第33話 増える申請、増える歪み
申請書は、
毎朝増えていた。
机の上に、
昨日より
一段高く積まれている。
「……減らないわね」
リーナが、
呆れたように言う。
「むしろ、
加速してる」
俺は、
紙束をめくる。
魔法庁職員。
工房補助。
私設護衛。
中には――
怪しいものもある。
「目的が、
『利益』になってる」
「却下?」
「保留」
「理由は?」
「今は、
まだ危険だ」
線を引ける者が増えれば、
街は安定する。
だが同時に――
歪みも増える。
地図は、
静かに警告を出していた。
【複数干渉:増加】
【重なり率:上昇】
「重なり?」
「制限路線同士が、
影響し合ってる」
「単体では安全でも、
数が増えると
別問題になる」
リーナが、
息を吐く。
「……都市規模の話ね」
「ああ」
⸻
午後。
魔法街区で、
小さな事故が起きた。
炉が、
一瞬だけ
止まった。
被害は、
なし。
だが――
原因が問題だった。
【原因:重複調整】
【認定者:2名】
「……ミレアと、
もう一人」
俺は、
現場を見る。
線は、
正しい。
どちらも。
だが――
重なっている。
「……私の、
判断ミスです」
ミレアが、
頭を下げる。
「違う」
「想定外だっただけだ」
「一人なら、
問題なかった」
俺は、
線を整理する。
【再配置:完了】
流れが、
戻る。
「これが、
“増えた歪み”か」
リーナが、
呟いた。
「人が増えれば、
事故も変わる」
「ええ」
「質じゃなく、
配置の問題になる」
⸻
夜。
評議会に、
報告を上げる。
「認定人数の
一時停止を
提案する」
「代わりに、
区域分担制を」
老魔導士が、
頷く。
「理にかなっている」
「技術の問題ではなく、
運用の問題だな」
教会の男が、
静かに言う。
「だが――
広がりを止めると、
反発も出る」
「出ます」
俺は、
即答した。
「でも、
事故よりはいい」
⸻
宿への帰り道。
リーナが、
考え込む。
「……ねえ」
「あなた、
街を“描いて”るわよね」
「地図以上に」
俺は、
歩きながら答える。
「人が動けば、
街も動く」
「線は、
その補助だ」
地図の端が、
暗く光った。
【未解析歪み:発生】
【位置:王都外縁】
「……外?」
「嫌な予感」
申請は、
増え。
技術は、
広まり。
歪みは、
想定の外に
出始めていた。




