第51話 選ばせるという決断
集会は、開かなかった。
鐘も、
呼び声も、使わない。
俺たちは、広場に立っただけだ。
それを見て、
人が一人、また一人と集まる。
だが――
誰も、中心に立たない。
自然にできるはずの輪が、歪む。
「……慣れてない」
リーナが小さく言う。
「ええ」
「ここでは、
決定は外から来る」
誰かが口を開く。
「王都の人か?」
「また、
数を測るのか?」
俺は、首を振った。
「今日は、測らない」
「決めもしない」
ざわめき。
不安と、苛立ち。
「じゃあ、何しに来た」
「……直しに?」
俺は、
一歩だけ前に出る。
「返しに来た」
「この街の選択を」
空気が、固まる。
⸻
「王都式は、安全だ」
「それは、否定しない」
「だが――
安全は、目的じゃない」
「結果だ」
誰かが笑う。
「結果でいいじゃないか」
「危なくないなら」
「その通りだ」
俺は頷く。
「だから、壊れてはいない」
「でも、続いていない」
沈黙。
「この街には、中心がない」
「それは、
誰かが奪ったわけじゃない」
「手放した」
反発の声が上がる。
「奪われた!」
「王都に!」
「数で縛られた!」
俺は、否定しない。
「そう感じるのも、正しい」
「だが――
一つだけ事実がある」
広場を見回す。
「決めなかった」
「決めない方が、楽だった」
空気が、重くなる。
それは、責めじゃない。
ただの事実だ。
⸻
「今から、
王都式を外すことはできる」
「完全には、戻らないが」
「それでも、選択肢は増える」
誰かが問う。
「失敗したら?」
「事故が起きたら?」
「……責任は?」
俺は、即答した。
「ここにいる全員だ」
どよめき。
「無理だ!」
「そんなの――」
「だから、選ばせる」
「無理なら、やらない」
それだけだ。
⸻
長い沈黙。
誰も、前に出ない。
やがて――
一人の女が歩き出す。
年若い。
だが、
目が迷っていない。
「……私が」
声は震えている。
「決めるんじゃない」
俺は言う。
「話し始めるだけだ」
彼女は、頷く。
「じゃあ……まず、名前を」
広場に、微かなざわめき。
人が、顔を見合わせる。
名前。
呼ぶこと。
そこからしか、街は戻らない。
流れが、はっきりと動いた。
迷いながら、だが――
自分たちの向きで。
俺は、一歩引いた。
これ以上、前に出てはいけない。
選ぶのは――
彼らだ。




