表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった  作者: あめとおと
街道調整編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/31

第13話 道の先に、あるはずのない集落

 再開された旧街道は、

 思っていたよりも、ずっと“普通”だった。


 石畳は古いが、歩きやすい。

 勾配も緩やかで、

 かつては多くの人が行き交っていたのだろう。


「……ねえ」


 息を整えながら、リーナが言う。


「この道、

 本当に“閉じられてた”の?」


「閉じられてた」


 俺は即答した。


「少なくとも、

 今の地図には存在しない」


 地図が、静かに補足する。


【認識状態:個人限定】

【一般認知:欠落】


 少し進むと、

 木々の間が、ふっと開けた。


「……え?」


 思わず、声が漏れる。


 そこには、

 小さな集落があった。


 十数軒ほどの家。

 畑。

 井戸。


 どれもが、

 “生活中”の気配を持っている。


「……人、住んでる?」


 リーナが、警戒を崩さずに言う。


 俺は、地図を確認する。


【集落名:未登録】

【人口推定:不明】

【存在状態:部分認識】


(……部分、認識?)


「普通じゃない」


 俺が言うと、

 リーナは静かに頷いた。


「ええ。

 結界でも、幻でもない」


「じゃあ……何だ?」


 答えは、

 集落の入口に立つ石碑にあった。


 苔に覆われた文字。


 辛うじて、読み取れる。


「……“道が閉じられし時、

 我らもまた、

 ここに留まる”」


 リーナが、息を吸う。


「……隔離、された?」


「自分たちで、かもしれない」


 そのとき。


 集落の奥から、

 人影が近づいてきた。


 老人だった。


 深い皺。

 杖をつき、

 こちらをじっと見ている。


「……久しぶりじゃな」


 老人は、

 懐かしむように微笑んだ。


「地図士よ」


 心臓が、跳ねる。


「なぜ、分かる?」


「分かるとも」


 老人は、

 俺の足元――

 再開された道を見た。


「その道を、

 もう一度、

 “道”として歩ける者は、

 そう多くない」


 リーナが、一歩前に出る。


「あなたは、

 何者ですか」


「この集落の、

 最後の“案内役”じゃ」


 老人は、ゆっくりと振り返る。


「来なさい」


 集落の中へ、

 自然に誘うような仕草。


「話すべきことが、

 山ほどある」


 地図が、警告とも案内ともつかない表示を出す。


【危険度:低】

【重要度:極高】


(……罠、ではなさそうだ)


 俺は、リーナを見る。


「どうする?」


「……行くしかないでしょ」


 彼女は、小さく笑った。


「もう、

 引き返せる段階じゃない」


 二人で、集落に足を踏み入れる。


 瞬間――

 背後の森が、

 音を失った。


「……静かすぎる」


 リーナが、囁く。


 地図が、静かに表示を更新する。


【外部追跡:遮断】

【理由:認識不能領域】


 追ってきていた者たちは、

 この場所を“見失った”。


 だが、それは――

 安心を意味しない。


 集落の中心。


 古い祠の前で、

 老人が立ち止まった。


「ここはな」


 杖で、地面を軽く叩く。


「**“消えた道の、行き止まり”**じゃ」


 俺は、息を呑んだ。


「行き止まり?」


「そう」


 老人は、

 ゆっくりと振り返る。


「そして――

 地図士が、

 必ず通る場所でもある」


 祠の奥。


 わずかに開いた扉の向こうから、

 冷たい風が吹き抜けた。


 地図が、

 これまでで一番、はっきりと告げる。


【次段階:到達】

【警告:選択不可】


(……選べない、だと?)


 ここまで来て。


 もう――

 進む以外の道は、残っていなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ