表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
王都外縁・連鎖異変編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/102

第75話 空いた隙間


 裁量が縮小されてから、現場は“整った”。


 判断は減り、

 手順は増え、

 報告は丁寧になった。


 問題は、処理される。

 ただし、遅れて。


「基準は守っています」


 その言葉を、何度聞いたか分からない。


 南倉庫で、魔力循環の異常が検知されたのは、朝だった。


 数値は、停止基準に近い。

 だが、超えてはいない。


「様子見で」


 担当者は、規定どおりに言った。


 昼、数値が少し上がる。


「報告を」


 これも、規定どおり。


 夕方、基準を越えた。


 停止命令が出る。

 作業は止まる。


 だが、その時点で、

 被害は広がっていた。


「……止めるの、遅かったな」


 若い魔導師は、現場を見下ろす。


 以前なら、朝の段階で手を打てた。


 だが、今はできない。


「誰の責任ですか」


 作業員が、ぽつりと聞く。


「……規定です」


 答えは、それしかなかった。


 連絡官は、少し離れた場所で見ていた。


 何も言わない。

 何も書かない。


 夜、被害報告がまとまる。


 大事故ではない。

 だが、確実に損失だ。


 慎重派の代表が、机を叩く。


「だから言った」


「裁量は、危険だ」


「でも、今の遅れも、危険だ」


 言い返せない。


 リーナが、静かに言う。


「空いた隙間に、誰も立ってない」


 裁量を削った。

 だが、代わりを置いていない。


「……王都は?」


「まだ、何も」


 連絡官は、宿に戻ったままだ。


 若い魔導師は、規定書を開く。


 守るために作った文字が、

 人の手を縛っている。


 そのとき、内線が鳴った。


「連絡官が、来ています」


 夜遅く。


 彼は、部屋に入るなり言った。


「一つ、聞かせてくれ」


「何でしょう」


「今の遅れは、許容内か」


 若い魔導師は、即答できなかった。


 許容。

 それは、誰が決める?


「……許容ではありません」


 絞り出す。


「でも、現行では、止められません」


 連絡官は、頷いた。


「それを、どうする」


 問いは、重い。


 制度を、戻すか。

 破るか。

 書き換えるか。


 夜は、まだ長い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ