第40話 最初の共同任務
任務通達は、簡潔だった。
《王都外縁・旧物流路》
魔力滞留による
通行障害
対応者:
王都調整監督官
暫定補助調整士
認定調整士 一名
「……いきなり、フルメンバーね」
リーナが、紙を見て言う。
「見られてる」
「成功するか、
制度が機能するか」
俺は、書類を畳む。
「試験だ」
⸻
現地。
旧物流路は、天井が高く、道幅も広い。
だが――
中央部だけ、人が通れない。
空気が、澱んでいる。
「……ここ、重い」
ミレアが、小さく呟く。
「制限路線、単体なら足りません」
「分かってる」
俺は、全体を見渡す。
【滞留範囲:広】
【原因:旧式残留+新規重複】
「……混ざってる」
「だから、分担する」
俺は、三人を見る。
「ミレア、外周の安定化」
「リーナ、結界と遮断管理」
「エルディン」
一瞬、間が空く。
「……中心だ」
エルディンは、静かに頷いた。
「分かった」
緊張が、空気に走る。
「始める」
⸻
ミレアが、細い線を引く。
【制限路線:安定】
外周が、落ち着く。
リーナの結界が、波を抑える。
そして――
中心。
エルディンが、息を整える。
「……昔なら、全部、止めてた」
「今は?」
「……流す」
彼の線は、以前より細い。
だが――
芯がある。
俺は、上から全体を重ねる。
【統合調整:開始】
線が、
競合しない。
支え合う。
滞留していた魔力が、ゆっくりと動き出す。
「……通れる」
誰かが、呟いた。
空気が、戻る。
【調整完了】
【事故:なし】
沈黙。
次の瞬間――
息が、一斉に吐き出された。
「……できた」
ミレアが、目を見開く。
エルディンは、地面を見て小さく笑った。
「……一人じゃ、無理だった」
「そうだな」
俺は、頷く。
「だから――
これからは、これだ」
⸻
任務後。
報告書は、短く済んだ。
だが――
意味は重い。
「共同調整、
成功例第一号」
リーナが、書類を閉じる。
「これで、戻れないわね」
「戻らない」
俺は、地図を閉じた。
【制度状態:安定稼働】
【次段階:拡張検討】
王都の地下で、線は静かに巡っている。
誰にも気づかれず。
それでいい。
英雄はいらない。
必要なのは――
続く仕組みだ。
こうして、王都調整は
“個人の力”から
“街の技術”へと踏み出した。




