第47話 報告と温度差
王都への報告は、簡潔にまとめた。
数字。
手順。
結果。
余計な感情は、書かない。
それでも――
読み手の反応は、避けられない。
⸻
仮設通信室。
水晶盤の向こうに、見慣れた顔が並ぶ。
「北方交易都市・リュネ、調整完了」
俺は、要点だけを話した。
「王都式ではなく、
都市固有の流れを前提とした抑制・逃がし方式」
「事故、
死傷者、ともにゼロ」
一瞬の沈黙。
やがて、魔法庁側の官吏が口を開いた。
「……王都式を使わなかった、と?」
「はい」
「それは、規定外では?」
「規定は、王都内向けです」
空気が、少し冷える。
「前例がない」
「統一性が崩れる」
「他都市が、同じことを要求したら?」
想定通りだ。
「その場合は、見る」
「街ごとに」
「統一は、安全のためにある」
「街を壊すためではありません」
別の声が入る。
「だが、成果は出ている」
老魔導士だ。
「数字は、正直だ」
「……責任は?」
問いが、飛ぶ。
俺は、即答した。
「俺が取ります」
「今回の方式は、私の判断です」
水晶盤の向こうで、小さなざわめき。
「外部都市での
特例対応、前例になるぞ」
「それでいい」
「必要なら、枠を作ってください」
「現場が迷わないように」
沈黙が、長くなる。
やがて――
王城代表が頷いた。
「……検討しよう」
「だが、続くなら――」
「観測対象だ」
「承知しています」
⸻
通信が切れる。
部屋に、
静寂が戻る。
「……重くなったわね」
リーナが
肩をすくめる。
「最初から軽くなるとは思ってない」
地図を閉じる。
【外部調整:成功】
【立場:要観測】
「これで、次が来る」
「ええ」
「王都の外で、
“王都式じゃ直らない街”は
ここだけじゃない」
窓の外。
リュネの街は、
今日も動いている。
それを、
王都はまだ知らない。
だが――
この温度差が、やがて線を引く。
街と、制度の間に。




