れば、
別の結論になっていた。
中央は、初めて理解する。
判断は、便利な材料ではない。
切り出して使えば、形が変わる。
「……失敗だな」
担当者は、はっきり言った。
「消すか?」
「残してください」
若い魔導師が答える。
「使った誤りとして」
夜、街は静かだった。
外縁は、まだ持ちこたえている。
だが、中心は知ってしまった。
判断は、集めても、使っても、間違える。
それでも――
戻れない。




