表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
王都調整編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/81

第39話 監督官としての決断

 朝。


 王都の鐘が、ゆっくりと鳴った。


 外縁区画の空気は、昨夜よりわずかに軽い。


 だが――

 問題が消えたわけじゃない。


「……報告、もう上がってるわよ」


 リーナが、評議会棟の前で言った。


「“旧式干渉の再配置”」


「“過去の調整士の関与”」


「……早いな」


「王都だもの」


 俺は、扉を押す。


 逃げ道は、もうない。



 非公開会議室。


 集まっていたのは、いつもの三人に加え――

 魔法庁の若手監査官。


 視線が、一斉に俺に向く。


「地図士」


 王城代表が、口を開いた。


「昨夜の件、説明してもらおう」


「はい」


 俺は、簡潔に話す。


 固定線の存在。

 エルディンの正体。

 共同での再配置。


「……つまり」


 監査官が、眉をひそめる。


「非認定者を、現場に立たせた

 ということですね?」


「その通りです」


 即答。


 ざわめき。


「規定違反だ」


「前例がない」


「危険すぎる」


 老魔導士が、机を軽く叩く。


「静かに」


 俺は、一歩前に出た。


「違反は、認めます」


「ですが――

 他に方法はありませんでした」


「強制解除すれば、外縁区画は混乱していた」


「彼の線を理解できるのは、

 彼自身だけだった」


 監査官が、冷たく言う。


「感情論ですね」


「職務放棄にも見える」


 胸の奥が、少しだけ軋んだ。


 だが――

 目を逸らさない。


「感情です」


「でも――

 判断でもあります」


 俺は、地図を机の上に置いた。


【外縁区画:安定】

【事故率:低下】

【市民影響:最小】


「結果は、出ています」


 沈黙。


 王城代表が、ゆっくりと息を吐いた。


「……責任は?」


「取ります」


「どう取る?」


「俺が監督する」


「彼を、正式な補助調整士として

 登録してください」


 ざわっと、空気が揺れる。


「前例がない!」


「失敗者だぞ!」


「逃亡者でもある!」


 俺は、はっきりと言った。


「だからこそです」


「放置すれば、また歪みになる」


「管理下に置けば、資産になる」


 老魔導士が、目を細める。


「……厳しい条件になるぞ」


「構いません」


「監督官として、私的感情が疑われる」


「承知しています」


 リーナが、静かに言葉を足す。


「彼は、もう逃げません」


「昨夜、自分で線を緩めました」


「それは――

 逃げている人にはできない」


 再び、沈黙。


 やがて――

 王城代表が頷いた。


「条件付きで承認する」


「エルディンを、

 暫定補助調整士として登録」


「責任者は――

 地図士、あなた一人だ」


「……ありがとうございます」


「礼は、結果で示せ」



 会議後。


 廊下で、リーナが肩をすくめる。


「……重い役、背負ったわね」


「自分で選んだ」


「後悔は?」


 俺は、少し考えてから首を振った。


「ない」


「街は、人が作る」


「線だけ正しくても、

 意味がない」


 地図が、静かに更新される。


【監督対象:追加】

【過去調整士:管理下】


 窓の外。


 王都は、

 いつも通り動いている。


 だがその裏で――

 一つの決断が、街の未来を書き換え始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ