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図書室の幽霊



 マーガレット様を追いかけ図書館へ着くと、小声でマーガレット様が誰かと話す声が聞こえた。

「お待たせして申し訳ありません、マーガレット様。」


「……ケニー。思っていたより早かったわね。」


 図書館にはマーガレット様だけで、他には誰の姿もなかった。

「話し声が聞こえたと思ったのですが。どなたかと、お話してらっしゃったのですか?」


「……あなたには関係ないでしょ。」


「失礼しました。」


 マーガレット様を怒らせてしまっただろうか……。

「マーガレット様。せっかく他に誰もいないことですし、午後は図書館で勉強するのはどうでしょう。」


「……勉強道具は教室にあるのだけれど。」


「なにも歴史や計算を学ぶだけが勉強ではありませんよ。民の上に立つには民の気持ちを知らなくてはなりません。そして民の気持ちを知るには物語を読むのが一番です。」


「……わかったは。それで、好きな本を読んでもいいのかしら?」


「好きな本を……と言いたいところですが。紙は貴重で高価なものなので本は貴族が書いたものが多く、平民が書いたものはほとんどありません。そうですね……ヴィンス・ジェファーズ様の【試練】はいかがでしょう?」


「ヴィンス・ジェファーズ?知らない名前だわ、有名な作家なの?」


「この方はマーガレット様の父上と同じ平民の出で、戦での活躍が認められ貴族になった方です。」


「父上と同じ……」


「この【試練】はヴィンス・ジェファーズ様の人生を描いた自伝で平民の頃の生活や貴族になってからの苦労などが記されています。」


「……貸してちょうだい。」


 マーガレット様は本を受け取ると、元いた椅子に座り黙読し始めた。

「……………………ケニー。あなたも何か読んでなさい。近くに立たれてたんじゃ集中できないわ。」


「かしこまりましたマーガレット様。」


 俺は読んだことの無い自伝や伝記を数冊手に取りマーガレット様から少し離れた場所へ座った。

「……………………………………」


 しばらく静かな時間が続き、突然マーガレット様が席を立った。

「どちらへ行かれるのですか?」


「……お手洗いよ」


 マーガレット様はそう言い残し部屋を出ていった。その時マーガレット様が扉を閉めた衝撃からなのか本棚から一冊の本が落ちた。


 (こういうのって無視できないよな……タイトルは【本の虫】?どういう内容なんだ……ってなんだこれ空白じゃないか。)


 パラパラとめくり隅々まで確認していると初めのページに文字が浮き上がり始めた。

 (はじめまして私の名前はオリヴィア・プライス。あなたがケニー・ボーマンね?)


 突然の出来事に少し驚いたが、魔法のある世界ならこういうこともあるかと、納得することにした。

「どうして俺の名を?」


 (マーガレットがいつも話してくれるから)


 図書室の前で聞こえた声はマーガレット様のもので、この本と話をしていたのか。

「マーガレット様と仲良くしていただいてありがとうございます。」


 (本にお礼を言うなんて、マーガレットと同じで変わった人ね。)


 文字だから、よく分からないが。なんだか少し笑われた気がした。


 (そんなことよりケニー。マーガレットがトラブルに巻き込まれてるというのはご存知?)


「もちろん知っております。そしてできることなら解決したいとも。」


 (そう、だったらあなたは知っておくべきね。)


「何をですか?」


 (もちろん、トラブルの真相をよ。)


「なぜ、あなたが知っているのですか!?」


 (マーガレットがね……ほら私って本じゃない?図書館に入ったら誰もいない場所で一人話してる女の子がいたらどう思う?)


「…………見えない何かがいる……ですかね。」


 (……そうなのよ。それからすっかり使われなくなっちゃって。それ以来、秘密の話をするにはうってつけの場所になったってわけ。)


「……そんなことが。オリヴィア様、どうかトラブルの真相をお聞かせください。」


 (そ……その前に。もう一回だけ名前呼んでくれないかしら。お……オリヴィアって……)

 

「?」


 (だ……だってね!男の子に名前呼ばれるのなんて久しぶりなんだもの!お願い!!)


「お……オリヴィア様。」

 

 (呼び捨てで!)


「オリヴィア!俺に全部教えてくれ!」


 (うん!!)


 俺がオリヴィア様から情報を聞き出すのに必死になっていると「ガラガラガラ」と音を立てながら図書室の扉が開いた。

「あ……」 (あ……)


 

 

  


 


 


 

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