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第17話 薔薇園の怪しい招待状!? 探偵部、秘密のお茶会に潜入ですの!

昼休み、探偵部部室。

紅茶の香り漂う中、茜が「ちょっと聞いて!」とドアを勢いよく開けた。


「これ! 机に置いてあったの!」


封筒は真紅の薔薇の封蝋で閉じられている。

封蝋には金の細工で“R”の文字。


「ラーメン……じゃないよね」


「雪、こんな高級そうな封筒にラーメンはないですの!」


開けると、中から厚手のカード。

美しい筆記体でこう書かれていた。


『日曜午後三時、赤き薔薇の奥でお待ちしています。

ドレスコード:華やかに。

——主催者』


「赤き薔薇の奥……って、あの旧館裏の薔薇園じゃない?」としおり。

薔薇園は立入禁止区域。けれど昔から“秘密のお茶会”の噂が絶えない場所だ。


「こんなの行くしかないじゃないですの!」

真白が目を輝かせる。


雪は腕を組んでため息をつく。

「行くのはいいけど、立入禁止だよ。正体不明の主催者ってのも怪しいし……」


だが結局、探偵部全員一致で——潜入決定だった。



日曜までの数日間、部員たちはお茶会用の衣装を用意することに。


「華やかに、ってどのくらい?」と茜。

「ティーサロンくらい?」と雪が提案するも、真白は首を振る。


「華やか=社交界デビュー級ですの!」


その結果——

•真白:フリルたっぷりのクリーム色ドレス+羽根付き帽子

•茜:落ち着いたラベンダー色ワンピ+小花の髪飾り

•しおり:水色のドレスに短いボレロ、手袋付き

•雪:無難な白ブラウスとスカート……のはずが、真白に押し切られ、赤リボンつきのロングドレスへ


「ねえこれ、歩きにくいんだけど」

「探偵の機動力を捨てる覚悟、それが真のおしゃれですの!」


そんな掛け合いをしつつ、4人は薔薇園潜入作戦を練った。

入園ルートは旧館横の細道を抜ける裏ルート。

見張りは生徒会の巡回が午後二時に一度だけ——そこを狙う。


準備は万端。

日曜の午後、探偵部はついに立入禁止の薔薇園へと向かうのだった——。


旧館裏の細道は、しっとりと湿った空気に包まれていた。

日曜の午後、学園は静まり返っている。

ただ、道の先からは甘く濃厚な香りが漂ってきた。


「これ……薔薇の香りですの!」


細道を抜けると、視界いっぱいに深紅と淡桃色の薔薇が広がった。

アーチ状の入口をくぐると、花々が咲き乱れる小径の奥に、白いガーデンテーブルが見える。


そのテーブルには——仮面の人物が座っていた。


「ようこそ、探偵部の皆さま」


声は低めで落ち着いている。

仮面は白磁のように滑らかで、目元だけを隠している。

衣装は燕尾服風だが、背筋はすらりと伸び、動きに無駄がない。


「本日はお越しいただき感謝します。

どうぞ、座ってください。紅茶はダージリン・ファーストフラッシュを用意しました」


茜が小声で「なんか本格的だね……」と呟く。

雪は警戒しつつも椅子に腰掛ける。


テーブル中央には、銀色の小箱と一枚のカード。


『この箱を開けられたら——あなたたちを正式にご招待します』


「挑戦状、ですの?」


仮面の人物は微笑むように口元をわずかに動かした。


「そうです。探偵部の皆さんの観察力と推理力を拝見したくて」


しおりが箱を手に取り、鍵穴を覗き込む。

「……鍵じゃないみたい。ダイヤル式? でも数字じゃない」


雪も覗き込むと、そこには小さな薔薇の刻印が並んでいた。

色は赤・白・黄・ピンクの4種類。


「薔薇の色の順番を揃えろ、ってこと?」


「おそらくですの。でもヒントはどこですの?」


テーブルの上、カップの並び、薔薇園の花壇、主催者の胸元のブローチ……

全てがヒントになりそうで、どれも決定打に欠ける。


「時間は15分です。では——始めましょう」


主催者の声と同時に、薔薇園に微かな風が吹き抜けた。


雪は箱をくるりと回し、裏側や底も確かめる。

だが特に細工はない。ただ、表面の薔薇の刻印が微妙にくすんでいる。


「ねえ、この赤い薔薇だけ、少し擦れた跡があるよ」


「本当ですの。触られた回数が多い証拠……つまり、この色がスタートかもですの!」


真白が勢いよく推理を展開する。

しかし茜は首を傾げた。


「でも、残り3色の順番は? 適当にやっても24通りあるよ」


しおりはテーブル上のティーセットをじっと見ていた。

ティーカップのソーサーには、小さな花の模様——赤・白・黄・ピンクの順に描かれている。


「これがヒントかもしれません」

しおりはダイヤルをその順番に合わせる。

カチリ——何も起きない。


「外れですの……」


雪が花壇を見回すと、あることに気づく。

「待って。この薔薇園、花の配置がおかしい。向こうの花壇だけ、赤と白が逆になってる」


4人は小走りでその花壇へ行くと、立札に小さくこう書かれていた。


“順序は逆さに見よ”


「つまり、さっきの順番を逆にするんだ!」

茜が戻ってダイヤルをピンク・黄・白・赤にセットする。


カチッ——銀の小箱の蓋がゆっくりと開いた。


中には、金色の鍵と、もう一枚のカード。


『お見事。あなたたちは条件を満たしました。

この鍵で、薔薇園奥のアーチを開け、次の会場へお進みください』


「次……?」

雪たちは顔を見合わせる。


仮面の主催者は立ち上がり、アーチの方を指差した。

「さあ、第二ラウンドです」


アーチを開けると、そこはさらに奥まった中庭だった。

一面の白薔薇、その中央にもう一つのテーブルが用意されている。

先ほどのよりも豪華で、三段スタンドには色とりどりのケーキやマカロンが並んでいた。


仮面の人物がゆっくりとそれを外す——。


「やっぱり……あなたでしたの!」


現れたのは、学園茶道部の部長・**天羽あもう 礼華れいか**先輩。

優雅な微笑みとともに、私たちへ軽く一礼する。


「探偵部の皆さんの観察力を確かめたかったのです。

来月、私たち茶道部と生徒会が主催する**“薔薇園合同お茶会”**に、特別ゲストとしてお招きするために」


雪は呆れたように肩を落とす。

「そんなことのために立入禁止区域に招待状送りつけて、謎解きまでさせたんですか」


「普通に言えば断られるかと思いまして。探偵部の皆さんは“面白そうな依頼”にしか興味を示さないと聞きましたから」


真白はなぜか胸を張った。

「それは間違ってませんの!」


「それに——観察力と推理力はお茶会でも大切です。

客人の表情から好みを見抜き、最適な茶器と菓子を選ぶ。

あなた方はそれに必要な資質を備えていると、今回確信しました」


礼華先輩は私たちの前に席を勧め、ティーポットを傾けた。

黄金色の紅茶がカップに注がれ、ふわりと香りが立ち上る。


「それでは、ようこそ薔薇園のお茶会へ——」



エピローグ


こうして、怪しげな招待状騒動は、華やかなティータイムで幕を閉じた。

茶道部との合同お茶会への出演が決まった探偵部は、スコーンを頬張りながら早くも次の推理イベントの話題で盛り上がる。


「次は何ですの? ケーキの切り分け最適化問題とか?」


「それ、ただの数学だよ真白」


——こうしてまた、日常のようで非日常な探偵部の一日が過ぎていった。

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