第54話 外からの評価
街に、
見知らぬ
馬車が
入ってきた。
紋章は、
王都のものでは
ない。
だが――
王都式の
匂いが
する。
「調査です」
そう名乗った男は、
穏やかな
笑みを
浮かべていた。
「この街で、
流れに
変化が
あったと
聞きまして」
噂は、
もう
外に
出ている。
早い。
「……どこから?」
若い女が
問う。
「周辺都市の
水路記録です」
「数字は、
正直ですから」
俺は、
一歩
下がったまま、
口を出さない。
この場は――
街のものだ。
⸻
「街の名前は?」
調査官が
帳面を
開く。
「進路の街」
一瞬、
ペンが
止まる。
「登録は?」
「まだ」
「なら、
暫定ですね」
言葉は
丁寧だ。
だが――
線を
引いている。
「王都基準に
照らせば、
ここは
再調整
対象です」
空気が、
張り詰める。
「事故が
起きる前に、
対処を」
善意。
正論。
だからこそ、
厄介だ。
⸻
「……昨日」
若い女が
言う。
「水位が
下がった」
「私たちで
直した」
調査官は
頷く。
「把握しています」
「ですが、
それは
偶然です」
「次は、
もっと
大きく
揺れるかも
しれない」
正しい。
だが――
それだけでは、
足りない。
「だから、
王都式を
戻す?」
若い女が
聞く。
「それが、
最も
安全です」
沈黙。
街の人々が
互いを
見る。
迷いが、
戻る。
その瞬間――
俺は
前に
出た。
⸻
「一つだけ、
質問を」
調査官が
こちらを
見る。
「この街が、
止まっていた
ことは
知っているか?」
「……記録上は、
問題ありません」
「事故ゼロ」
「成長率も、
安定」
俺は
頷く。
「だから、
止まっていた」
「記録に
出ない
停止もある」
調査官は、
言葉を
探す。
「王都式は、
否定しない」
「だが――
唯一の
正解でもない」
「この街は、
今、
動いている」
「揺れながら」
「それを、
止める
権限が
あなたに
ありますか?」
空気が、
張り付く。
⸻
調査官は、
帳面を
閉じた。
「……即時の
介入は
見送ります」
「ただし」
「観測対象です」
その言葉に、
誰も
驚かない。
もう、
慣れた。
馬車が
去る。
残された
広場で、
誰かが
息を
吐いた。
「……怖かった」
「ええ」
若い女が
言う。
「でも、
言えた」
それで、
十分だ。
⸻
夜。
俺は
地図を見る。
【進路の街】の線は、
まだ
細い。
だが――
消えない。
外は、
評価する。
測る。
管理しようと
する。
それでも――
選ぶのは、
内だ。
この街は、
それを
一度、
思い出した。
もう一度
忘れるかは、
彼ら次第だ。
そして――
次に
評価されるのは、
ここだけじゃ
ない。




