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レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
王都調整編

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35/67

第35話 過去の調整士

 外縁区画の件から、

 三日後。


 俺は、

 王都記録院にいた。


 石造りの奥、

 陽の入らない

 書庫。


「……本当に、

 全部紙なのね」


 リーナが、

 低く呟く。


「魔法で

 保存できないものは、

 意外と多い」


 俺は、

 古い台帳を

 めくった。


 外縁区画。

 旧式干渉。

 未完成。


 該当するのは――

 十数年前。


「……あった」


 記録は、

 短い。


《調整試験:第七街路》

実施者:補助調整士

名称:エルディン

結果:中断

理由:不適合・暴走兆候

処置:記録封印


「……補助?」


「正式な

 地図士じゃない」


「制度が、

 できる前の

 実験要員だ」


 リーナが、

 眉をひそめる。


「暴走って……

 街は?」


「表向きは、

 何も起きてない」


「でも――

 “残った”」


 俺は、

 別の紙を引き抜く。


《対象者:エルディン》

能力:空間認識特化

問題点:線を“固定”できない

備考:過剰責任感あり


「……固定できない?」


「引いた線が、

 消えない」


「流動じゃなく、

 居座る」


 地図が、

 静かに警告する。


【類似特性:検出】


「……似てる?」


「危険な部分が、

 だ」



 記録院を出た後、

 魔法庁の老魔導士が

 待っていた。


「読むと思ったよ」


「生きてるんですか?」


「……分からん」


「失踪扱いだ」


「だが、

 遺体は出ていない」


 老魔導士は、

 城壁の方を

 見やる。


「彼は、

 街を守ろうとした」


「方法を、

 間違えただけだ」


 リーナが、

 小さく言う。


「……放置された線が、

 今も街を

 縛ってる」


「そうだ」


「王都は、

 彼の失敗の上に

 立っている」



 夜。


 宿で、

 地図を開く。


 外縁区画の

 反応が、

 微かに揺れた。


【旧式干渉:反応増幅】

【発生源:単一点】


「……動いてる」


「線じゃない」


「人だ」


 リーナが、

 顔を上げる。


「まさか……」


「可能性は、

 一つ」


 エルディン。


 過去の調整士。


 線を固定してしまう男。


 俺は、

 ペンを握る。


「今度は、

 消さない」


「……どうするの?」


「話をする」


 過去の失敗と、

 今の街。


 それが、

 同じ場所で

 動き始めていた。



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