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明治日本と金ぴかアメリカ!? 現代日本のkawaiiお願いします  作者: Rj
キーキーうるさい車輪は無視できない
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呪いには勝てない

 エレンは仕事帰りに高等学校時代の友人、フローレンスと待ち合わせファッショナブルなショッピングエリアとして知られるレディーズ・マイルに来ていた。


 14丁目から23丁目のブロードウエイと6番街を中心に裕福な人達が買い物を楽しむ地区になっていて、最新のファッションを身にまとった人達を見ることができる場所として知られていた。


 2人はアーチェリー・クラブのメンバーの出産祝いを買おうと店にむかっていた。3月に入っても寒さの厳しい日がつづいているが日差しの強さに春を感じる。


「ルイス! 久しぶり」


 エレンは幼馴染み、ニエベスの夫だったルイスの姿を見かけ思わず声をかけていた。


「本当に久しぶりだね、エレン。元気そうで何よりだ。そうだエレンは妻に会ったことがなかったよね」


 ルイスは彼のとなりにいる妻をエレンに紹介した。


 エレンはルイスを見かけ反射的に声をかけたので彼のとなりにいた女性に気付いていなかった。


 ルイスが再婚したことは知らなかった。2人がほほえみながら視線を合わせる姿を見て、ルイスが再婚をし幸せにしているのが一目で分かった。


 妻にとって亡妻の友人などわずらわしいだけだろう。


「ルイスも元気そうでよかった。お邪魔しちゃってごめんね」


 お互いの近況を軽く報告しあった後、にこやかに別れの挨拶をしさっさと退散した。


「ニエベスの夫だったルイスよね?」


 フローレンスの記憶力の良さがうらめしい。何を言いたいのか分かるので余計なことはいわない。


「再婚したんだ。男性は再婚するのが早いわよね。喪が明ける半年で再婚する人もめずらしくないし。エレンはわざと彼に連絡をとらなかったの?」


 ふれられたくない過去の話をだされるのを覚悟する。


「私がルイスに連絡をとる必要なんてないじゃない。それに彼に会うとニエベスのことを思い出してつらいし」


「――今だから言えるけど、あの冬はあなたが早まったことをしないかとものすごく心配した。身近な人を立てつづけに亡くしてすごく危うかった」


 思わぬことをいわれエレンは反応できずにいた。


「不謹慎だけど私はエレンと彼の仲が発展してほしいと思ってた。あなたを失いたくなかったから彼があなたを引き留める存在になってくれたらと思った。


 それに一緒に悲しみを乗り越えるだけでなくエレンの恋を叶えてほしいという気持ちもあったし」


 やはりそこを突いてくるかとエレンは苦笑する。


「フローレンスはこっちが忘れてほしいと思ってることを覚えていて本当にいやになる。


 好きな人に好かれない呪いをかけられてる私の傷をえぐるようなこと普通いわないよね?」


 フローレンスがふふっと笑うと「付き合いの長い友達ってそういうものでしょう?」したり顔でいった。


 エレンはニエベスの夫だったルイスと、ニエベスが彼の婚約者として顔を合わせる少し前に出会っていた。


 エレンはフローレンスにさそわれ参加した社交クラブのパーティーでルイスと知り合った。


 ニエベスとエレンは好みの男性のタイプが似ていた。小さい頃から2人で同じ男の子を好きになり、どちらも好きな男の子から選ばれない「かわいそうな者」同士だった。


「エレンを好きにならないなんて信じられない。見る目ないよね」


「ニエベスの方が絶対かわいいのに、なんであの子の方がいいの?」


 好きな男の子が他の女の子を選ぶたびに傷をなめあうやりとりをした。


 結婚適齢期になるとニエベスはエレンによく釘をさした。


「エレンは結婚せず教師として一生独身でいるんでしょう? もし同じ人を好きになっても遠慮してね。私は結婚して幸せになるんだから」


 言葉だけを聞くと嫌な女だが、小柄で童顔、かわいい容姿をしているニエベスに軽やかに言われると「仕方ないな」と思わされた。


 エレンはルイスがフロリダから来たと聞き、ニエベスの親戚がフロリダにいてよく話を聞いていたのでフロリダのことで話がはずんだ。


 日に焼け、淡い青灰色の瞳が印象的なルイスはエレン好みだ。エレンは生まれも育ちもニューヨークなのでぜひ街を案内したいと舞い上がった。


 お互いの予定が合う2週間後に一緒に出かけることになり心待ちにしていると、ニエベスがフロリダみやげを持ってエレンに会いにきた。


 フロリダにいる親戚のお見舞いに行っていたニエベスの話が一段落したところでエレンはルイスのことを話そうと思っていた。


「実はね婚約が決まったの」うれしそうにニエベスが言った。


 ニエベスがフロリダに行く前に気になる男性がいるといった話や婚約について何も言っていなかったので、早く話を聞かせてとニエベスをせかした。


「父がフロリダの取引先の人との婚約を決めたの。彼がニューヨークで仕事をすることになって、私と年齢も近いし仕事ぶりも安心できるといわれて」


 ニエベスの口から「ルイス」という名前がでた瞬間にそれがエレンがパーティーで会ったルイスのことだと分かった。


 よくある名前とはいえフロリダから来たばかりで、年齢や実家がフロリダにありカリビア諸国と砂糖やタバコ、ラム酒の取引をしているといった情報と一致する人は限られる。


 うれしそうにルイスとの婚約について話すニエベスが、


「エレンと私って好みの男性が似てるからエレンはルイスのことを好きになりそう。好きになったら絶対ダメだからね!」ウインクをし、からかうような調子でいった。


「そういうこと言われると、じゃあ好きになって奪ってやろうかなと思っちゃうけど」


 冗談で返すとニエベスが笑った。


「私がエレンを好きなのはそういうところ。調子よく笑わせてくれる。


 結婚したいってこれまでさんざん言ってきたけど、実際に婚約して結婚の話が具体的になるとちょっと怖気づいたの。ルイスとはまだ一度しか会ってないし。見た目が好みで初対面の印象も良かったけど、このまま結婚して本当に大丈夫なのかと考えちゃう。


 夫婦になって一緒に生活してみないと本当の意味で上手くやっていけるかどうかは分からないから心配しすぎないのとお母さんがいうけど、従兄のこともあって不安になってたの」


 ニエベスがフロリダにいった理由は、彼女の従兄が浮気をし激怒した妻に銃でうたれ親戚一同が混乱状態になったからだ。


「好き合って結婚しても上手くいかないとかよく聞くし。逆に親が決めた相手と上手くやってる人もいる。


 何とかなるぐらいの気持ちで結婚するのがいいような気がする。結婚してない私が言っても説得力ないだろうけど周りを見てそう思う」


 ニエベスがじっとエレンを見つめた。


「エレンって結婚に対して子供の頃から冷めてるよね。教師をしている叔母さんに憧れて教師として独身をつらぬく流行の生き方をしたいと言ってたし」


 ニエベスがエレンの性格について話をしている間、エレンはもしニエベスとルイスが婚約していなければ自分とルイスの関係が発展する可能性があったのかを考えた。


「ルイスが私を好きになることはないだろうなあ」と即座に思ったことに笑いそうになった。好きな人から好かれない呪いをかけられているからと、すっかりあきらめている。


「久しぶりに彼に会ってときめいたりしちゃった?」フローレンスがからかってきた。


 フローレンスのことは大好きだが人の古傷をえぐるのは許せない。


「それって自分のこと言ってるよね? 高等学校の時に好きだった男の子と偶然パーティーで会ったとこの間はしゃいでたし」


 エレンはささやかなお返しをした。

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