第30話 調整技術の管理
旧水路区画から戻ったその足で、
俺は再び評議会に呼ばれた。
今度は、
非公開。
部屋は小さく、
人も少ない。
王城代表。
魔法庁の老魔導士。
教会の例の男。
それだけ。
「想定より早かったな」
老魔導士が、
そう言って笑う。
「模倣者の発生だ」
「……ええ」
俺は、
頷いた。
「俺の責任です」
「違う」
王城代表が、
首を振る。
「影響が出ること自体は、
予測していた」
「問題は――
どう管理するかだ」
教会の男が、
静かに言う。
「力は、
広まる」
「隠しても、
必ず真似る者が出る」
「そして――
未熟な者ほど、
街を壊す」
リーナが、
俺の横で腕を組む。
「つまり?」
「制度化する」
老魔導士が、
即答した。
「調整技術を、
技術として扱う」
「……教える?」
「制限付きで、
だ」
机の上に、
数枚の書類が置かれる。
「王都管理下での
調整技術使用規定」
「資格制」
「記録義務」
「監督者配置」
俺は、
紙に目を落とす。
「……ずいぶん、
本気ですね」
「王都は、
街を守る」
王城代表が、
淡々と続ける。
「そして――
あなたも守る」
「あなた一人に
責任を押し付ければ、
必ず破綻する」
教会の男が、
少し言葉を選びながら言う。
「地図士」
「あなたの力は、
信仰や秩序を壊す危険性もある」
「だが――
無視できない」
「だから、
枠に入れる」
俺は、
しばらく黙った。
制度。
管理。
制限。
(……自由は、
減るな)
だが――
無秩序よりは、
マシだ。
「条件がある」
俺は、
顔を上げる。
「俺が、
最初の監督者になる」
「現場を知らない人間に、
判断はさせない」
老魔導士が、
目を細める。
「……重い役目だぞ」
「分かってます」
「それでも――
事故は減る」
沈黙。
やがて――
王城代表が、
頷いた。
「承認する」
「あなたを、
王都調整監督官に任命する」
地図が、
静かに反応する。
【役割追加】
【立場:監督官】
【干渉権限:限定】
リーナが、
小さく笑う。
「……肩書き、
増えたわね」
「増やしたくて
増えたわけじゃない」
老魔導士が、
立ち上がる。
「これで、
模倣者は
“犯罪者”になる」
「同時に――
学びたい者には
道ができる」
俺は、
地図を閉じた。
「……道を、
引き続けるわけだ」
「ただし今度は、
ルール付きで」
部屋を出ると、
廊下の先に
王都の明かりが見えた。
人の数だけ、
問題がある。
力が増えれば、
責任も増える。
それでも――
引いた線は、
戻らない。
王都は今、
新しい技術を
管理しながら使う段階へ
進もうとしていた。
そして――
それは、
次の衝突を
必ず呼ぶ。




