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第11話 探偵部、無言のメッセージを解読せよ!

聖ルミナス女学院の昼休み。

窓の外には初夏の光がきらきらと踊り、

お嬢様たちはカフェテラスで優雅に紅茶を傾けていた。


 


——その中で、探偵部は部室のテーブルを囲んで、プリンの取り合いをしていた。


 


「私が買ってきたんですのよ!? ひとくち、ひとくちだけですの!!」


「だーめ! 食べ物の恨みは怖いんだぞー!」


「風が囁いてる……“プリンは共有すべきではない”って……」


「待って、雪!? なんで無言でスプーン持ってんの!?」


 


プリン戦争の真っ只中、一通の封筒が部室のドアの隙間からすっと差し込まれた。


 


「……なにこれ?」


 


封筒には何の名前も書かれていない。

けれど開けてみると、中にはシンプルな——けれど不気味な手書きのメモが入っていた。


 


『図書室に、幽霊が出ます。助けてください』


 


「な、なにこれ……」


「こわっ! ホラー系!? ついに探偵部も怪談調査系に突入ですの!?」


「風がざわめいてる……“真夏の怪奇特集のはじまりだ”って……」


「風よ、静まって!!」


 


メモの隅には、小さく押された図書委員の印章。

名前は書かれていないが、署名代わりのそれにより——依頼人の正体が明らかになった。


 


「……紫藤ことねさん?」


雪が名前を読み上げた。


 


聖ルミナス1年生、図書委員。

クラスでも有名な“寡黙で真面目な子”で、口数が極端に少なく、

先生とも筆談でやりとりしているという噂まである。


 


「そんな子が……幽霊の調査を依頼してきたってこと?」


「ていうか、幽霊信じてるの? 真面目なタイプっぽいのに……」


「逆に、よっぽどの理由があるのかも?」


 


4人は顔を見合わせた。


——これは、ただの怪談ではないかもしれない。


 


こうして、探偵部は“幽霊メモ”の謎を解き明かすべく、図書室へと足を運ぶことになった。


放課後、図書室。


薄暗い室内には、静かに本をめくる音だけが響いている。

カーテン越しの夕日が棚の隙間から差し込み、床に柔らかな影を作っていた。


 


その奥——ひとりの少女が、机に座っていた。


銀縁のメガネに、整ったボブカット。

白い肌に整った顔立ち。そしてどこか影のある、寂しげな瞳。


 


「……紫藤ことねさん?」


雪が声をかけると、少女はぴくりと肩を揺らした。

でも何も言わず、静かに頷くだけだった。


 


「あの、お手紙……読ませてもらいました」


雪がそう続けると、ことねは小さく何度も頷いた。

そして、おもむろに胸元から取り出したのは——もう1枚のメモ用紙。


 


——『音がするの、毎日、決まった時間に。誰もいないのに。』


 


「……まさか、その音って、“本棚が勝手に動く”とかじゃないよね?」


真白が思わず尋ねると、ことねは、またコクンと頷いた。


 


「ぎゃあああ!? 完全にホラーですの!! 私、そういうの苦手ですの!!」


「大丈夫真白、ホラーってより謎解きよ。うん、きっと……ね? きっと……!」


 


「風は……“それは誰かの足音かもしれない”って……」


「その風、ちょっと怖すぎるよしおりさん……」


 


静かな少女が伝える、“声にならない依頼”。


探偵部はその“音の正体”を探るため、図書室の見取り図を手に、本格的な調査に乗り出すのだった——!


探偵部の4人はことねの証言を元に、再び図書室に足を運んでいた。

ターゲットは「毎日決まった時間に鳴る音」。つまり、その時間帯に潜入して観察しようという作戦である。


 


「午後4時20分から、毎日……音がするんだって」


雪が時計を確認しながら囁く。


 


「でも“幽霊”が音を鳴らすって、なんかロジカルじゃありませんわよね……」


「幽霊が時間守るの、逆に勤勉すぎない?」


 


「風が言ってるよ……“規則的な怪奇現象には、だいたい規則的な理由がある”って……」


「風、やけに真面目じゃん!!」


 


4人がじっと耳を澄ませる中——


 


——カタン。


 


静かな音が、図書室の奥から響いた。


 


「出たっ!? 今の……!!」


「位置、右奥の書架のあたりですわ!!」


 


探偵部は慎重に足を運び、音のした棚へと向かう。


そこは滅多に使われない「古書コーナー」。埃をかぶった分厚い本が並び、静寂の空気が漂っている。


 


「うわ……こっち、なんか涼しくない?」


「冷房の風が届いてない場所なのに……ってことは」


 


——ギィ……


 


雪がそっと棚を押すと、わずかに“ずれた”。


 


「えっ……これ、動くんじゃ……?」


 


しおりが静かに棚の裏に手を差し込むと、小さな金属音がした。


 


「……あった。滑車。この本棚、移動式なんだ」


「つまり……“毎日決まった時間に、本棚が自然に動いてた”ってことですの!?」


 


「でも、なんで時間決まってんの?」


「風が言ってる……“足音じゃない、清掃ロボだ”って……」


「風有能すぎない!?」


 


数分後——

真白が職員室でこっそり聞き出してきた情報で、真相が判明する。


 


「毎日、午後4時20分になると、自動で作動する“空調点検ロボ”が通路を通るんですって!」


 


「え、それって……」


「通った衝撃で、緩んだ棚の滑車が微妙に動く→“カタン”って音がしてたってことみたいですわ!」


 


「つまり、幽霊の正体は……ロボットの副産物!」


「便利な現代社会の弊害だったか……!」


 


「でも、それを“幽霊の音”だと思ってずっと怖がってたのが、ことねさんなんだね……」


雪はことねと図書室で向かい合っていた。


他の部員は見守るように後ろから静かに見ている。


 


「幽霊の正体……わかりました。音の原因も、全部」


ことねは、そっと手を重ねて頷いた。ほっとしたような表情。


 


「……どうして、それを“幽霊”だって思ったんですか?」


雪の問いに、ことねは一瞬だけ迷ったが——

ペンを取り、メモ用紙にゆっくりと綴った。


 


——『わたし、夜の図書室が好きで、よく残ってたの。

でも、音がしてから怖くなって……誰にも言えなくて。』


 


——『でも、探偵部なら、笑わずに聞いてくれると思ったから。』


 


その言葉に、4人は思わず言葉を詰まらせた。


 


「ことねさん……」


「わたしたち、ちゃんと役に立てた?」


雪「ことねさん、これからも……何かあったら、いつでも頼ってください」


ことね(こくん)


——彼女は、無言で微笑んだ。

そして静かに、図書室の奥へと歩いていった。


「……ちょっとミステリアスだったけど、いい子だったね」

「また事件起きたら、相談に来てくれそうですの!」

「風が囁いてる……“また、すぐ何か起きる”って……」


いつもと同じ、でも少しだけ“新しい空気”を感じる放課後の部室。


探偵部の活動は、まだまだ続いていく——!


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