178杯目 薄暗い空に染みる味
「今日も今日とて朝日は見えず。」
「太陽が出ないと鬱っぽくなるわね。」
「そういえば…前にもこんなことが…」
「ちょっと待って、この戦争に会長は関係ないわよ。」
会長とは生徒会長の事。昔生徒会長が異世界を作ったことがあって…詳しくは昔の話を!
「あの時は赤黒い空だったなぁ…」
「でも…今は空が黒いよね…おまけに臭いも…」
「そうね。血生臭いわね…」
「だからここでは空気清浄機を入れてるのですけど…やっぱりごまかせないですよね…」
「そうか?結構隠せていると思うぞ?」
「初音さん…!ありがたき幸せ…!」
「でも…さくらがいつまで経っても起きない…もしかして…!」
「死んでないわ、死んでたら呼吸でわかるもの。」
「真音さん。あなたもしかして…超能力者ですか?」
「…私吸血鬼。太陽得意だけど。」
「昔はかわいかったんですよ。今じゃこんなですけど。」
「京子…なんで私の目から涙が出ているのかしら…」
「おいおい。僕はさくらが生きているか心配だったんだから。でもよかった。」
「こうして眠れるのもここが平和だから…ですわね!」
「その通りだ…今のところここは攻められてない。」
「ありがとう。とりあえずだれか死ぬ展開にはないだろうね…」
「…おはようございます。もしかして心配させてしまいましたか?」
「さくら、おはよう。とりあえず元気そうでよかったわ。」
「…真音ちゃん!それに…京子ちゃんと雪ちゃんも!…えへへ、嬉しいなぁ。またみんなと一緒にいられるの。」
「お久しぶりですね。再会してからまともに話せていなかったので…」
みんなさくらと喋るのに夢中で、隣から香ってくる料理のにおいに気が付かなかったようだ。気づいた時には既にテーブルに皿があった。
「今日はわたくしがおでんを作ってみました!…と言っても具材はあまり良いものではないのですが…」
「大根とたまごとこんにゃく…それに白滝とちくわ…」
「これだよこれ!」
「そうね。この出汁の香りがとてもいいのよね…」
「季節なんて関係ない!食べたいものっていつ食べても美味しいんだから!」
「確かにそうですね!」
「冬にアイス、夏にラーメン…確かに、季節には合ってないけど美味しいのに変わりはないからね。」
「それにしても出汁が良く染みてる…結花、よくやった!」
「心に沁みる…」
「星3つ…でも、いいんだよ。」
「星って基準じゃなかったの!?」
「美味しいか美味しくないかの基準じゃないんだ。その料理にかける想いが重要なんだ。誰かが適当に作った美味しい料理より一生懸命に…食べてほしいって思いながら作ったまずい料理の方がいいかな。」
外では戦争が起きている中、料理だけでも幸せを感じたい。幸せならどんな料理でも星3つになるだろう。