彼が振り返る
今更バレンタインのチョコでもないけど、付き合って丁度一年。この日が記念日なのです。
一応確認はしてみましたよ。その結果、チョコは要らないからご飯食べに行こうと言われたので、ランチ込みの街ブラの最中なのです。
朝から機嫌が良さそうな空が、私の厚手のコートを邪魔者と嘲笑い、仕方なしにヤレヤレという感じで脱ぐと、即座に隣の彼から奪やれて、笑い者のコートは今は彼の腕の中です。
「どうかした?」
私はいつものようにさり気なく聞いてみた。
「あ、いや、何でもない」
「じゃあ、何故?」
翌週のお昼休み。給湯室でA子とB子に話をしてみた。
私「あのね、ちょっと聞きたいんだけど」
二人「何?」
私「例えばさあ、一緒に歩いてて振り返ってばかりいる人をどう思う?」
A子「何、それ?」
私「うん、だからね、後ろばかり振り返るのよ」
B子「誰が?」
私「彼氏が」
B子「へえ、どうしてなんだろ?」
私「それが分からないのよ。聞いてみても、いつも別にって答えるだけだし」
二人が顔を見合わせて、そして表情をパッと輝かせた。
A子「分かった!」
B子「なに、なに?」
A子「元カノに見られていないか常に確認しているから」
B子「あははは、あり得るあり得る〜」
私「いや、それは無いと思う。というか、私が初カノみたいだし」
A子「えー、そうなの? ちゃんと頂きますって手を合わせたりした?」
私「・・・・」
B子「じゃあ、実は霊能者で、悪霊が付いて来てるんじゃないかと怖がってるから」
A子「そういうの視える人いるよねえ」
B子「いるいる。あのね、悪霊って昼間も普通にあるいてるんだってね。だから、それなんじゃないの?」
私「霊の話したことないから、多分、違うと思うけど」
A子「じゃあ、はいはーい!」
B子「はい、A子!」
A子「祖先が忍びの者で、彼氏は現世に一人だけ生き残ったその末裔だから」
私「末裔だから背後からの手裏剣にきをつけてるってこと?」
A子「当たりーーー」
二人「爆笑」
A子「私が思うに、祖先は伊賀者だな」
B子「えー、甲賀者じゃないの?」
私「うーん」
B子「ならば、実は国際連盟のスパイで命を狙われてるから」
A子「ゴルゴ13から?」
B子「そうそう、絶対それだからー!」
A子「間違いない」
私「もう、いい」
それから私の彼氏を見る目が変わったことは言うまでも無い。