181杯目 涙を僕らの力に変えて
「飛翔、今回の件で犠牲者が出てしまった…申し訳ない…」
「天使長…いや、初音さんは悪くない。もちろん京子も真音も…雪もさくらもみんな悪くない。ただ…運が無かっただけなんだ。」
「…成長したな。だったら…覚悟はできているよな?」
「…やるしかないんだ。僕たちがこの悲しみを終わらせなければいけない…」
戦禍は飛翔たちのいる大学の学舎まで広がった。食糧を得るために玄関へ向かった結花は何者かの襲撃を受けて絶命した。飛翔と初音は玄関の仲間のもとへ大急ぎで飛び立った。
「とうとう広がったのね…」
「おい、出てこい。」
「私たちか?」
「やっぱり!生徒会の面々ですね!」
「…ちょっと待って、私ですよ!サーシャです!」
「サーシャ、その後ろ。」
「…おーい!サーシャ、ここは離れよう!」
「俊一!…そうですね、お騒がせしました。」
「…ちょっと待って、サーシャ…」
「行ってしまいましたね。」
「…生徒会の皆様はいったい…」
「あぁ、私は澪。それと…」
「みんないるよ〜?」
「…なぁ、教えてくれよ!お前らが結花を殺したのか!?」
「…ちょっと待って。えぇ…結花さん亡くなったの?ちょっと私たちで話させて?」
「は…はい…」
「…え、待って、誰か殺したの?」
「殺してない…はずなんだが…」
「だよね…」
「そもそもここは初めてなはずだが…」
「あ…京子か真音、ちょっとこっちに…」
「では、私が行きますね。」
「…ごにょごにょ…」
「あ、はい。この人たち殺してないですよ。」
「そうだ。私たちは隣の学舎を本拠地にしているのだが…先日破壊されたのでこっちの学食を新しい拠点にしようと思ってたんだ。」
「で、明日引っ越そうと思って来てみたんだけど…そっちは死人が出たのね…」
「そうなのよ…サーシャたちも一緒に同盟を組みたいの。」
「気持ちは受け取るよ…でも、この戦争は思っているよりも悲しくて…」
「思っているよりも馬鹿らしい…」
「それでいて単純で醜い…そんな感じなの。」
「…覚悟はできてるの?」
「私たちはいつでも。」
「…私は天使長だ。おそらく皆に迷惑をかけるだろうが…軍師なら任せていただきたい。」
「ありがとう。」
「…さて、この戦争の詳細だ。」
この戦争の原因は、魔王の後継者探しだ。西園寺家と東福寺家の亀裂や守護貴族問題などが重なって後継者がなかなか決まらない。加えて…一番の有力者が失踪したのもあるとのこと。
「なぜ失踪したのでしょうか…」
「それはわからないわ…でも、きっと答えは出るはずだわ。」
「…飛翔、あの子はきっと生き返る。大丈夫、私がどうにかする。」
確証もない言葉を突然かけられたが、この言葉をどれぐらい信じてよいのだろうか。だが、信じなければいけない…そう感じた。