第85話 集められる判断
変化は、すぐに現れた。
「最近、判断報告が増えてない?」
「増えてる。内容は薄いけど」
現場から上がってくる記録が、急に増えた。
・違和感あり
・問題なし
・念のため遅延
どれも間違いじゃない。
だが、判断が“安全側に寄りすぎている”。
「見られてるからな」
「失敗したくないんだろ」
結果、調整は遅れる。
連鎖は防げる。
だが、滞りが溜まる。
◇
反発も出た。
「判断を集めるって、結局どうするんだ?」
「中央が正解を決める気か?」
「だったら最初から任せればいい」
現場の声は、荒れていた。
若い魔導師は、会合で言う。
「集めるだけでは、意味がありません」
「判断は、使われ方で価値が変わる」
だが、その言葉は、全員に届かない。
判断を出す者。
判断を避ける者。
判断を“無難に薄める”者。
同じ枠組みの中で、
意図が分かれ始めている。
◇
夜、主人公は、判断記録の束を前にしていた。
数は多い。
だが、地図に落とすと、線がぼやける。
「……集めすぎだな」
判断は、溜めると濁る。
彼は、古い記録を一つ引っ張り出す。
外縁で、使われなかった判断。
それは、少ない言葉で書かれていた。
だが、線ははっきりしている。
「残すべきなのは、数じゃない」
独り言のように呟く。
判断の量が増えた夜、
王都は、少しだけ重くなった。
連鎖は防がれている。
だが、別の歪みが、静かに育っている。




