第25話 王都全域調整計画
新しい章の始まりです。
公開は、0・6・12・18時の1日4回に変わります。
王都の地図を、完全に開いたのは――
これが初めてだった。
机いっぱいに広がる紙面。
いや、もはや紙じゃない。
線が、重なり、絡まり、
呼吸している。
【対象:王都全域】
【人口密度:過密】
【路線干渉:常時発生】
【整理予備判定:複数】
「……思った以上ね」
リーナが、低く息を吐いた。
「ここ、ここも」
「“削除候補”が、点在してる」
「貴族街、下町、旧区画……」
俺は、表示を切り替える。
【視点変更:整理者側】
途端に、色が変わった。
赤。
灰。
空白。
「……赤は?」
「負荷が高い」
「灰は、不要判断寸前」
「空白は――すでに“消されても問題ない”と
見なされてる」
リーナが、絶句する。
「……人が、住んでるのに」
「住んでるかどうかは、
関係ない」
「**“繋がってるか”**だ」
王都は、巨大な交差点だった。
人は多い。
道も多い。
だが――
役割が、途切れている。
「整理者は、
“街”を見てない」
「“流れ”を見てる」
リーナが、考え込む。
「じゃあ……
全部繋ぎ直す?」
「無理だ」
「王都は、大きすぎる」
俺は、ペンを置いた。
「だから――
核を作る」
「核?」
「消せない場所を、先に作る」
地図の中央。
王城でも、神殿でもない。
市場区に、印を打つ。
【調整核:設定】
【属性:生活・流通】
「食べる」
「働く」
「売る」
「買う」
「ここは、誰にとっても必要だ」
次に、線を伸ばす。
市場から、
下町へ。
工房街へ。
宿場へ。
【生活路線:束化】
線が、太くなる。
「次は、
魔法街区」
リーナが、即座に理解した。
「私がやる?」
「ああ」
「魔法は、
“理解されなくても使われる”」
「整理者が、切りにくい」
リーナが、小さく笑う。
「やり方、
だんだん悪辣になってきたわね」
「褒め言葉だ」
その瞬間。
地図が、軋んだ。
【観測反応:増大】
【整理者:複数視点】
「……来た」
空間の端に、あの“無色”が、二つ見える。
「一体じゃ、なかったのね」
「世界は、個体じゃない」
俺は、ペンを走らせる。
「だから――
一本じゃ止まらない」
【描画:冗長核】
【核:三重】
市場。
魔法街区。
宿場街。
三点が、三角を成す。
流れが、循環し始める。
無色の存在が、一瞬、動きを止めた。
「……負荷、分散?」
「そうだ」
「切るなら、全部切れ」
「一本じゃ、意味がない」
整理者たちは、互いに視線を交わす。
そして――
退いた。
【整理判定:保留】
【理由:影響過大】
リーナが、大きく息を吐いた。
「……勝った?」
「いや」
「先延ばしにした」
俺は、王都全域を見渡す。
「でも――
十分だ」
「道は、走り始めた」
市場の喧騒。
魔法の光。
宿屋の灯り。
王都は、何も知らず、
今日も動いている。
だがその裏で――
**“消されない構造”**が
静かに組み上がっていた。
地図に、
新しい章名が刻まれる。
【章名:王都調整編】
【副題:世界と交渉する者】
(……ここからが、本番だ)
俺は、ペンを離さなかった。




