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【完結】レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
王都外縁・連鎖異変編

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第84話 調整対象としての外縁

 通達は、静かに出された。


 掲示板の最上段でもなく、

 緊急印の朱もない。


 ただ、文面は明確だった。


 ――王都外縁区画における調整判断について、

 ――当面の間、中央管理局が把握対象とする。


 把握対象。

 それだけの言葉。


 命令でも、介入でもない。

 だが、意味は重い。


「……対象になった、ってことか」


 誰かが、ぽつりと言った。


 若い魔導師は、通達を読み返す。


 判断枠についての言及はない。

 地図士の名も出てこない。


 だが、外縁で行われた“遅らせる判断”“使わない判断”が、

 すべて記録対象になる。


「これ、自由度は変わらないよな?」


「形式上はな」


 だが、全員が分かっている。


 見られている、という意識が判断を変える。



 午後、簡易説明会が開かれた。


「誤解しないでほしい」


 中央の担当者は言う。


「外縁を縛る意図はない」


「ただ、連鎖の兆候が見えた以上、

 全体像を把握する必要がある」


 正論だ。


 誰も反論できない。


「判断は、これまで通り現場で行っていい」


「ただし、理由と経緯は残してほしい」


 それは――

 枠の思想に、近い。


 若い魔導師は、気づく。


 中央は、枠を否定していない。

 だが、吸収しようとしている。



 説明会のあと、リーナが小声で言った。


「これ、制度化の入口だね」


「うん」


「嫌?」


「……早すぎる」


 制度は、正解を求め始める。

 今はまだ、迷いを残す段階だ。


 その夜、主人公は地図に、

 新しい印をつけた。


 外縁と中央を隔てていた線を、

 点線に変える。


 もう、完全な境界ではない。



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