182杯目 苦い想いは消えるだろうか
「…久々に学食に着いたわね。」
「スイッチ入ってるわね。」
「だって、久々だから!」
「…ビショップ?大丈夫?」
学食に久々に入る飛翔たち、しかし飛翔はスイッチが入らない。大事な人を失った悲しみを乗り越えることはできるのか?
「ごめん…無理かもしれない…」
「…そうだよね。まだ悲しいままだもんね。」
「少しそっとしておいてあげましょう?飛翔、私たちがどうにかするから。」
「そうだね。」
「昔は生徒会長だからって結構悪さしたな…今となれば申し訳なかった…」
「…あの時って結局何がそうさせたんですか?」
「あれは好奇心だった。飛翔が止めてくれると思ってくれてたんだ…」
「飛翔さんも止められないですよ!」
「本当に申し訳なかったわ…でもマヨネーズは正義よ。」
「そうでしたか…」
「…あの子も見つかってないですよね…」
「心美ちゃんのこと?あの子は…」
「…サーシャ、隠れてないで出てきたら?」
「ありゃ、バレちゃった…俊一と心美も一緒だよ。」
「お久しぶりです!」
「…飛翔さん…あんなに落ち込んで…」
「あぁ…私から話すね…」
真音はサーシャたちにこれまで起きたことを話した。そして、生徒会たちと同盟を組んだこと、戦争に参加することを話した。
「結花さんって…あの結花さん!?…」
「信じられない…殺されるべきじゃないのに…」
「私の魔力が戻れば…蘇生できるのに…どうして…」
「一番悲しんでいるのは飛翔と初音だと思うの。」
「そりゃ天使の仲間ですから…」
「…飛翔。私たちと一緒に料理しよう?」
「…結花が死んでから抜け殻になってしまったんだよね。」
「次は何を失う…って考えるとちょっと悲しいよね。」
「ノエル、飛翔の相談相手を。…厨房!もうすぐアレできる?」
「あぁ!とてもいい感じだ。飛翔の心に響いてほしい。」
みんなが作っていたのは豚汁だった。昔から飛翔が得意な料理で、大好きな料理だった。塩にぎりと一緒にテーブルに出した。
「ひーくん!一緒にご飯にしよっか!」
「あぁ。」
「ビショップ…?」
「…あぁ、美味しいよ…ここまで美味しいのは久しぶりだよ…」
「本当に?」
「本当でしょ…飛翔の目を見ればわかるわ。」
「本当だ!泣いてる。」
「ここまでなるのには理由があるんだよ。みんな心を込めて作ったよね?」
「当たり前じゃない。いつもそうだけど。」
「そう、真心を込めたからここまで美味しい料理ができた。心に響く料理を作ることができた。これが今重要だと思うの。」
「…飛翔、思い出した?」
「…ありがとう。もう大丈夫だよ。」
無くなったものを引きずるのも一つの選択、それを乗り越えて新しい道へ進むのも一つの選択。大事なのはその選択で迷う時にもらう助言なのだろう。