第24話 例外指定、その意味
帰還路は、
最後の一人を通したあと、
静かに閉じた。
空白だった街は、
役目を終えたように薄れていく。
「……これで、
南区の人は戻れる」
リーナが、
少し疲れた声で言った。
「ああ」
「ただし――
“完全に元通り”じゃない」
俺は、
地図を見下ろす。
南区の表示。
【地域状態:安定】
【補足:例外指定下】
「……例外?」
リーナが、
首を傾げる。
黒衣の人物が、
代わりに答えた。
「世界の自動処理から、
一部外された状態だ」
「整理も、
削除も、
即座には働かない」
「その代わり――」
視線が、
俺に向く。
「常に、
観測される」
「監視、
ってこと?」
「近い」
黒衣の人物は、
曖昧に頷いた。
「だが、
敵意ではない」
「世界が、
君を“未知数”として
扱い始めた」
俺は、
小さく息を吐いた。
「面倒だな」
「面倒で済めば、
いいけど」
リーナが、
冗談めかして言う。
だが――
地図は、
すでに次を示していた。
【例外干渉:波及中】
【影響範囲:周辺都市】
「……連鎖してる」
「南区だけじゃない」
黒衣の人物が、
低く言った。
「例外が生まれれば、
周囲との齟齬が出る」
「整理者は、
再び動く」
「今度は――
“観測対象”として」
リーナが、
俺を見る。
「どうする?」
俺は、
少し考え――
地図を畳んだ。
「逃げない」
「隠れない」
「先に、
道を見せる」
黒衣の人物が、
意外そうに目を細める。
「見せる?」
「整理者が
“不要”と判断する前に」
「必要な道を、
先に作る」
地図を、
軽く叩く。
「都市。
街道。
人の繋がり」
「全部、
後追いじゃ遅い」
「……世界改変に、
近い」
「調整だ」
俺は、
言い切った。
「壊さない」
「増やすだけだ」
リーナが、
微笑む。
「魔法使い的にも、
嫌いじゃないわ」
黒衣の人物は、
しばらく沈黙し――
やがて、外套を翻した。
「君のやり方は、
危険だ」
「だが――」
去り際に、
一言残す。
「道を消す者より、
道を増やす者の方が、
世界は扱いづらい」
その姿は、
路地の向こうに消えた。
南区に、
いつもの朝が戻る。
人々は、
“消えていたこと”を
詳しくは覚えていない。
だが――
何かが変わった感覚だけが、
街に残っていた。
地図を開く。
新しい表示が、
静かに点灯する。
【新章予告】
【対象:王都全域】
【調整難易度:高】
(……次は、
街一つか)
俺は、
ペンを握り直す。
例外指定は、
守られる印ではない。
試される印だ。
そして――
試されるのなら、
応えるだけだ。
道を、
引き続ける限り。
街道調整編、終了です!
読んでいただき、ありがとうございました!
次章も、お楽しみに!!




