183杯目 頑張るあなたが好きだから
「ひーくんの夢を思い出したよ。」
「え!?それ気になる!」
「ひーくんは昔から料理で世界を笑顔にしたかったんだよ。」
「だからいつも飛翔さんの料理って美味しいんですよね。」
雪は転生前の飛翔の話をしていた。転生前は学校ではそれなりに明るかったものの、家族の仲は複雑なものだったという。昔は兄を優先的に育てており、弟であった飛翔と差別した教育をしていた。しかし、ある時からその地位が逆転した。兄が学校で暴行事件を起こしたからだという。飛翔は差別をしていた親に“自分の都合がいいように動く子供しか愛せないのか”と感じ、大学で一人暮らしをしていた。一方親は兄に積もりに積もった怨念などを晴らすように兄を異世界に転生しようとしたが、それを察知した兄によって飛翔が転生させられたという。雪はそれを転生先から見ていたため知っているという。
「でも飛翔の兄は…」
「死んだ。だからこの戦争は関係ない。」
「だけど…この戦争ぐらいの被害は出ましたよね…」
「いや…あれはまだマシだ。この戦争はもっとひどい。」
「とりあえず僕たちがどういう立ち位置になるのだろうか…」
「飛翔!お帰り!」
「飛翔が帰ってきたことだしどういう相手なのかをまとめようか。」
相手はいくつもある。西園寺家と東福寺家という派閥に朱雀家、白虎家などの守護貴族、さらに悪魔と天使の戦争などかなり多い。
「悪魔と天使!?」
「そんな戦争、私は望んでないぞ。」
「初音さん…あなたは追放されたんです。」
「私…天使長だよな…?」
「…あなたは悪くないわ。私がそう証明してあげる。」
「ただいま帰ってきました!」
「すいせい…ご苦労様。実は彼女に偵察させていた。残念だが、私たちの派閥は…もうじき…」
「…最初から分かっていたわ。ここを攻めているのはわかっている。」
「誰ですか!?」
「サーシャ、裏切り者はいない。だって結花が死んだと聞いてみんな悲しんでいたもの。」
「そうだ…あの天使は一生懸命尽くしてくれた…」
「あの子は飛翔と仲良かった…あんな形で亡くなるのは…」
「ゆりね、あなたは結花の死んだ状況を知っているの?」
「違う…あの子を殺した犯人を見たの。もちろん私たちではない…もっと別の誰かだった。」
「もしかして…私を襲った犯人も?」
「…おそらくそうよ。ここに人がいるのを知っているのは私たち以外いないはずだもの!」
「…なら殺すしかないのかな…」
「ただ殺すだけが答えじゃないと思う。」
「飛翔、どういうことだ?」
「話せばきっとわかってくれるよ。敵だって僕たちと同じでしょ?だから…きっとわかってくれる。」
飛翔がなぜそう考えるのか…それは昔の約束があった。