179杯目 みんなと一緒なら
「今更だけど大学の学舎ってここだけだっけ?」
「残っているのはここだけよ。他の棟は行きたくても行けないから…」
「それなら確かめに行きたい。」
「はぁ…なら玄関に出てみるといいわ。きっと後悔することになるけど。」
飛翔は外に出た。しかし周りを見渡すと想像よりもひどかった。駅から続く大学正門への道にはがれきが積まれ、それにもかかわらず人同士が殴り合いをしている。一方大学の方でも校舎を壊して食料を得ようとする勢力が今にも襲おうとしている。飛翔はすぐに室内に戻った。
「どうだった?やっぱりあの勢力がいるよね…」
「そうだね。このままだと外に行けないよ…」
「…ずっと気になってたけど…飛翔はどうして外に行きたいの?」
「きっと太陽が見れるかもしれない。流れる川も青々とした山も見れるかもしれない…だから外に行きたい。」
「ひーくん、やめよう?」
「ダメだ。外は危険がいっぱいだ。」
「大丈夫、相手も話をすればわかるよ。きっと大丈夫だから。」
「…飛翔さん、わたくしと二人になりましょう。」
こうして飛翔と結花は二人で別の教室に向かった。結花は飛翔に考えがあるらしい。
「飛翔さん、外に出るつもりですか?」
「僕は外を見てしまった。だから悲しい事実を終わらせないといけない。」
「…戦争に参加するのですか?」
「その通りだね…」
「…やめて」
「え?」
「やめてください!戦争に参加しないでください!」
「どうして…」
「飛翔さんがいなくなれば…わたくし…」
「…ごめん。でもいつか終わらせないといけない。この戦争は…」
「その時になったらわたくしたちが一緒に戦います!だから…もう少しお待ちください…」
「…そうか…」
「それに、もう誰も失いたくないでしょう?」
飛翔には昔友だちがいた。しかし、戦争によって次々と亡くなった。だからこそ、最後に自分が生き残らないといけないという気持ちがあった。
「飛翔、結花、おかえりなさい。ちょうどご飯ができたから席について。」
「今日は塩ラーメンですよ。野菜炒めましましの美味しいやつです。」
「これ見ると…なんか…自分だけじゃないんだなって…」
「ひーくん…やっぱり好きだったんだね…」
「…今日のメニューは私が頼んだんです…昔助けてもらった時に作ってもらったんです…」
「あの時ねぇ…まだ転生したばっかりだったわよね…」
「…あの日の飛翔さんのように…もう一度私たちのために…力を貸して欲しいんです…!」
「…ごめんなさい。外に出るなんて考えて…僕はまだ1人じゃないんだね…」
「そうだよ!私たちは一つ一つの星なんだよ。」
悲しい過去や辛い過去は一つの星なら壊れるかもしれない、でも星座になれば星同士で支え合えると思う。だから…もう少しだけ耐えててね。大丈夫、救いは来るから。