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レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
街道調整編

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第17話 最初の衝突

 祠の外で、

 風が“逆流”した。


 ただ吹くのではない。

 こちらへ、引き寄せられている。


 地図が、短く警告を鳴らす。


【調整路線:不安定】

【干渉増大】


「……来る」


 リーナが、即座に判断する。


「説得が通じないなら、

 次は“確保”よ」


 教会監察官が、

 法衣の袖を翻した。


「抵抗する意思があると判断します」


「身柄を拘束――」


「させない」


 俺が言うより早く、

 貴族の護衛が動いた。


 剣を抜き、

 俺たちを囲もうとする。


 老人が、

 杖を強く床に打ち付けた。


「……愚か者どもが」


 祠全体が、

 ぎしりと軋む。


【認識遮断:局所】


 次の瞬間。


 祠の中の配置が、

 ずれた。


「……っ!?」


 護衛の一人が、

 空振りする。


 そこに、

 リーナの魔法が飛んだ。


「足止め、限定結界!」


 床に光の陣が広がり、

 護衛たちの動きが鈍る。


「攻撃しないで!」


 リーナが、

 鋭く叫ぶ。


「ここは“見せる場”よ!」


 俺は、

 ペンを握り直す。


(……衝突は避けられない)


 だが、

 殺す必要はない。


 俺は、

 地図に線を引く。


【描画:調整拡張】

【対象:祠周辺】


 薄い線が、

 空間に重なった。


 すると――

 貴族側の護衛と、

 教会側の護符が、

 同時に鈍る。


「……魔力が、

 通らない?」


 監察官が、

 目を見開く。


「遮断じゃない」


 俺は、

 静かに答えた。


「過剰な干渉だけを、薄めた」


 剣は振れる。

 魔法も使える。


 だが、

 “決定打”にならない。


「馬鹿な……!」


 貴族が、

 後退る。


「これは、

 戦場そのものを……」


「調整した」


 リーナが、

 淡々と言った。


「あなたたちが

 本気を出せないように」


 老人が、

 低く笑う。


「これが、

 管理されぬ道じゃ」


「力を持つ者ほど、

 思い通りにできん」


 教会監察官が、

 歯噛みする。


「……危険すぎる」


「ええ」


 俺は、

 はっきり認めた。


「だから、

 独占させない」


 沈黙。


 祠の空気が、

 重くなる。


「……退く」


 最初に言ったのは、

 監察官だった。


「今日のところは」


 貴族も、

 忌々しげに頷く。


「だが、

 このままでは済まん」


 二つの勢力が、

 それぞれ部下を連れ、

 距離を取る。


 完全な撤退ではない。

 様子見だ。


【外部干渉:低下】

【衝突:回避】


 祠に、

 静けさが戻る。


 リーナが、

 大きく息を吐いた。


「……初戦、

 なんとか無血ね」


「でも――」


 俺は、

 地図を見る。


「次は、

 もっと狡猾に来る」


 老人が、

 ゆっくりと頷いた。


「地図士を、

 力で押さえられぬなら」


「世論と、噂で来るじゃろう」


 外の風が、

 再び向きを変えた。


 だが、

 今度は逆だ。


 調整された道が、

 静かに、

 “噂”を運び始めている。


「……始まったな」


 俺は、

 呟いた。


 剣でも、

 魔法でもない。


 認識の戦いが。



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