第27話 呼び出し ― 王都評議会 ―
呼び出しは、
即日だった。
王都警備兵が、
魔法街区の混乱が完全に収まる前に
こちらを見つけた。
「地図士殿」
「王都評議会より、
出頭要請です」
形式張った声。
だが――
拒否権は、ない。
リーナが、
小声で言う。
「早すぎない?」
「想定内だ」
俺は、
地図を畳んだ。
「噂が回る前に、
“公式”で押さえに来た」
⸻
評議会の間は、
広く、
高かった。
声が、
自然と反響する造り。
半円状の席に、
十数名。
貴族。
商会代表。
教会関係者。
王都魔法庁。
全員が、
俺を見ている。
「――地図士」
最初に口を開いたのは、
魔法庁の老魔導士だった。
「魔法街区で起きた
建造物消失事件」
「説明を求める」
俺は、
一歩前に出る。
「事故です」
即答。
ざわ、と
空気が揺れる。
「事故、だと?」
「誰の責任だ」
「原因は?」
矢継ぎ早の声。
俺は、
一つずつ答える。
「原因は、
魔力循環の過密」
「責任は――
俺にあります」
リーナが、
僅かに息を呑んだ。
評議席が、
一瞬静まる。
教会側の男が、
冷ややかに言った。
「つまり、
あなたの介入が
王都に被害をもたらしたと」
「否定しません」
「……正直だな」
「隠す理由がない」
俺は、
地図を開いた。
「ただし――
意図的ではない」
「そして、
再発防止策は
すでに引いています」
【投影:魔法街区循環図】
光の線が、
空中に浮かぶ。
「……これは?」
「制限路線です」
「魔力の通り道を
あえて細くし、
流量を抑える」
魔法庁の老魔導士が、
目を細めた。
「そんな調整……
聞いたことがない」
「でしょうね」
「でも、
“起きていない”ことが
証拠です」
沈黙。
その時。
「問題は、
そこではない」
重い声が、
評議会の奥から響いた。
王城側の代表。
「あなたは、
許可なく
王都全域に影響を与えた」
「それが問題だ」
俺は、
視線を上げる。
「はい」
「だから、
ここに来ました」
「……どういう意味だ」
「監督下に置いてください」
ざわめきが、
一気に広がる。
「自分から言うか?」
「監視を
受け入れるのか」
俺は、
はっきり言った。
「隠れてやると、
次はもっと
大きな事故が起きる」
「なら――
表に出る」
リーナが、
横で静かに頷く。
教会の男が、
鋭く問う。
「条件は?」
「三つあります」
指を、
一つずつ立てる。
「一、
調整結果は
すべて記録されること」
「二、
王都側も
情報を隠さないこと」
「三――」
一拍置く。
「責任は、
俺が取る」
評議会が、
完全に静まった。
やがて――
老魔導士が、
低く笑った。
「……面白い」
「若造の癖に、
逃げ道を潰しに来たか」
王城代表が、
腕を組む。
「承認は、
簡単ではない」
「分かっています」
「ですが――」
俺は、
地図を閉じた。
「この街は、
もう“動き始めている”」
「止めるより、
舵を取った方が
安い」
再び、
沈黙。
そして――
評議会は、
短い休会に入った。
扉が閉まる。
リーナが、
小さく息を吐いた。
「……賭けたわね」
「ああ」
「でも、
一番安全な賭けだ」
扉の向こうで、
重い議論の声が響く。
王都は、
今――
地図士を
公式に扱うかどうかを
決めようとしていた。




