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レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
街道調整編

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18/28

第18話 噂が、道を走る

 街に入った瞬間、

 空気が違った。


 人の視線が、

 わずかに逸れる。


 話し声が、

 途中で止まる。


 地図が、

 冷静に表示する。


【認識変化:進行中】

【要因:情報伝播】


「……もう来てるわね」


 リーナが、

 フードを深く被った。


「思ったより、

 早い」


 俺は、

 屋台の前に立つ人々を観察する。


 直接の敵意はない。

 だが――

 警戒がある。


「聞いたか?」


「地図士が、

 街道を勝手に……」


「教会が、

 危険視してるらしい」


 小声が、

 風に乗って流れてくる。


 地図が、

 補足する。


【噂内容:改変あり】

【危険度:誇張】


(……やっぱり)


 リーナが、

 低く囁く。


「“調整”の部分、

 全部削られてる」


「残るのは、

 “勝手に道を弄る男”ね」


 俺は、

 苦笑した。


「分かりやすい悪役だ」


 通りの先。


 掲示板に、

 新しい張り紙が出ている。


 ――注意喚起。


「地図士による

 未承認街道の使用は、

 重大な混乱を招く恐れあり」


「教会監察部」


 署名付きだ。


「……公式だわ」


 リーナが、

 舌打ちする。


「噂を“事実”にするやり方」


 俺は、

 地図を開く。


【噂伝播路線:可視化】


 街の中に、

 細い線が無数に走っている。


 酒場。

 市場。

 宿。


「……噂も、

 道なんだな」


「ええ」


 リーナが、

 即座に理解した。


「人から人へ、

 最短で走る情報の道」


 俺は、

 ゆっくりとペンを取る。


「……止める?」


「止めたら、

 逆効果よ」


 彼女は、

 首を振った。


「“隠蔽”だって、

 また言われる」


 俺は、

 頷いた。


「じゃあ――

 調整する」


【対象:噂伝播路線】

【方式:減衰・分岐】


 線を、

 少しだけ“歪める”。


 真っ直ぐ届いていた噂が、

 途中で枝分かれする。


 過激な部分ほど、

 減衰する。


 同時に、

 別の情報が混ざり始めた。


「……あれ?」


「地図士が、

 街道の治安を

 良くしたって……」


「荷馬車が、

 前より安全に……?」


 酒場の空気が、

 微妙に変わる。


 だが――

 完全に好転はしない。


 リーナが、

 小さく息を吐く。


「これ、

 時間がかかるわ」


「分かってる」


 俺は、

 遠くを見る。


「だから――

 直接見せる必要がある」


「実例を?」


「ああ」


 地図が、

 新しい表示を出す。


【候補地:三】

【条件:影響可視】


 その中の一つが、

 赤く点滅していた。


【問題発生中:未調整街道】


「……なるほど」


 リーナが、

 表情を引き締める。


「放っておけば、

 “地図士が止めなかったせい”に

 される場所ね」


「だから、

 先に行く」


 俺は、

 歩き出す。


「噂より早く」


 背後で、

 人々の声が混ざり合う。


 疑念。

 期待。

 不安。


 すべてが、

 “道”となって広がっていく。


 俺は、

 その上に――

 新しい線を、

 引こうとしていた。



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