表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
王都調整編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/62

第34話 外縁区画の異常

 王都外縁。


 城壁の内側、

 だが中心からは

 明確に外れた区域。


 住宅と倉庫、

 そして――

 使われなくなった魔力設備が

 混在する場所だ。


「ここ……

 静かすぎない?」


 リーナが、

 周囲を見回す。


 人はいる。

 建物も、

 壊れていない。


 なのに――

 音が薄い。


「地図の反応は?」


「……強くない」


「けど、

 嫌な出方をしてる」


 俺は、

 ペンを握ったまま

 歩く。


【未解析歪み】

【干渉源:不明】

【性質:持続型】


「持続?」


「誰かが

 引き続けてる

 わけじゃない」


「残ってる」


 通りの角で、

 老婆が

 俺たちを見た。


「……あんたら、

 調整の人かい?」


「はい」


「最近、

 道が変なんだよ」


「昨日と同じ距離を

 歩いてるのに、

 妙に疲れる」


「逆に、

 すぐ着く時もある」


 俺は、

 頷いた。


「誰か、

 ここで

 線を引いた覚えは?」


「さあねぇ」


「ずいぶん前に、

 工事の魔導士が

 来てた気はするけど……」


 ずいぶん前。


 それが、

 引っかかった。



 廃倉庫の裏。


 地面に、

 消えかけの線が

 残っていた。


「……古い」


「制限路線でも、

 私たちのでもない」


 リーナが、

 しゃがみ込む。


「これ、

 いつの技術?」


「……制度以前だ」


「しかも、

 未完成のまま

 放置されてる」


 地図が、

 微かに震える。


【旧式干渉】

【再活性:確認】


「動き出してる?」


「人が増えたからだ」


「王都全体の

 魔力流量が

 上がってる」


「それに反応して、

 昔の線が

 息を吹き返してる」


 リーナが、

 息を呑む。


「……過去の失敗が、

 今になって?」


「ああ」


「技術が進めば、

 埋めた歪みも

 浮かび上がる」



 俺は、

 ペンを構えた。


「消す?」


「消せる」


「でも――

 影響が広い」


 外縁区画全体。


 ここを通る

 人の流れ。


 物流。


 生活。


「強制解除すると、

 反動が出る」


「じゃあ……」


「上書きする」


 ゆっくりと、

 線を引く。


【調整:緩和路線】

【目的:流量均等化】


 派手さは、

 ない。


 だが――

 空気が

 戻った。


「……楽になった」


 近くにいた

 作業員が、

 呟く。


「道が、

 ちゃんと

 同じ長さだ」


 線は、

 地面に残らない。


 完全な修復ではない。


 応急処置だ。


「……全部は、

 直せないのね」


「過去は、

 消せない」


「だから、

 付き合う」


 地図に、

 新しい警告が浮かぶ。


【旧式干渉:複数検出】

【位置:王都各所】


「……一つじゃない」


「ええ」


 リーナが、

 静かに言う。


「王都、

 思ってたより

 古い傷だらけね」


 俺は、

 ペンをしまった。


「これからは、

 新しい問題だけじゃない」


「昔の失敗も、

 拾い直すことになる」


 外縁区画の

 夕暮れ。


 街は、

 何事もなかったように

 動いている。


 だがその下で――

 過去と現在の線が、

 交差し始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ